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10幕:人形使いはバイトをする 下

 


 僕は王都の一つ前の町でボーイをやっていた。

 もちろん臨時のバイトだ。

 飲屋街の一角で臨時のスタッフ募集を掛けている飲屋を探すことができた。

 短期で大金を稼ぐにはギャンブルか、ランクが上の希少種の魔物退治、もしくは飲屋街で働くことが近道だとチャラけた先輩が耳元で悪魔のように囁くんだ。


 だから僕たちは夜のお店で臨時スタッフとして短期間だけ働くことになった。


 王都に一番近い町のお店だけあって僕が住んでいた町とは大きさも煌びやかさも出入りする人たちも違う。皆すごくお金持ちのオーラが漂っているし身につけているものも自分とは比べ物にならないほどだ。


 なんて眩しい町だろうか。

 僕が住んでいたところとは月とゴブリンほどの違いがあるんだ。

 もちろん僕はそのゴブリンが住む田舎なんだけど。


 それほどこの町が全てがキラキラと輝きに満ちていたんだ。


 薄暗い店内の中でキラキラと輝く魔石灯のほっそりとした光を潜り抜け僕はテーブルごとに飲み物やおつまみを運んだ。ほかにも魔術で作られた氷や果実が香る水、甘い格別な果物のお皿を冷えたグラスやシャンパンも常に用意している。


 この一つ一つの全てがどれも僕の日々の日給よりも上の品々ばかりである。


 店長の目線の指示を合図に僕はお客様にこれらとサービスを提供する。

 早速、不思議な文様をした扉が専属のボーイにより開かれた。


 彼に案内されそのまま豪華なソファに腰を下ろしたのはとても綺麗で上品な女性のお客様だった。

 胸元が開いた黒のドレスは肌を隠すには薄く、そして小さかった。

 さらに上から下まで黒で統一された衣装が彼女の妖艶な美を際立たせている。

 それはそれはものすごい綺麗な女性だったのだ。


 彼女はこのお店の太客であり常連の一人である。

 狭い個室に綺麗なお姉さんと二人きり。

 僕の手は震え心は動悸がおさまらなかった。

 つい先日までは。

 それも今では平静を漂わせながら彼女を応対することができている。

 今日も丁寧にエスコートしながら隣に軽く腰をかけ顔色を伺ったんだ。


「あらだいぶ慣れたようね。君も一杯いかがかしら?」

「ミス今宵もご来店いただきありがとうございます。では少しだけ、、、」

「いい飲みっぷりね。君が来てから私はとても幸せに慣れたのよ」

「ご冗談を。私も綺麗なお姉様にお支えさせていただき心から幸せを噛み締めてございます」

「あらお口が上手いんだから」

「それでもお姉様には叶いませんので」

「あらあら本当に立派なボーイさんね。もう少しだけあなたとも話ししていたいんだけど今日もあの子達をお願いできるかしら」

「ミスかしこまりました」


 僕はそのまま合図を送った。

 軽く手を叩く合図とともに薄暗い通路から綺麗な身なりのホストたちが堂々と参上した。


「相変わらずなんて可愛らしい子達なのかしら」

「それではミスごゆっくりとお楽しみ下さいませ」

「ああぁぁああぁあ!!私のホットル、コルドルなんて可愛らしいの!!」


 彼らは今、様変わりした。

 引き篭もりが新しく用意した黒の燕尾服と白シャツ、そして黒の蝶ネクタイが彼らを紳士へと一新させている。今宵の彼らは泣く娘も黙る一流のホストである。


【二人とも任せたよ】

【任せよ!!雌豚ごとき今宵も陥落させてくれるわ!!】

【あいわかった!!雌犬を我が大魔法で空になるまで搾り取ってくれようぞ!!】


 今までに見たことがないほどの美女の蕩けた笑顔を目に焼き付けながら僕はその場を後にしたんだ。


【ひざまづけ!!この雌豚がぁ!!】

【駄犬がぁ!!尻を振れぇ!!】

「あぁぁぁぁあっ!!!」


【、、、。】


 今やこの飲屋、、、いやラウンジでの売上、指名数ともにNO.2に位置するのは僕の相棒たちだ。

 僕は色々と忙しいので店長の再三の説得を断りボーイの仕事に落ち着いたんだが、彼らはなぜかメインのホストに抜擢された。そして今やこのラウンジ所属のスタッフたちが次々と彼らに頭を下げ続けるほどの成長を遂げる始末である。

 可愛い人形のぬいぐるみたちに大の男たちが女たちが次々と頭を下げるのである。

 とても異様な光景だった。


 ちなみに彼らの給料は僕の給料を軽く足蹴にするくらいになっている。

 どうも何十倍も稼いでいるので僕には理解が追いついていない。僕もホストをやれば良かったかもしれないと思うほどだ。


 相棒としては鼻が高いんだが、、、主人として友人としては複雑な気持ちである。


 通路の控えスペースでお茶を飲みながら耳を立てた。

 奥ではどこかの貴族様と馴染みたちの騒がしい声が聞こえてくる。

 内容までは部屋ごとに仕込まれた魔道具のためにわかることはないのだが、盛り上がっていることだけは把握できる。きっと彼らが接客しているのだろう。

 今やこのお店での指名、売上NO.3に位置するのは先輩冒険者パーティーの両天秤の3人だ。


 男性客、女性客、どの客層にも柔軟に対応し場を盛り上げ客を癒し笑わせ売上を弾き出している。

 僕は陽キャとはすごい生きものなんだと実感したんだ。

 常に笑い声が絶えないようでとても賑やかな時間を過ごしているようだ。


「「「どんだけ~www」」」


 僕には一生縁がないような力だ。


 それに、、、


「ちょ!?マジうける!!」


 なんて一生使わない言葉だろう。



 その時だった。

 僕の後ろから背筋が凍えるほどの恨みが篭った声を耳にしたんだ。


「あいつ本当に許せない、、、」


 そこには淡い緑色の髪をした美少女が綺麗なレースのハンカチを握りしめ僕を、いや僕に続く一番奥の部屋を睨みつけていたんだ。




 


ラウンジオーナー( ̄ー ̄)ニヤリッ:あとは彼をホストに配置換えすれば、、、


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