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9幕:人形使いは引きこもりを見直す

多忙のため更新遅れました。

12月からはまた継続して頑張ります。

 

 新しくパトの奴隷となった彼はそのまま人形屋敷へとそのまま引越しすることになった。

 というより新しい部屋に移ったまままた引きこもっているわけだが。


 だけど彼の母は泣いて喜んでくれた。

 真実を知ったらどう思うかと焦りに駆られる気持ちもあったが深く考えないことにした。


 なにせドア越しに聞こえる彼の声は今まで聞いた中で一番楽しそうだったから。

 幼女萌え、天使嫁とか叫んでいるしこのまま町の警備隊とかなんなりに突き出した方が世の中のためになりそうだけど。


 そんな自宅警備員を誑かした幼女は両手いっぱいのお菓子と分厚い財布を僕に押し付けてきた。どちらも飯屋のお袋さんから頂いたものだ。


 分厚い財布の中身はもちろんお金。

 彼がこれから世話になるからその生活費やお礼なんだとのことだった。

 そしてお菓子は純粋にパトへの感謝の表れだったみたいだ。


 これらを人形屋敷の金庫の中にしまい僕たちは次の目的地へと旅立った。


 それから数日、道中で響く声は決まった言葉ばかり。

 飯!!風呂!!失せろ、消えろ!!


 いっそこのままこいつを何度追い出そうと思ったことか。

 でもその度にパトがせっせと世話をやくもんだからどんどん調子に乗っている始末だ。

 その飯も風呂も僕が準備するわけだし結局、僕の仕事が増えているだけだ。

 だから結局、僕の仕事が増えただけなんだ。


 それにこいつ僕の話は聞かないくせにパトのお願いは可能な限りほぼ聞いてやがる。

 解せない。


 それに人形作りの才能がなかったら僕はきっとこの場で彼を追い出していたと思うんだ。

 実は彼のおかげで僕の人形たちも魔改造を受けて皆がレベルアップしている。

 僕だけではできなかったことだ。

 彼の仕事は作成から改造、修理に至る工程全てを行える上に付属品など多岐に渡る。

 そんな才能を持つ彼は僕にとって確実に有益な人材なんだ。

 差し引きをしてもね。

 たぶん。


 ただし表には一切出てこないし余計な仕事は増えていく一方なんだけどね。


 さてパトを国元へ送る旅は例外を除けばほぼ順調だった。

 道中は魔物の襲撃もほぼないし盗賊といった襲撃者にも遭遇していない。


 ただ思っていたよりも日数が掛かっているのが気にかかるところだ。

 なにせ北大陸の中央から南に掛けて位置する大国までの旅路。

 馬車移動とはいえ国を跨ぐ大移動。

 僕にとっては初めての経験だったしね。


『両天秤』の先輩たちは何度かこんな護衛依頼に携わったことがあるらしくどんと任せろとかチャラケながら胸を張ってたっけ。寡黙な人形となった今はこちらから話しかけないと何も答えなくなったんだけど。


 そんな時だった。


「おい召使い!!」


 小さな人形屋敷から声が轟いたんだ。

 あいつの声だ。

 僕は心の中で召使いじゃないと叫びながら耳を傾けた。

 目を前方から離さずにね。


 なにせ街道の進路上を塞ぐように白鎧に白い両手剣を携えた騎士の一団が僕たちの行く手を唐突に塞いだんだ。

 奥や両脇、他にも隠れてるところを見ると1個小隊規模くらいだろうか。


「失礼ですが、何か御用でしょうか?騎士の振る舞いにしてはいささか道義に反することだと思いますが、、、」

「言ってくれるな小僧。だが青二才の癖に調子にのるな!!!」


 応対した騎士たちは次々と詰め寄り僕を殴り飛ばすと無理やり馬車の積荷を荒らし始めた。

 さすがにこの暴挙には納得がいくはずがない。


「くっ!!どういうつもりでしょうか!?」


 僕は何もできずにすぐに組み抑えられた。

 両脇から腕と関節を取られ反抗することができない。

 盗賊や野盗なら僕の人形使いの力で反抗できるんだが、相手はどこかの国の騎士団なんだ。下手に逆らうと今後に影響があるかもしれない。

 だからそのまま大人しくする振りを続けたんだ。

 口以外はね。


「ここを通るものは誰であろうと積み荷を全て点検させてもらう」

「冒険者ギルドの護衛依頼中です。これは後で正式に抗議させていただく!!」

「はん!?やれるものならやってみろ!!」


 後で遠慮なく有る事無い事報告してやろう。

 すでに手持ちの映像魔石を馬車の上に待機させた相棒たちが録画しているんだ。

 これで言い逃れはできやしないし証拠もバッチリだ。

 まさかあの引きこもりがいち早く指示対応してくれるなんて人は見かけによらないもんだ。

 だから彼の筋書き通りに事が運んでいる。

 もちろんドア越しだけどね。

 彼は未だに人形屋敷の奥から一度も姿を見せることはないんだけど。


「隊長これを見てください!!こんなところに子供服が!?それに子供が、、、いや人形か」

「人形は本物そっくりだ、、、それにこの服は庶民が着る服じゃない。貴様これをどこで盗んだんだ?この人形をどうした?」

「売り物のですからね。隣国で売ってもらったんですよ」

「隊長、、、この紋様はまさか!?」

「間違いない、これはあのお方のものだ。それにこの人形の姿は間違いなく、、、」

「貴様、これをどこで手にいれた?それにこの人形をどうした?」


 ん?確かその子供服は出会った頃のパトが着ていたものだ。

 昨日、僕がちゃんと洗濯してから折り畳んでバスケットに放り込んでいたはずなのに。すぐに脱ぎ散らかすから仕方なく僕が一枚一枚丁寧に折りたたんでいるというのに、、、、全くあの子は。

 それに気になる言葉が出てきた、、、紋様ということはやはりパトは高貴な生まれなんだろうか。それならば調べれば彼女の素性が暴けるかもしれない。

 ならば尚更やらなければいけないことがある。


 こいつらと関わるのはこれ以上は御免被りたいので僕は嘘を付くことにしたんだ。

 僕の今後の人生に付き纏う可能性のある障害は排除しなきゃいけないしね。


「だいぶ前に中古市場で売られていたのを僕が買ったんですよ。確か西の連邦国家群で買い付けた品だったと思います、、、あの有名な英雄街のとこのですよ。ただその服の持ち主は病気か何かで亡くなったそうですよ。だからそのことを不憫に思った従者がその子供そっくりの人形を作成したと耳にしています。それにそっちの服は人形たちの大事な衣服なんですよ、、、後ろに並んでるでしょう」


 荷台の両脇に並べた子供サイズの人形たちへと僕は指差した。

 もちろんあいつが丹精込めて作ったものばかりだ。


「そうか、、、済まなかった。君には悪いことをしてしまったな。あれを持ってこい!!」


 騎士団の中で隊長と呼ばれる男は納得した顔で謝罪をかけたんだ。

 僕はそのまま解放されてから騎士団の隊員から小さな包みを手渡された。

 ずっしりと重くカチカチと固い音がするものだ。


「ありがとうございます。あの差し出がましいですが何かあったのでしょうか!?」

「世の中には知らない方がいいこともある。それにすぐにこの場から去った方がいい」


 騎士団の隊員たちはそのまま僕を無視して先へと消えてしまった。

 本当にどういうことなんだろうか。

 どう考えてもおかしなことばかりだ。

 これは絶対に何か裏がある。


 この時、僕は確信したんだ。


「それでいい加減に説明して欲しいんだけど?」


 僕は呆れるような声で荷台の中に向けた。

 そこでは大人しく人形となった本人が少しだけ目を開けてこっちを伺っていたんだ。




 




ついにシュガールの人形となったパト(`・ω´・)♩:ん?私がご主人様なのは変わらない。


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