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8幕:人形使いは引きこもりを相談される 上

 

 とある町の宿屋での出来事だった。

 夕食も終わりタライに張ったお湯で身支度を整えた後、僕たちは甘いお菓子でお茶をすすっていた。そこに近所の飯屋の女将さんから相談を受けたという宿屋のお袋さんが現れて僕は変な相談を受けたんだ。


 なぜ僕に?と疑問に感じたが、大人しく相談だけでもと思い聞くことにした。

 なにせ夕食におかずとデザートを余分にオマケしてもらっていたんだ。

 その時のパトの喜びようといったら見たことがないようなほどだった。

 僕も人の事は言えないけど。

 彼女は人前だから僕の後ろで縮こまってるんだけどね。


 その相談ごとも掻い摘んで纏めるとその女将さん家では僕と同世代の息子がいるらしい。だが部屋の外へは出てきてくれないそうだ、、、俗に言う自宅警備員だとのこと。


 自宅警備員

 ーー引きこもり。


 その彼は何でもものすごい才能を秘めた息子さんらしく絶対に世界に通用する人物になるらしい。だが、対人恐怖症でその才能を活かせないらしいということだった。

 だから接客はもちろんのこと、お店に立つこともないらしい。

 どうにかして自立してほしいがどうすればいいのか分からないそうだ。

 話を聞く限り親子間のコミュニケーションも取ることもできなくて心底困まりはててるんだと。


 まぁ親に捨てられた僕としてはそんな親がいるだけでも羨ましい限りなんだが、、、


 宿屋の食堂でお袋さんから聞いた話だと引きこもりをどうにかするのは無理にしてもその才能というのが僕には気になって仕方なかった。


 だから同じ系統に属する幼女の顔を見ながら僕は算段したんだ。


「ん?私は人見知りじゃない」

「はいはい、僕の顔みて言わないでね」

「ん。私は慎重にものごとを考えるタイプ」

「うん。じゃあ僕の背中の後ろに隠れてないで隣に座りなよ」

「ん。下僕のくせに生意気」

「はいはい、僕だけに聞こえるように話さないでくれよ」

「ん。私は隙を見せない女」

「はいはい」


 いや君は言ってる事と行動が逆だよね。

 ほんとこの子は口と態度だけは達者なんだから。

 だから彼女の平常運転っぷりに僕は心底呆れたんだ。



 次の日、朝から僕たちは例の自宅警備員の家を訪ねた。

 そこは木製作りの大きな門を構えた立派な飯屋さんだった。


 今日はここでお昼をいただくことにしてから僕たちはまず彼の才能について調べることにした。

 何せあれだけの前振りをされたんだ。

 昨夜はほんと気になって気になって仕方なかったんだよ。


 家屋内に足を入れた途端、僕はすぐに悟ったんだ。

 なにせこんな立派なものは世界中探してもここだけにしかないとしか言いようがないものばかりだったからさ。


「これはすごい。正直、全部僕のものにしたいくらいだ」

「ん。ほんとにすごい。全部欲しい」


 建物の中、テーブルの上から窓の縁、観葉植物の幹から戸棚の上までいたるところに人形やぬいぐるみが置いてあった。


 僕は人形使い。

 ここは僕にとってはまさに天国だ。

 使える有能な人間を人形や仲間にすることも必要なことである。

 だが人形やぬいぐるみたちを仲間にすることも同じくらい重要なんだ。

 そんな彼らに囲まれた世界はまさにこの世の極上な場所なんだ。


 ここには現実から想像まで様々なバリエーションの人形たちが並んでいる。

 小さなものから等身大のものまで。

 魔物から幼女、美少女、美女のフィギュアまで。

 一つ一つが成功に丁寧に作られたモノばかり。

 想像主の愛情が感じられる一品モノばかりだったんだ。


 これは本物だ。


 僕は心底、その人形へ込められた愛情を感じ取ったんだ。


 だから僕は堪らずその男の部屋に近づき、そしてドア越しに声をかけた。

 相手に伝わるようにゆっくりと敬意を込めてね。


「君の才能はすごい。僕の仲間になって欲しい」

「うせろ!!」

「ちゃんと聞いて欲しい。僕は人形使い、僕は君の人形の素晴らしさはわかっている」

「消えろ!!」

「僕の話を聞いて欲しい」

「二度とくるな!!」


 それから何度も僕は声をかけたが返事は消えろ失せろばかり。

 さすがに何年も警備員をやってきているわけじゃないみたいだ。

 これはこのまま一生を自宅で警備員として過ごした方が世間のためなんじゃないかとふと考えてしまった時だった。


 僕の後ろで幼女がお袋さんを泣き落としていたんだ。


「私がいけなかったの私の教育が、、、」

「ママさん、安心して私が説得するわ。だからどうか泣かないで」

「ありがとう。パトちゃんはなんて優しい子なの」

「そんなことない。それにお兄ちゃんは本当は優しいの。でも私は今日から心をオーガにしてお兄ちゃんを外に連れてくわ」

「そんなことあなたに迷惑を、、、」

「どんなにダメでも私とシュガールがついている。ちゃんとシュガールが最後まで助けてくれる」

「パトちゃんは女神様なの?」


 いやいや冗談じゃない。

 なんで僕が引きこもりを養わなきゃならないんだ?

 それにちゃっかり君は最後まで面倒見る気ないって言ったよね?

 押し付ける気満々じゃないか。

 僕は自由に生きてバカにした人たちを見返す予定なんだ。

 だからうちに警備員は必要ないんだ。


 それに君は天使の皮を被った悪魔。

 このままでは間違いなく彼はその毒牙に引きずり込まれてしまう。

 彼の将来を思うならこの場で引きこもりを続けさせるべきなんだ。


 とは言えなかったんだ。

 咄嗟にものすごい視線が彼女から飛んできたからね。

 まるでその視線は大型で獰猛な猫型の魔獣のようだった。


「ん。下僕は邪魔するな」


 僕だけに聞こえるように呟いた小さな幼女はすぐに僕の前に躍り出たんだ。


「お兄ちゃん、あのねあのね、、、私のお兄ちゃんになって欲しいの」

「!?」


 そして天使となった幼女の甘言がドア越しに荒んだ彼の心を癒した瞬間を僕は目撃したんだ。


 やがて静かにドアが開く時、彼女の顔が一瞬、黒い笑みを浮かべた気がした。

 それから僕だけに聞こえるようにはっきりと口にしたんだ。


「ん。奴隷2匹目ゲット」


 僕は唐突に嫌な予感がしたんだ。



 

パト(`・ω´・)♩:ん。計画通り



恐れ入りますが、、、、シュガールの明るい未来を見たい方、もしくは顎で使われる未来を見たい方、もしよろしければ評価やブックマーク等いただけると嬉しいです。

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