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6幕:人形使いは旅に出る

 

「ん。お腹減った。朝ごはん食べたい」

「ん。あそこの太った女気にくわない。もっとご飯を食べさせて太らせるべき」

「ん。あのおじさんの頭が不自然。気が散るからヅラをむしり取って」



 あの日から僕は幼女に言われるがままに使われ始めたんだ。

 子供らしいお願いから理不尽な要求まで。


 最強の人形使いを目指している自分には心底笑えない。

 しかしそれも今日までだ。

 移動中は幼女を背中でおんぶしながら歩いて過ごしているのだが、それだけでも色々とわかったことがある。


 この女の子パトがわがままな言動を取るのは僕の前だけだった。

 それも二人の時だけだ。


 よくお世話になるお姉様方や冒険者ギルドの職員のお姉さんの前では口を閉じたままだんまりなんだ。

 そう僕は理解したんだ。

 どうやら彼女が極度の人見知りらしいということを。

 だから理不尽な要求が来た時は人だかりの中に連れていけばその要求がうやむやになる。


 僕は人形使い。

 人形の特徴なんてあっという間に理解する。

 そう僕のヒエラルキーはまだ取り戻せるわけだ。


 黙っていればものすごく可愛い女の子なんだが、口から吐き出すものは毒以外の何ものでもない。ほんと世の中にはこんな小さな女の子がいるなんて信じられないよ。


 そして僕は体調が回復してから町の行政施設を訪れた。

 今からこの幼女に立場の違いというものを分からせるんだ。


 受付のおばさんに話をし目的の部署に足を運ぶ。

 対応してくれたのは綺麗なお姉さんだった。

 そして僕は先日の件を説明して今までのことをお姉さんに甘えるように相談したんだ。


「そっか、、、シュガールくん大変でしたね」

「そうなんですよ。あの頭がおかしな教官のせいで僕は、、、」

「だいじょうぶよ。お姉さんがちゃんと力になるからね」

「お姉さん、、、、ありがとうございます」


 お姉さんの真摯な気遣いに僕の心が浄化されていくようだ。

 それから今後のことなども相談した。


「そうなるとパトちゃんを一時的にうちが保護するかな。それから自宅まで送り届けることになると思うけどそっちは冒険者ギルドに依頼だね」

「そうですね。僕が関われるのはここまでですけど、彼女のためにぜひお願いします」


(ギロリと睨むパト)

 はっははっは、、、全く怖くない。


「そしたらパトちゃんを家に送り届ければいいわけなんだけど。おうちはどこ?」

「、、、、」

「あーこの子は人見知りなんですよ。全く人前で話せない可哀想な子なんです。二人だとぺちゃくちゃなんですけどね」


(再びギロリと睨みつけるパト)

 そんなかわいい目で睨みつけられても全く怖くない。

 頭を撫でてもみくちゃにしてあげたい気分だ。


「こればかりは仕方ないよ。パト今まで大変だったけど頑張るんだよ」

「、、、、」

「僕には人のことを助けられるほど余裕はないからね。じゃあ名残惜しいけどパト元気でね」

「、、、、」

「パトのこと宜しくお願いします」

「ええ、お姉さんに任せて。シュガールくんも体を大事にね」

「はい、美人のお姉さんにそんなこと言われたらもう大丈夫です。また色々と相談させてください」

「もうシュガールくんったら」


 赤い顔をした綺麗なお姉さんからそんな言葉をかけられれば僕はもう無敵になった気分だよ。

 これで邪魔者は消えた。

 僕を奴隷にすると言っていた女の子は僕の前からいなくなったんだ。

 天国に召喚されそうになった仲間たちも懐の犠牲と引き換えに無事取り戻した。

 これで僕は自由なんだ。




 2日後、冒険者ギルドに呼び出された僕は職員のお姉さんからランク昇格のための使命依頼の話を持ちかけられた。

 僕は冒険者になったばかりランクは当然のごとく最低底に位置している。

 しかし日頃の採取依頼や人形劇、それから雑務とそれなりにこなしてきた。そして先日は魔物との死闘、それから幼女の保護と緊急時の対応もあり教官を通してきっちりと報告をされていたらしい。

 つまり今までの僕の行動全てが評価を受けたわけだ。


 今回の試験を合格した場合、1、2段階以上飛び越して昇格できるそうだ。

 推薦者は、、、あの筋肉で包まれた鋼の肉体を持つ元男の女性。


 僕は脳裏に浮かぶ不気味な姿を無理やり消し去りながらペンを走らせた。

 考えるまでもない。


 ランクが上がれば上がるほど受けることができるクエストレベルが上がる。

 そうなれば受け取る料金も跳ね上がるし装備も一新できるし納屋から離れて個室へと移れるかもしれないんだ。


 荷運びの依頼なんて僕にかかれば楽勝なクエストだ。

 相棒たちの力を借りれば人よりも何倍も力を発揮できる。


 さぁ僕はここから成り上がるんだ!!


 翌日、準備を終え冒険者ギルドの受付を訪れた僕の前に信じられない人物が控えていた。

 以前と同じ平坦な声が僕に降り注いだ。


「ん。下僕は黙って顎で使われるべき」


 そこには天使のような悪魔が微笑んでいたんだ。











 パト(`・ω´・)♩:ん。人形は主人の命令を黙ってこなすべき

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