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dark blue  作者: 乱 江梨
最終章
26/33

怒りの琴線

 大変お待たせいたしまして、申し訳ありませんでした!

 新年最初の「dark blue」です!

 その日紺星は四年前に起きたとある事件についての資料を食い入る様に読み漁っていた。それは紺星が四年前、何度も何度も何度も調べつくした事件の資料でもあった。 


 ――ユスティー隊長殺人事件。それが紺星の調べている事件の名称だった。


 何故四年後の今、紺星がその未解決事件の資料を読み漁っているのか……それを説明するには一日前に遡る必要がある。







――一日前――

 

「あの変態にしては遅くねぇか?」


 その日、出勤時間の八時を過ぎてもユスティーの本拠地に姿を現さない十乃について、首を傾げたのは紺星だった。

 

 それもそのはず、十乃は毎朝誰よりも早くに出勤し紺星が扉を開けた途端に抱きつくという伝統芸を毎日繰り広げていたのだ。にも拘らず今日その日だけはそれが無かった。紺星が疑問に思うのも当然だったのだ。


 いつものこの時間帯ならば、ちょうど十乃が紺星に足蹴にされたダメージから這い上がっている辺りなのだが、十乃が姿を現すことは無かった。


「風邪でも引いた?推測」

「アイツがそんなことで遅刻するたまか?」


 青花の推測に対する紺星の意見には皆同意見だったらしく、それぞれ考え込むように口を噤んだ。紺星は深刻な表情をすると、転移魔術を使って50階にあるユスティー隊員専用の寮へ向かった。


 すると、十乃のことが気になった他の隊員たちも紺星に続いて転移魔術で寮へと赴いた。普段十乃を変態呼ばわりしていても、何だかんだで仲間のことを危惧する気持ちがユスティー隊員たちにはあったのだ。


 紺星たちは十乃の部屋の前に訪れた。扉には〝汐宮十乃〟と、十乃の名前の書かれた名札がかけられていて()()()()()他の隊員たちと何の違いもなかった。


 紺星は十乃の部屋の扉に手をかけると一つ大きなため息をついた。その理由は他の隊員の部屋との大きな違いにあった。


 十乃の部屋には十乃が日頃隠し撮りしてきた紺星の写真がこれでもかという程壁中に貼られていて、その内装はまるでどこぞのストーカーのようなのだ。……まぁ事実ストーカーなのだが。


 それはユスティー隊員全員周知の事実なのだが、本人はその事態に全く勘付いていないという何とも間抜けな状態になっているのだ。


 そんなわけで紺星は大きなため息をついたわけだが、今はそんなことよりも十乃の安否確認が一番の優先事項な為、紺星は勢いよく部屋の扉を開けた。


 紺星は扉が完全に開く前、僅かな隙間が空いた瞬間、己の鼻を突き抜けた異臭に気づいてしまった。紺星だけがその異臭に気づいた為、紺星は誰よりも早く十乃の部屋に飛び込んだ。


 隊員たちはそんな紺星の俊敏な動きに呆気に取られていたが、すぐさま意識が別のものに移った。隊員たちの目に移ったのは普段とは全く違う異様な雰囲気を纏った十乃の部屋だった。


 紺星の鼻を突き抜けた異臭の正体は、十乃の部屋中に張り付いていた。天井、壁、家具、そして十乃が隠し撮りしてきた紺星の写真に、十乃のものと思われる血痕が飛び散っていたのだ。


 扉に足を向ける方向で設置されたベッドの横に十乃は血まみれで横たわっていた。隊員たちがその存在に気づいた時には紺星は既に十乃の身体を支えていて、必死に治癒魔術をかけているところだった。


 十乃の身体中には刃物で攻撃されたような傷が大量についていたが、最も致命傷だったのは腹部を剣で貫かれたような大きな傷だった。そこからの出血が酷く十乃の顔は血の気が全くなかった。


「ユレ!!」


 紺星は自分では治療に時間がかかってしまうことを悟り、治癒魔術を最も得意としているユレに大声で声をかけた。


 ユレは紺星のその声にハッとすると、すぐさま十乃のそばに寄って紺星と共に十乃の治療を始めた。その様子を眺めることしかできなかった隊員たちだったが、その中で最も冷静だった福貴が最初に行動を起こした。


「総括に報告してきます」


 福貴は転移魔術で総括のいる百階に移動した為その場から姿を消した。すると他の隊員たちは各々何か手掛かりがないか十乃の部屋を調べ始めた。


 ユレと紺星の治療のおかげで十乃の身体は猛スピードで回復していき、十乃が少し顔を顰めた後には完全に傷は塞がっていた。十乃は意識を失ったままだったが、紺星たちは一先ず肩の荷を下ろした。


 紺星は額に浮かんだ汗を手の甲で拭うと、改めて十乃の部屋を見渡した。これだけの出血をしてよく生きていたものだと紺星は十乃の生命力に感心するばかりだった。


「さて、誰の仕業なんだ?これは」

「相当の手練れ。確実」


 十乃の部屋に犯人の痕跡が残っていないか調べ始めた紺星はそう呟いた。ユスティー隊員である十乃をここまで追いつめた人物となると、ユスティー隊員と同等以上の実力を持っていると考えるのが自然な為、青花はそんな推測を立てた。


「どうだろうな?もっと別の可能性もあると思ったが」

「別?」

「そもそも、そんな手練れが相手だったら転移魔術で逃げるなり、伝声魔術で俺たちに助けを求めるなり、それができなかったとしても自分の傷だって、犯人が立ち去った後にでも治癒魔術で治せばよかったんじゃないのか?」


 青花の意見は尤もだったが、紺星は別の線もあると考えていたのだ。それについて疑問を呈した寛に紺星は詳しく説明した。


 十乃はユスティー内でも魔術に関しては一二位を争う程の実力者だ。そんな十乃が突然の襲撃者に対する対処として魔術を有効活用しないなど、紺星には考えられない話だったのだ。


「……!もしかして、魔術を封じられた?疑問」

「その可能性は高い」


 十乃がここまでの重傷を負わされた原因に勘付いた青花はハッと顔を上げた。紺星はその推測に静かに頷いて同意を示した。


 十乃が魔術を使えない状況にあったのなら全ての辻褄が合う。十乃は魔術の方に実力が偏っており、剣術や体術に関しては得意とは言えなかった。それに加え魔術を使えなかったのなら、逃げることも、助けを呼ぶことも、自分の傷を癒すこともできなかったのだろう。


「とりあえず今はこの部屋を調べることしかできない。福貴が総括に報告してくれたからその内鑑識が来るだろう。俺は十乃を99階に連れて行くからお前らは捜査しといてくれ」

「「了解」」


 事件が起きた場合、現場を調べるのはユスティー隊員ではなく鑑識の仕事だ。鑑識もきちんとした警察組織の隊員であり、〝鑑識課〟というそのままのネーミングの隊に属しているのだ。


 紺星の指示に隊員たちが冷静に返事をすると、紺星は十乃を所謂お姫様抱っこで抱え転移魔術を使った。十乃が目を覚ましていれば発狂、興奮し別の血の海がまたもや出来ていたところだろうが、今回に限ってはそんな悲劇は起こらなかった。


 十乃を抱える前、紺星の手は強く握りしめられており、相当な怒りを抑えていることが隊員たちには分かった。大事な仲間、紺星にとっては家族を無惨に傷つけられたことに紺星は怒りで燃え上がりそうなのを必死に堪えていたのだ。


 




 転移魔術で99階にあるユスティーの本拠地に向かった紺星は、部屋の奥にあるソファに十乃を寝かせ、その身体に毛布を掛けてやった。


 普段は十乃に対して冷たい態度をとっている紺星でも、流石に今日は甲斐甲斐しく看病する気になったようだった。


 つい先刻までとは全く異なる安らかな表情をしている十乃を見て紺星はほっと息をついた。そして同時に紺星は四年前に起きた悲劇のことを思い出してしまい目を瞑った。


 

 それから何分か経った時、目を瞑っていた紺星は気配を感じその目を開いた。するとその視線の先には驚いたような表情で紺星の顔を見つめる十乃がいた。


「起きたか」

「……紺、様?」


 意識を取り戻した十乃に紺星は平然とした表情と声を取り繕ってそう言った。内心では十乃が意識を取り戻したことに心底安心していたのだが、十乃がそれを引け目に感じてしまうことを恐れた為そんな態度をとったのだ。


 十乃の方は現在の状況をうまく把握できていないのか、紺星の顔を見つめたままポカンとした表情をした。そしてそのまま頻りに瞬きをしたり、寝たまま辺りをキョロキョロと見渡したりした。


「ま、まさか……私……紺様と……つ、遂に……は、は……初めてを……」

「アホか」


 十乃は何を勘違いしたのか一気に頬を染め上げ、目を潤ませ、呼吸を荒くするとそんな頓珍漢な発言をした。どうやら目を覚ました視線の先に紺星の顔があった為そんな勘違いをしたようだが、十乃の身を案じていた紺星からすればいい迷惑である。


「身体は何ともないのか?」

「かっ!身体は何ともなのかって……やっぱり……その台詞はまさしく初めてを迎えた女に対して男が言うお決まりの……キャーー!!!!!私、嬉しすぎて死んでしまいます!」

「ちげぇ。いい加減にしねぇと殴るぞ」


 紺星の発言でまたもや変な勘違いをした十乃は勢いよく起き上がると、両手で頬を押さえてくねくねと身体を動かした。先刻死にそうなところを助けたばかりだというのに、そんな理由で死んでしまっては紺星たちの努力が水の泡である。


 紺星はいつも通りの変態に戻った十乃に、ゴミを見るような目を向けた。だが紺星は内心いつも通りの十乃に戻ったことを心底安堵していた。


 それに加え、そのような顔をすればドMの十乃が喜ぶのは目に見えていたので、その眼光は紺星なりの配慮(?)だったのだ。


「さっきまで血塗れだったけど大丈夫かって話してんだよ」

「ち、血塗れ!?そんな激しい()()を!?さ、流石は紺様。ど、え、す♡」


 その瞬間遂に紺星は十乃の頭を殴った。有言実行である。しかも平手ではなく紺星は思いっきりグーで十乃の頭に拳骨を落としたのだ。


 普段デコピンをすることはある紺星だが、まさか女相手にグーパンを決めてくるとは十乃にとっても想定外だったらしく、激痛により頭を抱えながらそのうるさい口を閉じた。


「お、ま、え、が!いつまでたっても来ねぇから俺たちが、お前の為にわざわざ寮まで出向いてやったら何者かに襲撃された後だったからユレと治療してやったんだろうが!」

「……はっ!そうだ……私……」


 十乃が涙をちょちょぎらせている隙を見計らって紺星は大声でそう怒鳴った。その紺星の説明で漸く十乃は自分がどういう状態だったのかを思い出したようで、紺星からの拳骨の痛みを忘れたように顔を上げた。


「やっと思い出したか」


 十乃の勘違い妄想が漸く終着したおかげで紺星は酷く疲れたように深いため息をついた。


「紺……様。……申し訳ありません!ご迷惑をおかけしてしまい……」


 そんな紺星の表情を見た十乃は申し訳なさそうに謝罪した。紺星がそんな十乃の頭を今度は優しい手つきで撫でると、十乃は呆気にとられたように顔を上げ紺星と目線を合わせた。


 普段変態ストーカーである十乃に冷たく……もとい、ドSな態度をとっている紺星を見ている十乃からすればその行為は、願ってもみなかった青天の霹靂だったのだ。


「迷惑なんかじゃねぇよ。それに例え迷惑だったとしても大事な()()を守るのは当然だろうが。言っておくが、俺はお前より強いんだからな」

「紺、様……そう、ですよね。私たちはこれから永遠の愛を誓って本当の()()になるのですから!」

「お前今日絶好調だな」


 紺星の言葉に励まされた十乃はまたもやおかしな方向へ歩を進めた。紺星にとってユスティーは家族以外の何者でもない。そういう意味で紺星は言ったのだが、十乃からすれば自分と紺星が家族というだけで結婚という思考回路になるようだ。


 紺星はそんな十乃に最早怒鳴る気力も無くなったのか、呆れるどころかそのポジティブさに感心までし始めた。先刻まで死にかけだったというのにもうこの絶好調ぶり。紺星はそれに目を見張ったのだ。


「で。最初の質問に戻るが、身体に異常はないのか?」

「はい……問題ないです」


 十乃の妄想が落ち着いたところで紺星は最初にした質問を再開した。十乃は自分の身体をあちこち触ったり、見回したりして異常がないことを確認した。紺星はユレと行った治療が上手くできていたことにほっと胸を撫で下ろした。


「今青花たちに調べさせてるところだけど、誰に襲われたんだ?」

「顔はマスクとサングラスで隠していたので分かりませんが、体格からして女だったと思います。変身魔術を使っていたのなら話は別ですが、それなら顔を隠す必要はありませんし、その人物からは魔力があまり感じられませんでしたから」


 十乃の答えに紺星は頭を悩ませた。十乃が魔術を封じられていたのなら犯人が何らかの魔術によってそれを引き起こしたのではないかと紺星は考えていたのだが。


「……魔術を封じられたんだよな?」

「!……はい。私は戦闘のほとんどを魔術に頼っていますし……それに犯人は剣を所持していたのです」

「お前、自分用の剣は持ってねぇからな」


 紺星の言葉に十乃は肯定するように頷いた。十乃は魔術に関しては紺星と同レベル程度の力を持っている。だが体術や剣術に関しては話が別になる。


 普段戦闘のほとんどを魔術に頼っている十乃は、他の隊員のように自分の愛刀というものを所持していない。剣を持たず、その上魔術も封じられた十乃は泣く泣く犯人に致命傷を負わされたのだ。


「犯人がどうやってお前の魔術を封じたのか分かるか?」

「すいません……突然部屋に入ってきたかと思ったらその時にはもう使えなくなっていて」

「そうか……」


 十乃がしょんぼりとしながらそう言うと、紺星は考え込むように自分のおでこに片手を当てた。すると紺星は今後の方針を決めるために青花に伝声魔術で呼びかけようとした。


 だが紺星はあることに気づき、その動きを止めた。


「どうかしたのですか?紺様」

「青花?」


 紺星が動きを止めたことに疑問を持った十乃は首を傾げた。すると紺星は伝声魔術を発動していない状態で青花に呼び掛けた。


『何?紺。疑問』

「盗み聞きしてたのか?」

『肯定』


 どうやら青花は紺星と十乃の一連の流れをこっそり発動した伝声魔術で盗み聞きしていたようで紺星はそれに勘付いたのだ。だが十乃は青花の声を聞いて初めてその事実に気付いたので驚愕の表情を見せた。


「捜査が終わったらこっちに全員で来てくれ」

『了解』






「十乃の頭の中は異常、妄想変態女」

「はぁ!?何よそれっ!」


 ユスティーの本拠地に戻ってきた隊員たちの中で、唯一紺星と十乃の会話を聞いていた青花は出合い頭にそんな暴言を吐いた。


 いつもの如く十乃と青花との喧嘩(原因は紺星)が勃発しようとしていたが、これから捜査会議を始めようというのに緊張感のない二人を紺星が鋭い目つきで諫めたことにより、その場はそれ以上のことは起きなかった。


 未だにソファの上で休息している十乃の周りにユスティー隊員たちは集まり捜査会議を始めることにした。


 ホワイトボードには鑑識が撮った現場――十乃の部屋の写真が何枚か張られていたが、そもそも最初に現場を確認している為これといった情報は手に入らなかった。


「今回の事件がユスティー、警察に恨みを持つ者の犯行にしても、テロの可能性にしても、ユスティー隊員が襲われた事実に変わりはない。被疑者逮捕までは必ず二人以上で行動し、寮でも女は女同士、男は男同士で固まって休息した方がいいだろう」


 紺星は十乃のような被害者が今後出ないように打開策を打ち出した。現段階では怨恨かテロか、このどちらかの可能性が高いがどちらかを決めるための情報がない為紺星は頭を悩ませた。


「では、他の隊の隊員たちにもそう通達しておきますね」

「頼む」


 ユスティー以外の隊員たちも襲われる可能性がある為福貴は紺星にそう言った。紺星は十乃の方に視線をやると己の顎を掴んで考え込むような表情をした。


「十乃、お前は特に単独行動を控えろ……あとユレもな。お前らは魔術を封じられると戦闘力がガクンと落ちる。まぁ普通の敵なら問題ないだろうけど、今回のは割と強いっぽいしな。特に十乃は真っ先に狙われたこともあるし用心するに越したことはねぇ。あぁ、あと福貴。総括にマスコミにはこの事件のことを伏せておくよう頼んでおいてくれ。もしも犯人の目的が十乃の死で、まだ生きているという事実をニュースか何かで知ってしまったらまずいからな」

「了解です」


 紺星はテキパキと隊員たちに最低限の指示を出していった。十乃、ユレは今回の犯人と相性が悪いと言って過言ではない為、紺星の指示は当然のことだった。


 詳しく説明すると、ユレは魔術の中でも治癒魔術を誰よりも極めている為、他の魔術や体術などがユスティー隊員よりは少し劣っている。


 だが治癒魔術に関しては隊長である紺星よりも優れており、治療に関しては絶大な信頼を得ている。それに加え極めているのが治癒魔術だけなので、十乃よりは体術や剣術の実力が高いと言えるのだ。


 一方の十乃は全ての魔術において隊長である紺星と同レベル程の実力を持っており、戦闘にも非常に役に立つ人材なのだが、その代わりに体術や剣術などがユスティー内では最も劣っているというアンバランスな状態なのだ。


 紺星に総括への言伝を頼まれた福貴は落ち着いた様子で返事をした。その日は紺星からの支持を忠実に守ることに専念し、詳しい捜査は後日行うことになった。


 だが隊員たちの中でただ一人、裕五郎だけが紺星の重たい表情に気づきその心中を悟っていた。







 そして一日後の現在。四年前に起きたユスティー隊長殺人事件の資料を食い入るように読んでいる紺星の背後から裕五郎がポンと肩を叩いた。


「……五郎さん」

「こんなことだろうと思ったぜ」


 あまりの熱心さに普段なら他人に後ろを取らせることなど無い紺星でも、肩へ伝わった感触で漸く裕五郎の存在に気づいた。


 裕五郎は破顔しているというのに何やら苦い顔をしており、紺星はそんな裕五郎を目の当たりにして神妙な面持ちになった。紺星にはその裕五郎の表情の原因が誰よりも理解できるからだ。


 現在二人がいるのはビルの30階に位置する情報特務課。情報特務課は一般市民の個人情報だけでなく、警察内のありとあらゆる情報までもを管理しているのだ。


「息子も今回の事件、同じだと思うのか?」

「えぇ……被害者はユスティー隊員。現場は組織内の寮。魔術を封じられた可能性あり。それ以外の手掛かりは何も無し……こんなの、同じだと思わない方が異常ですよ」


 二人の言う()()というのは、今回の事件と四年前に起きた事件のある一点における話である。紺星は手に持っていた資料をぱたんと閉じると裕五郎と目線を合わせた。


「今回の事件の犯人は……凛人(隊長)を殺した犯人と同一人物です」


 



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