身分違いの双子
この作品は、ボーカロイド曲、「悪の召使い」「悪の娘」という歌詞から考えて作ったものです。ぜひ読んでみてください。
君を守るためなら、僕はどんなことでもするよ
《ルイ視点》
僕らが生まれたのは、教会がある町だった。
僕がルイ、姉がレイだった。僕らが生まれて間もない頃に両親は失踪した。だから親との記憶なんてない。
僕らを育ててくれているのは教会の神父さん。ぶっきらぼうでめったに喋らなくて部屋からあんまり出てこないおじいさんだ。でも、僕らを教会に置いてくれてる。
姉のレイは荒っぽいけど優しくて、町の人気者だった。僕は泣き虫でいつもレイの後ろに着いていった。正直、あの時期が一番楽しかったかな。ホントに双子かって思うくらい似てない。
僕らに人生で一回目の別れが訪れたのは、7歳のときだった。
教会の扉が勢いよく開き、スーツの男が僕らを柱に縛り付けた。何が起こったのか分からなくて、僕はただ泣いていた。
そのときにレイが叫んだ。
レイ「何すんのよオッサン!さっさと離して。ルイが怖がってるでしょ!」
レイは教会の外に聞こえるくらいの大きな声で叫んだ。
男の1人「おうおう、威勢のいいお嬢ちゃんだ。そっちの坊やとは大違いだ。・・・これならいいだろう。おいじじい、500$でいいか」
男の一人がいつの間にかいた神父さんに言っていた。
神父「ええ、構いません。こんなのいても、ただの役立たずなのでね」
僕は神父さんが男からお金を受け取っているのを見てしまった。幸いレイからは見えないところだった。
そのときわかった。僕らは神父に売られたんだと。
男の1人「よし、交渉成立だ。そいつら袋に入れて車に積め」
男がそう言うと僕らは黒い袋に別々に入れられた。
レイ「やめて、離してよ!ルイ!ルイ!」
レイが一生懸命叫んでいた。
ルイ「レイ!レイ!」
僕も叫んだ。
男の1人「うるせぇガキだな。黙らせろ」
その声が聞こえたと同時にバチッという音が聞こえた。
ルイ「レ・・・イ・・・?」
怖い、怖い。
男の1人「こいつもうるさいな。さっきまでの大人しさはどこへ行ったんだか。おい、こいつもだ」
怖い、助けて、レイ・・・
男の1人「おやすみ、僕」
それから記憶がない。
《レイ視点》
目が覚めると、ルイがいない。代わりに私は、ベッドで寝ていた。
王「おはよう、レイちゃんだったかな」
目の前に知らないオッサンがいた。
レイ「あんた誰よ」
トーマス「おい!国王に向かってなんて態度だ!王様が貴様のような孤児をわざわざ救ってくださったんだぞ!感謝の言葉も言えんのか」
国王?この国の?そもそもここどこよ。
王「落ち着きたまえトーマス殿。お主、家族はどうした?」
国王?のオッサンがうるさいオッサンを落ち着かせて聞いた。
レイ「弟はどこ?」
王「弟?」
レイ「私とそっくりの弟よ!どこにいんの!?」
トーマス「うるさい!こんな小娘はやはり間違いです!王!」
私の言葉をうるさいオッサンは聞いてくれない。
王「トーマス殿、少し下がっておれ。わしはこの娘に話がある」
オッサンが言うとうるさいオッサンはしぶしぶ部屋を出ていった。
王「すまないお嬢さん。だが、お主の弟とやらは本当に知らないんだ。信じておくれ」
オッサンが頭を下げた。
なんとなく申し訳なくなった。
レイ「ねぇ、私をこれからどうするの?」
なんとなく聞きたかった。この人は嘘ついてない。ルイを知らないんだって。だから聞いた。
王「お主は帰るところがあるのか?」
私は戸惑った。ルイが生きているか分からないし神父のところには戻れない。考えたら私の居場所が無くなっていった。
レイ「・・・ない。」
王「そうか・・・。お主、ワシとともに暮らさぬか?」
え?
王「この国はな今跡取りがいないのだ。もしもお主がワシと暮らしてくれるなら、この国の次期女王になれる。どうだ?」
レイ「でも弟が・・・」
王「弟君が見つかったら、ここにきてもらい、一緒に暮らそう。それまで、ワシも弟君を探すのを全力でサポートさせてもらう。」
これは、今までにない最高のチャンスだと思った。
レイ「私でもいいの?」
王「お主がよければ、わしはこの上なく嬉しいぞ」
国王は満面の笑みだった。
私は大泣きした。怖かったわけではなく、喜びを感じた。
《ルイ視点》
ルイ「ん」
どこだろ・・・ここ。外暗い。
ルイ「レイ?」
あ、ここ、知らないとこだ。
(?1)「あれ、起きた?」
え、誰?なんだろ、優しそうな人・・・
(?1)「おはよー。はじめまして・・・だよね?」
大きな声で挨拶をしてた。
(?2)「ハルカうるさい。静かにしてよ。」
(?3)「今何時だと思ってんだバカ」
次々と人が起きてきた。
ルイ「ここ・・・どこ?」
(?3)「知らされてないのか?ここは執事育成学校。お前は今日からここで何年か勉強するようにと理事長から言われている。ここは寮の202号室だ」
執事育成学校?何年も?今日から?
(?3)「自己紹介がまだだったな。名前が分からないと不便だ。俺はルード=トルソンだ」
(?1)「俺がハルカ=クロッチェル。ハルカだよー 」
(?2)「僕はミソラ=サンドラ。ミソラッて読んでほしいな」
ルード「あっちで寝てんのが・・・」
(?4)「ガートン」
小さな声で聞き取るのがやっとだった。
ルード「ガートン=トリビアだ。一応あいつが班長でこれで1班だ。何か質問はあるか?」
頭が混乱してる。でも聞きたかった。
ルイ「レイってどこにいるの・・・?」
ハルカ・ミソラ・ルード「レイ?」
ルード「レイってのはお前の姉弟か?」
ルイ「うん。ここにレイはいないの?」
ハルカ「うーん。君が今日来たからまだ分かんないなぁ」
ミソラ「僕も分かんない。でもきみと姉弟ってことわさ、顔も似てるんでしょ。以外とすぐに見つかるんじゃない」
ルード「そいつ、この国の次期王女かもな。ニュースで次期王女が孤児って流れてるぞ。まだ情報は少ないが青い瞳に金髪で美しい顔立ちだと評判だ」
もしかしたら・・・
ミソラ「きみと姉弟ってことはさ、おんなじ顔なの?」
レン「双子・・・」
ハルカ「双子なの!?スゲー!ホントにおんなじなの!?」
ガートン「ハルカうるさい」
後ろから猫の枕が投げられた。すごい豪速球でミソラにヒットした。
ミソラ「ひっどいガートン!僕関係ないじゃん!」
ガートン「ちっ」
ハルカ「イエーイ!回避成功!」
ルード「いい加減にしろ!もう朝だぞ!」
時計を見ると朝の4時30分だった。僕は1つの希望が見えた。
7年後
《レイ視点》
お父さんが死んで一年経つ。(ここでは王とする)
お母さんはいない。
今日は私の王女として君臨する日だ。国民は私の登場を待っている。綺麗なドレスで着飾り、頭に冠をのせて歩いた。昔の私では考えられない赤いカーペットを踏んで。
カーペットのまわりには執事達が一列に並んでいる。いつもと変わらない光景。
私はふと気になった。執事の1人に私と同じ金髪で、私と同じ緑がかった青い瞳。懐かしさを感じる幼い顔。
レイ「あんた、名前は」
ルイ「ルイです。名字はありません」
レイ「そう」
やっぱりだ。ルイだ。私の弟だ。
私は確信が持てた。
レイ「あとで私の私室に来なさい。あなただけで」
ルイ「!、はい!」
ルイは相変わらずびびりだ。私が話しかけたとたん一瞬ピクッて動いたんだもの。
君臨に必要な儀式を全て終え、私は私室に戻った。
するとドアの前でレンが待っていた。タキシード姿でもビビりなレンは少し笑えた。
部屋に入れてドアを閉めた。
レイ「久しぶり」
ルイ「お久しぶりです。王女様」
レイ「そんな堅苦しくしないでよ。ここだったら誰もいないわ」
ルイは少し戸惑っていた。
ルイ「・・・久しぶり、レイ」
やっぱり、ルイはルイだ。びびりで周りのことを一番に思える優しい子だ。
レイ「・・・少し話そう。そこに座って。」
ルイは私がすすめるとおどおどしながら座った。
ルイ「レイは・・・あのあとどうなったの?」
聞きにくそうに聞いた。
レイ「私は売られてた。でも売られた先がここだったの。ここでは私は孤児って言われてた。ルイは?」
ルイ「僕は、執事育成学校の生徒にされてた。そこでずっと育って来た。ここにいる執事はみんなその育成学校の最高位の成績を持ってきた人なんだ。」
ここまでこの家にいて知らなかった。
レイ「あんたもそうなの?」
ルイ「うん。今年の春にハルカ達が支えてくれてやっとなれたんだ。最高位の成績を持ってないと王女に会えないから」
レイ「ハルカ?その人たちも執事なの?」
ルイ「うん。僕のいわゆる先輩。でもここに先に来てると思ったんだけどなぁ」
レイ「その人たちのこと、いろいろ教えて」
ルイ「知ってることだったらいいけど、なんで?」
レイ「ルイのことを預かってもらってたんだもの。今の私ならお礼をしても不自然ではないでしょう」
ルイ「レイ・・・。僕にな何でも頼んでくれ。今まで離れていた分、レイをさ支えたいんだ。これからは僕がレイを守るよ」
レイ「ありがとうルイ。何かあったら頼むわ」
そこでレンとの会話を終えた。
《ルイ視点》
やっぱり、レイだ。僕と同じ顔で僕と同じ背格好、ぶっきらぼうでどこか幼い感じ。そして、レイに呼び出された。
やっぱりレイも僕のことを気づいていたのかな?でも、それ以上に不思議なのは、見張りとかが1人もいない。大丈夫なのかな。
パーティー
《レイ視点》
私がこの国の王女になったとき、パーティーがあった。
私を孤児と呼んでみんな近寄ろうともしなかった。悲しくはなかったけど寂しかった。そこに1人の青い髪の男が近寄ってきた。
青髪の男「初めまして、王女様この度は、王女就任、おめでとうございます。」
第一印象は、綺麗な人だと思った。少し見とれていた。
青髪の男「どうかなさいましたか?」
レイ「あ、いえ、ようこそいらっしゃいました。あなたは・・」
青髪の男「これは失礼。私はカインと申します。隣の青の国の王です。まだ即位したばかりなのですが・・・」
レイ「そうですか。今宵はどうぞお楽しみください。それで、あの・・・彼女などいらっしゃいま・・・」
カイン「アリア!歩いちゃダメだって。王女様、失礼します。」
緑の髪をした女が歩いていると、カインさんは行ってしまった。
これが私があの人に惚れた日だったのだろう。
パーティーが終わって1ヶ月が経つ頃
《ルイ視点》
僕はハルカとミソラに頼まれたチョコレートとパンを買いに出掛けていた。二人はまだ休みがとれなくて外に出られないんだそうだ。ルードとガートンは自分から仕事したりして休みはあんまり取らない。休んでもやることがないんだそうだ。
レイからも頼まれ事があったからそれで休み扱いではなかった。
買い物を終えて歩道を歩いていると緑髪の女の人が路地裏から出てきた。ビックリして緑髪の人は転んでしまった。
ルイ「ごめんなさい!大丈夫ですか」
僕は顔を見た。美しい翡翠色の瞳だ。吸い込まれそうなほど美しい。緑髪のツインテールをしている。
緑髪の女「こちらこそごめんなさい。人がいるなんて思ってなくて・・・」
声までも綺麗だ。思わず見とれてしまった。
緑髪の女「どうかなさいましたか?」
ルイ「あ!いえ、なんでもないです」
僕はその人を起こした。
青髪の男「アリア!ダメじゃないか、1人で出歩くなと言っただろ」
ルイ「どうされましたか」
僕はなんとなく聞きたかった。
青髪の男「あぁ、すまないこいつ目が見えないもので・・・許してやってくれないか」
その人はおどおどしながら言っていた。
ルイ「あ、おきになさらず。何かあったのかと思いまして」
青髪の男「そうですか、ありがとうございます。では」
緑髪の女「ありがとうございます」
その日の夜、僕は寮に戻って顔を赤らめて机に突っ伏していた。
ハルカ「ありがとー!ルイ!これで明日も生きてける!」
ミソラ「んな大袈裟な。でもありがとー、ルイ。これ青の国限定のチョコなんだぁ」
ルイ「・・・そう」
ハルカ「どした?ルイ、顔赤いよ、熱?」
ミソラ「なになに~。気になる子でもでき」
ミソラがしゃべっているとガートンの枕攻撃がヒットした。
ガートン「ミソラうるさい。寝れないだろうが。次くだらねぇこと喋ったら舌引っこ抜くぞ」
ハルカ「おぉ怖い怖い。ルイ、寝よう?」
ルイ「うん」
《レイ視点》
ルイに頼んでいた緑髪の女の事を書いてある本は正しかった。
目が見えなくて同い年で緑の国の王女で"青の国の王と婚約者"
そこが1番悔しかった。私の方がよっぽどあの人を愛せるわ。
レイ「なにか・・・なにか・・・」
あの女より私の方が素敵なのに・・・悔しい。
私は怒りの有頂天に達した。正直覚えてないけど、トーマス大臣になにか命令をしたのを覚えている。
《ルイ視点》
レイに頼まれていた本を渡してから数日経つ。あれから連絡や大きな動きもなかった。これが普通だ。でも、ルイの私室の前を通ると時々「なにか・・・なにか・・・」と聞こえる。
休憩時間に寮で自分の荷物を整理しているとトーマス大臣に呼び出された。
トーマス「実はな、レイ王女様のご命令で緑の国を滅ぼせと命令が下ったのだ。そこでだ。お主にお願いしたいのじゃ。成功すればどんな報酬でもやろう」
え・・・レイが?そんな命令を?
ルイ「それは・・・本当にレイ王女様からの命令なのですか。」
トーマス「あぁ、わしが直々に命令されたのだ。間違うはずなどあるまい」
ウソだろ・・・なに考えてんだよ、レイ
トーマス「まぁ、わしもあまり殺生は好まないのでな。お主に頼みたいのだが・・・出来るだけ早くとのことだ。明日にでもお願いしたい」
どうしたら・・・どうしたら・・・
トーマス大臣の目を見ると僕に訴えているようだった。「はい」と言えと。大臣も面倒事にしたくないようだ。
今、ここで断ったら反逆者として処刑されてしまう。僕は構わないけど、レイの笑顔を守れなくなるのは何より悲しい。
ルイ「・・・わかり・・ました」
トーマス「ではお主に五千の兵を貸そう。明日門に並べておく」
ルイ「・・・わかりました。では失礼します」
僕は焦った。なにか、僕の心にひび割れが生じた気がした。
寮に戻ると、夜になっていた。
頭のなかがぐるぐるしている。何も考えられない。
ミソラ「どしたの?ルイ。すっごい顔青いけど」
ルード「貧血か?」
ガートン「だったら教官に言わないと・・・」
みんな心配してくれる。
ルイ「大丈夫・・・先に寝てて」
ハルカ「最近ルイの顔色って忙しいよね~」
そう言って少ししたらみんな寝てた。
どうしよう・・・どうしよう・・・
気がつくと深夜一時になっていた。ガートンがモゾモゾと起きてきた。
ガートン「どしたのルイ。こんな時間まで」
ルイ「ガートンこそどうしたの?」
ガートン「便所。そういうルイはどうした?なんか悩み?」
ルイ「似たようなとこ」
ガートン「ふーん。で、どんな悩み?」
ルイ「え、言わなきゃダメ?」
ガートン「え、別に。言いたくないならいいけどさ。お前の信頼できるやつとかに、相談してみなよ。悩んでても解決出来ないのがほとんどだし...(小声で)俺でもいいし...」
ルイ「じゃあさ、ガートン、聞いてくれる?」
僕が言うとガートンの目が一瞬キラキラと輝いた気がした。
ガートン「・・・いいよ」
僕はガートンにトーマス大臣との会話を全て話した。
ガートン「え、王女様ってそんなにバカだったっけ?」
ルイ「え、何で」
ガートン「俺だったらルイに1人で行くようにするかな。だって大人数だったらバレちゃうじゃん」
1人で・・・
ルイ「ガートンがもしさ、そう言われたらどうする?」
なんとなく聞いてみたかった。
ガートン「・・・。自分のしたい方をする」
え?
ルイ「何で?」
ガートン「今日はよく質問してくるね、ルイ。まぁ、あとに心のなかがモヤモヤするのも嫌だし」
今日はガートンにしてはよく笑っていた。
ミソラ「ガートンなにー。うるさいよ。って、ルイ起きてたの!?」
ガートン「そーなんだよね~。ルイとお話ししてたの~。いいだろ~。(棒)」
ミソラ「いや全然羨ましくないんだけど。笑いかたキモいし。てかルイ寝ちゃったじゃん」
ガートン「あ、ほんとだ。起こさないように起こさないように・・・」
僕はいつの間にか寝落ちしてた。
次の日
僕は朝7時に黄の国の門に出た。そこには驚くほどの人数の兵士がいた。
兵長「ルイ殿でしょうか。私、今回の戦の兵長を務める、アリシヤ=ダウンジと申します。ルイ殿、指揮をお願い致します。」
ルイ「わかりました。(大声で兵に向けて)本日、奇襲をする!目的地は緑の国である!我々に降伏するものはみな生きて連れて来てくれ!目的は・・・アリア王女のみだ!」
普段の僕では考えられないほどの大声だった。
兵士たち「おおー!!!」
みんなやる気だ。少し怖い。
アリシア「ルイ殿、大丈夫でしょうか。震えていらっしゃるようですが・・・」
ルイ「大丈夫です。アリシヤ兵長。戦のようなものですから・・・。」
アリシヤ「そうですか。おきをつけて。では、進む」
アリシヤの号令で、僕を先頭に五千の兵が動き出した。
緑の国門前
緑の国の門番「お主ら、なんのご用かね。こんな大勢で」
アリシヤ「王女様のご命令でな。悪いが通してもらえないだろうか。理由はあまり話せないのだが」
緑の国の兵士「残念ながら、なんのご用もなしにお通しするわけにはいきませぬ。なんのご事情でしょうか」
アリシヤ「単刀直入に言う。この国は今日でおしまいだ。わかったら門を開け」
緑の国の兵士「なぬ!そなたら、この国を滅ぼしに来たのか。ならば、ここで・・・」
するとアリシヤが緑の国の兵士の首を跳ねた。
アリシヤ「長話は嫌いなのでな。ささ、ルイ殿行きましょう」
意図も簡単に人を殺せるアリシヤが僕は急に怖くなった。
兵士の1人が鍵を開け、周りが血の海になるまで、あまり時間はかからなかった。叫び声や怯え声、赤ん坊の泣き声などが次々と聞こえてくる。教会へ入ると、神へ祈りを捧げている神父様がいた。どこか懐かしく思える。
アリシヤ「何をボーッとしておられるのですかルイ殿。早くしなければ」と言って神父様も殺してしまった。僕は血の気が引いた。
兵士の1人「兵長!城の裏口の解除が完了いたしました!」
アリシヤ「ご苦労。私とルイ殿と数名で侵入する。あとから駆けつける。兵を分けて侵入しろ」
兵士の1人「はっ!」
そのまま兵は走り去った。
アリシヤ「ではルイ殿、参りましょう」
僕は頭が真っ白になっていた。
城へ入ると、死体の山があった。むせ変えるほどの鉄の臭いに吐き気がした。
兵士達「兵長とルイ殿がいらっしゃったぞ!道を開けろ!」
僕は馬に揺られて先頭に立った。そこは王女の私室の扉だった。
アリシヤ「中にいるのはアリア嬢のみだな」
兵士の1人「はい!敵はいないでしょう」
アリシヤ「ならば、ルイ殿にお任せしよう」
アリシヤは僕の気持ちを察したかのように命じた。
ルイ「わかり・・・ました・・・」
扉を開けると、本当にアリア王女のみだった。
ルイ「アリア王女・・・あの」
アリア「もう・・・良いのです。もうおやめください」
僕の言葉を遮るようにアリア王女は言った。
アリア「この国は・・・平和の国。民の笑顔がこの国の財宝。父は、おっしゃっていました。しかし、今、その財宝は無くなってしまった。もう私は、民が傷つく声など、聞きたくありません。この身が滅びても構いません。もう・・・お止めください・・・」
アリア王女の見えない目から涙がこぼれ落ちていた。
ルイ「アリア様・・・申し訳ございません。私は、出来ることなら、アリア様をお救いしとうございました。しかし、叶わない。こんな不甲斐ない私を、お許しください」
何を言えばいいか分からず、頭に思い浮かんだ言葉を言い続けた。
アリア「最後に・・・カイン様にお伝えください。こんな私を支えてくださり、本当にありがとうございました、と。お願い致します」
アリア王女は素敵な笑みを浮かべた。
アリア王女は窓から羽ばたくように飛んだ。まるで、鳥のように・・・
アリシヤ「ルイ殿、お話は終わったかい」
僕は頭がぐらぐらした。そして吐き気がした。そこから、意識はない。
《その後》
???「アリア・・・。許せねぇ。あいつら・・・クソッ!なぜだ!」
1人、緑の国の城門前で泣いているフードを被った男がいた。アリアの死体を見つめている。そこに、薄茶色の髪をした女が近寄ってきた。
???「カイン様、姉上は微かに笑っております。その前で泣くのは、失礼だと思いますよ」
フードの男はカインだった。
カイン「お前は・・・ユシア!」
ユシア「お久しぶりです。お義兄様」
《レイ視点》
トーマス「王女、緑の国は壊滅いたしました。あの国の女王は自殺したとのことです」
レイ「そう・・・。ところで、ルイはどうしているの?最近見ないのだけれど」
トーマス大臣は血相を変えて言った。
トーマス「・・・私が緑の国を滅ぼすようにルイ殿に命じました。王女様はなにかとルイ殿に甘いので、理由があるのかと思いまして・・・」
・・・は?
レイ「(小声で)ふざけんな」
トーマス「え」
そのとき私は思ったことを片っ端から言った。
レイ「なんでルイに任したのよ!あの子に任せなくても他に人材はいくらでもいるじゃない!なんであの子に任せたのよ!ねぇ!」
わめき散らした私をトーマス大臣は涙目で見ていた。
トーマス「申し訳ございません。ですが、ルイ殿は人を殺めたりしておりません。彼は指揮をとっただけでございます」
レイ「...それで、ルイは今どうしているの?」
私はやっと落ち着きを取り戻した。
トーマス「ルイ殿は緑の国壊滅後、ずっと四十度以上の熱で寝込んでおります。私の独断で、有給休暇を与えております。」
やっぱり・・・
レイ「では、起きたときに誰か付き添いでいいから私の部屋に連れてきて」
トーマス「承知いたしました。では」
そうして、部屋を出ていった。
《ルイ視点》
目が覚めると僕は寮の隔離室で横になっていた。隣には僕と同い年っぽいの男の子が座っていた。寝てるっぽい。目が霞んでよく見えない。
ルイ「誰・・・」
???「んぁ」
なんか起きたっぽい。あくびしてる声がする。
???「あ、起きた。大丈夫か?俺誰か分かる?」
こうやって質問攻めしてくる高い声には聞き覚えがあった。寮で隣の部屋の...
ルイ「・・・シアン?」
シアン「正解。意識ははっきりしてるっと。あんま動くなよ。化けもんみたいな熱あんだから。人間の体温じゃねーよ」
そういうとシアンは僕に体温計を見せつけた。
41.8℃ってある。あ、ほんとだ。というかなんでシアンここにいるんだろ。
シアン「人間ってスゲーな。ストレスでこんだけ上がんのか」
シアンが笑いながら話す。シアンはいつもとおんなじ笑い方をしている。
玄関の方でコトンと手紙が入れられた。
シアン「んー、なんだろ。へー、ひー、はー」
シアンが中身をみてなにか言ってる。なんだろう。
シアン「ルイ~。王女様んとこ来いってさー。お前なんかしたのか?この字のきったなさからしてトマトのおっさんだろうけど」
シアンは嫌いな人のことをあだ名で呼ぶ。多分トーマス大臣のことだと思う。
ルイ「分かった。行ってくる」
とは言ったものの体が動かない。するとシアンが「よっこいせっ!」って言って僕を起こしておんぶした。何が起こったか分からないくらい速い。
シアン「俺が付き添って来いってさ。めんどくせー」
なんか文句を言って歩いている。凄い勢いでドアを蹴飛ばした。
ルイ「ごめん。シアン。」
頭が働かなくて言える言葉がそれしか思い浮かばなかった。
シアン「あー、ごめんごめん。めんどくせーってのは隔離室から私室まで2キロくらいあるじゃん?普段ならルイと話しててすぐついちゃうけど今話せねーからさ。だから早く直せよ。俺の愚痴もいつ爆発するかわかんねーからよ。」
シアンは笑ってた。
ルイ「うん。ありがとう」
シアン「んじゃ寝ときな。まだ結構時間かかるから」
ルイ「うん」
青の国にて
《カインとユシア》
カイン「お前、修行に行くって手紙を寄越して出ていっただろ。なんでこんなときに戻ってきたんだ?」
ユシア「ちょうど修行期間が終えたところでしたの。そんなとき、黄の国の王が変わったと言うので見てみたかったのです。そうして戻ると緑の国が壊滅寸前だったのでお手伝いしたのです。せっかくの剣士の修行も無駄になってしまいましたがね・・・」
カイン「そうか・・・」
ユシア「お義兄様にお許しをもらってからにしようと思っていたかとがありまして・・・」
カイン「なんだ?」
ユシア「黄の国の王女を倒そうと思いまして」
カイン「・・・黄の国をか!?あそこには何十万と兵がいるんだぞ!お前1人で戦える訳がない!我が国の兵を全て出しても五万が限界だ」
ユシア「お義兄様の兵を借りるなんて端から考えておりません。隠れて反逆者を集おうかと思っております。聞けば、黄の国の王女様は相当な悪人と聞き及んでおります。王女の行動に反対するものもいると思いますよ」
カイン「しかし・・・」
ユシア「お義兄様には絶対に迷惑はかけません。だからお願い致します。黄の国を滅ぼしたいだけなんです。このままなにもしなければ、姉上に顔向けできません」
ユシアは白い顔を床に擦り付けて土下座した。
カイン「わかったわかった!わかったから!」
慌ててカインはユシアを席に座らせた。
ユシア「お義兄様、...やはり...私は...悔しいです...。目の前で姉上が落ちたとき...私は...」
ユシアは泣いてはいないがかすれ声で声を出すのが精一杯と言うほどだった。
《レイ視点》
シアン「失礼します。ルイをお連れしました」
来た。
レイ「入れ」
ドアが開くと顔が真っ赤のルイがシアン?の背中にいた。
レイ「悪いわね。ルイの体調はどう?」
シアン「すいません。今こいつ寝ちゃってて。体温は約41℃です。意識はボーッとしてますがあります」
予想より高い...
レイ「じゃあ私のベッドでいいから寝かせて。貴方にも話があるわ」
シアン「?わかりました」
ルイはシアンの背中から離れてベッドに横になった。全身火傷したように真っ赤だった。
シアン「話と言うのは・・・」
レイ「ルイの世話係をしてもらいたくてね。嫌ならいいのだけれど・・・」
シアン「いえ!そういうわけではなくて・・・ただ、ルイがこんなに高い熱が出ることって今までないんですよ。今までストレスとかで熱が出ることはしょっちゅうでしたがここまでひどいのは初めてなんです。なにかあったのですか?」
レイ「(小声で)私のせいよ」
シアン「?」
レイ「緑の国が滅んだでしょう。あれは私の仕業よ。」
シアン「!?」
シアンは驚いていた。まさに目が点のようだわ。
レイ「驚いたでしょう。言いふらすなら好きにすればいいわ」
シアン「・・・それはルイの熱となにか関係が?」
レイ「私が頼んだの。大臣に頼んでルイが兵を率いて行ったの」
シアン「・・・そうですか」
真っ青のシアンは言葉が出なかった。
ルイ「ん・・・」
小さな声だがルイが目を覚ましたことは分かった。
レイ「おはよう。ルイ。調子はどう?」
ボーッとしてるルイに聞いてみた。なんかボソボソ言ってる。後ろでシアンが唖然としてる。
レイ「シアン、戻っていいわ。世話係は考えておいてね。用がすんだらまた呼ぶから。今日はここでルイを休めるわ」
シアン「っ!ではもうひとつベッドを」
レイ「じゃあお願い」
そう言ってシアンは部屋を出ていった。見るとルイは泣いていた。小声でなにか言っていた。
ルイ「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
ずっと言ってた。
レイ「ごめんね。ルイ。私が守ってあげるから」
その日の夜は満月だった。
元緑の国の土地
中央でユシアを中心に老若男女が円になって座っていた。全てがレイの兵に家族を殺された恨みある者ばかりだった。そのときたまたまいなかった、あのとき隠れていて見つからなかった。そんな偶然で生き残った家族や離ればなれになった家族がここにはいた。その数なんと十万人。黄の国より少し少ないが、強者ばかりである。青の国の兵も足して、約十五万人。カインとユシアが作戦を立てる。
ユシア「この門から入るには門番を倒さなければなりません。しかし連絡を入れられても困ります。そこで後ろから鈍器でぶん殴れば良いと思うのですが」
カイン「そう物騒なことを言うんじゃない。だが、別れた方がいい。全体の指揮はユシアに任せる。途中で合流しよう」
ユシア「はい。お義兄様」
カイン「食糧等は青の国で保証する。防備も支給しよう。その代わり、黄の国のレイ王女を必ず捕らえよう。なるべく被害を出さないように。実行は一ヶ月後だ」
それぞれ掛け声をあげた。
半月後
《ルイ視点》
僕の熱はストレスから来たものだったらしい。その間ずっとシアンが世話してくれてた。シアンはずっと37℃前後だったからあの部屋にいたんだって。昔からだ。
レイが僕の看病を一度してくれたらしい。失敗して僕は水を被ったみたい。でもレイは頑張って看病してくれた。。今日は休暇を一班のみんなとシアンで青の国のアイスランド地方に来ている。年中雪が降っている国だ。
ミソラ「さっむ~。もっと厚着してくればよかった」
ガートン「バカだろ」
ルード「いや、バカはあいつらだ」
ルードの目線の先には来たばかりなのにお土産コーナーのお菓子を見ているハルカと半袖半ズボンで雪だるまを作っているシアンがいた。
ミソラ・ガートン「バカだ」
周りはセーターやマフラーを着ている。
ハルカ「ミソラ~!新作チョコってやつあるよ~!あ、パンあった!」
店から大声でこっちに言った。恥ずかしい。
ミソラ「ホント!?どんなの~」
そう言ってミソラも店の方に行っちゃった。
ガートン「ねぇ、ルード」
ルード「ん?」
ガートン「俺らいつあいつらの保護者になったの?」
ガートンが言うのはパンの試食を食べて満面の笑みを浮かべるハルカと次々にお菓子をかごに入れていくミソラ、店の前に大量に雪だるまを作って満足気なシアンのことだろう。
ルード「俺にもわからん。どう思う?ルイ」
ルイ「と言われても・・・」
ガートン「あ、猫」
黒い猫を追っかけてガートンも行っちゃった。
ルード「ルイもどっか行きたいとことかあるか?なんだったら行ってきてもいいぞ」
ルードが気を使ってくれてる。
ルイ「大丈夫。ルードはないの?」
ルード「あいつらの子守りで精一杯だ。お前と歳が一年二年違うなんて考えられないな」
ルイ「うん」
ルード「お前は最近なにかと疲れているようだしな。なにか発散できればとあいつらなりに考えたんだと」
そうなんだ。初めて知った。
ハルカ「ルイ!雪合戦しよーぜ!ミソラ対俺らで!」
いきなりハルカが目の前に出てきた。ビックリした。
ミソラ「なんで僕だけ一人なのさ~!!!」
後ろから走ってくるミソラとシアン。
シアン「反応面白いからじゃね?」
ミソラ「うるさいはなたれ小僧」
シアン「んだとテメー!!!戦争じゃー!!」
ガートン「おれもする~(棒)」
シアン「冷って!」
シアンの服のなかに氷を入れてるガートン。凄い悪い笑顔。
シアン「なにしやがる!」
ガートン「いや、暑そうだったから」
シアン「んなわけねーだろっ!」
雪合戦が三人で行われた。
ハルカ「えいやっ!」
後ろから声が聞こえたと思ったら背中が凄く冷たかった。
ルイ「ひゃっ!」
ハルカ「え~なにその反応カワイーww」
ずっと笑ってる。どうやら雪を背中に入れられたらしい。
ルード「ごふぁ!」
なんとルードの顔にミソラの雪玉が当たってしまった。
シアン「あ、やべ」
ルード「(小声で)...ふざけるのも大概にしろよ」
と言って大量の雪玉を抱えてミソラたちを追っかけてった。凄い量の雪玉が一斉に投げられていた。
ハルカ「追っかけようぜ」
僕はハルカに付いていった。さんざん雪合戦をしていた。気づくとお昼になっていた。
このまま幸せな時間ずっと続けばいいのに。
《レイ視点》
レイ「ねぇ、トーマス大臣。最近、なにか代わりはないの?」
トーマス「ええ、これと言って変化はありません」
レイ「ふーん」
なんもないとか言うけど、明らかに国民が減ってるのよね。なにかしら。
《ルイ視点》
ハルカ「あー楽しかった~ww」
ミソラ「そだね~。結局僕が一番勝ってたしね」
シアン「いや俺の方が勝ってただろ!」
ガートン「お前寒くねーのか」
ルード「バカだから寒くないんじゃないか?」
シアン「誰がバカだよ!?」
そんな他愛もない話を帰り道ずっとしていた。
ルイ「ねぇ、みんな」
五人「ん?」
ルイ「もしさ、黄の国がなくなったらどうする?」
ガートン「全員野垂れ死に」
ミソラ「暗いよ!んでもまぁ青の国でお仕事探すかな~。チョコ作りたい!」
ハルカ「俺発明家になりたい!」
ルード「不安すぎる」
シアン「俺世界一周したい!」
ガートン「金かけて一人で行ってこい」
シアン「冷たっ!」
ミソラ「ルイは?」
ルイ「僕は...王女を守りたい」
ルード「そうか。随分姉思いだな」
ハルカ・ミソラ「協力くらいするぞ!(できるよ)」
ガートン「その代わり俺らの夢も叶える手伝いしてもらわなきゃね」
シアン「力仕事はまかせろ!」
ああ、こんないい人もいたんだね。
ルイ「じゃあさ、もし・・・」
一ヶ月後
青の国では後方に弓矢部隊、前方は剣士の部隊で固められた。みな青の鎧を身にまとっている。中央に赤い鎧を身にまとい、輝く宝刀を持つユシアがいる。
それと別の部隊で、少数だが強力な兵士を数十名つれて並ぶ別の部隊。先頭は馬に乗っているカインがいる。
カイン「本日、黄の国を壊滅させる!狙いは王女のみだ!いいか!被害は最小限に抑えろ!抵抗するもの以外は絶対に殺すな!」
みな「おぉー!!!」とやる気だ。
ユシア「お義兄様、姉上は...喜んでくれているのでしょうか」
ユシアの質問にカインは答えられなかった。心の奥底では間違っていると思っていた。でも、許せなかった。
カイン「喜んではいないだろう。しかし、我々にできる唯一のことであろう」
ユシア「・・・はい」
このとき、カインは思っていた。王女を殺せばユシアの心も落ち着くだろうと。
歩いて20キロ先の黄の国は門番が見守っていた。
門番「何者だ!通行証を見せい!」
カイン「これはすまない。王女に用事があるのだ。通してはもらえないか」
身に付けていた被せ布を取って挨拶をするカイン。それを見た門番は顔が真っ青になった。
門番「うっ...あっ...王様...。えっと...その...ただいま開けさせていただきましゅ!」
被せ布を取った瞬間、門番は無礼をしてしまったことを後悔し、死刑だろうと怯えながら扉を開けた。
カイン「大丈夫だ。お前を罰したりしない。その代わりと言ってはなんだが、私の兵になる気はないか?」
それが門番には脅しに聞こえた。
門番「はいっ!!!今すぐにでも!」
カイン「では後ろについてくれ」
なるべく犠牲を出さないようにする策だった。
こうして、黄の国の大半はカインとユシアの味方になった。
《ルイ視点》
もうすぐ、この国は終わるのだろう。
民の半分以上はカイン様についている。大臣や働いていた者もほとんど逃げ出した。僕を含める六人を除いて。
ルード「で、どうするんだ?」
みんなに普段着に着替えてもらって、王室の前にいる。僕は右手に自分の服を持った。
ルイ「ここで待ってて」
シアン「俺も行く」
ルイ「えっ、ちょっとまっ...」
ミソラ「んじゃ僕も」
ルイ「えっ」
ハルカ「みんな行くんだったら...」
ルイ「ちょっ...」
ガートン「暇だから行く...」
ルード「だそうだ。どうするんだ?こいつらが一度言ったら絶対言うこと聞かないのはルイが一番知っているはずだろ」
あぁ、やっぱりいい人たちだ。これならレイも安心するかな。
ルイ「ありがとう...みんな...」
シアン「他はともかく俺は女王直々にルイを任されてるからな!どこまで着いていってもいいんだ!」
ガートン「んじゃあ女王に頼まれてなかったら今ここにいないんだ。ひっどいねぇ」
シアン「んなわけねーだろ!頼まれてなかったらもっと暴れてーし」
ミソラ「シアンはどうでもいいけど、僕はホントに自分の気持ちできたんだからね!」
シアン「おい!」
ハルカ「普段だったら絶対逃げてるしね」
ミソラ「そんなわけないし!」
ルード「んでどうするんだ?本当に」
ルイ「待ってて。レイが来たら地下の隔離室に抜け道があるから、そこから逃げて...」
ハルカ「それは、お前もいるんだろうな」
ルイ「・・・誰かを囮にしなきゃ、みんなは救えない...僕が、囮になる」
ミソラ&ハルカ「は?」
そうするしか...ない
ガートン「あぁ、そうかよ」
ガートンの声とともに僕を叩く音が聞こえた。
頬がとても痛い。
ガートン「俺たち全員ででないと、意味がねーだろ」
また叩こうとするガートンをシアンとルードが止めた。
いつもと比じゃないくらいの力だった。
シアン「ルイが決めたことだ!お前がとやかくいうな!」
ルード「ルイ、考え直せとは言わない。だが、お前がいなければレイ王女は...」
ルイ「・・・レイは大丈夫だよ。みんながいてくれるもの。ガートンが言ってくれてるのもよくわかってるつもりだ。だからこそ、敵が間近に迫ってきている今、みんなが救われる選択をしなくちゃいけない。みんなは、レイが出てきたら逃げて...」
これしか、ないんだ。
ミソラ「うっ...うっ...ルイっ...」
ハルカ「ルイっ...」
ルード「ルイ...」
ガートン「...」
シアン「ルイ...うっ、うぅ...」
みんな、泣いていた。あぁ、せめてこの人たちだけは、生きてもらわなきゃ。
ルイ「じゃあね...みんな...」
ドアを開けると、顔面蒼白のレイがいた。
レイ「あぁ...ルイ」
ルイ「これに着替えて逃げて...」
《レイ視点》
あぁ、もうおしまいだ。この国は終わりだ。
どうしよう。
ドンッ!
扉が開いたと思うと、ルイが立っていた。そして、ルイの服を渡された。
お互いに着替えた。ルイは私の服を、私は渡されたルイの服を。少し大きい。
レイ「終わったわ」
ルイ「それじゃあ、外に出て。みんながいるから。」
レイ「ルイはどうするの?」
ルイ「僕はここにいる。大丈夫だから」
レイ「でもっ...」
ルイ「いいから。ここにいたら危険だから。カイン様がすぐそこまで来てるんだ。早く...」
レイ「そんなことしても、ばれてしまうわ」
ルイ「僕らは双子だよ。絶対にばれないよ。早く行って」
そう言うと、部屋から出された。
?3「ルイ?どうだった?」
レイ「私はレイよ」
知らない男が四人、シアンが一人いた。
?3「!?」
?4「それより先に地下に...」
?2「話はあと!もうそこまで来てるよ!」
?1「嘘だろ!早い!」
シアン「レイ様!はやく!」
レイ「でもまだルイが中に...!」
赤い鎧の兵士「ここか!」
?3「早くいけ!」
そのあと、あまり覚えていない。
《ルイ視点》
もう、後戻りはできない。これがこの国の結末なのだから。みんなは逃げられたかな。
これであってたのかな。
ユシア「黄の国の王女、レイ!間違いない!捕らえろ!」
兵の何人もが僕の腕や足を掴んだ。
ルイ「このっ!無礼者!」
牢の中
ここまでバレなければもう大丈夫だと思う。みんなは大丈夫かな。今日で僕の命は消える。でも、いいと思う。僕の分もレイが幸せに生きてくれたらいい。でも、やっぱり寂しいな。
もう、みんなと笑って遊べないんだ...。
カイン「出てくれ」
僕が死ぬのは、とてもきれいな花に囲まれた死刑台だ。
ユシア「ただいまから、~」
《ルイ視点》
もうすぐ終わる。後悔してないって言ったら嘘になるかな。もう二度とみんなと笑って遊べないんだ。あぁ、最後にまた一緒に遊べたらいいな。
相変わらずミソラは泣き虫だよね。
ハルカ、そんなに曲げたら眼鏡割れちゃうよ。
そんなに大声で泣いてたら聞こえちゃうよ、シアン
爪噛んじゃだめだよ、ガートン。
小さくでいいから笑ってよ、ルード。
前のように僕を引っ張って、笑わせてよ。レイ。
これが言えたらなぁ。ちょっと恥ずかしいや。
《レイ視点》
もうすぐ終わる。ルイの命が終わりを告げようとしている。
ルイが私の罪を持って死のうとしている。
私は、弟に罪を擦り付けた最低な女なのか?
私は姉として、ルイに何をしてあげられた?
私が逃げるときに、もっと止めていれば、こんなことにならなかったんじゃないのか。わからない。どうしてこんなことになった?
あぁ、こんなときでも私は自分のことしか考えられないのかしら。最低よね。
ユシア「罪人、ここへ」
そこは、首切り台だった。これまでだ。
「もし生まれ変わったらさ、また一緒に生まれよう」
レイ「いっ、い、」
スパンッ
レイ「イヤーーー!!!」
三年後
ルイの墓は、花園の中央部分に置いてもらった。太陽の光が一番当たるところだ。
ミソラ「ルイ、今日ね、ルイが前に買ってきてくれた青の国のチョコ買ってきたよ。みんないろいろ持ってきたんだ」
ハルカ「俺はな、青の国のパンを買ってきたんだ。新作もあってさ、ルイ好きそうだったんだ」
ルード「お前自分が食いたかったんじゃないのか?」
ハルカ「いやっ、えっと、そのー、ちょっとだけもらいたいなぁ~なんて」
ガートン「罰当たれ」
シアン「俺は~、赤の国でしか咲いてないミアファリンって花買ってきたんだ!ルイとレイの髪みたいな色してるだろ!」
ミソラ「いや二人とも同じ色だし...」
ルード「俺は本を買ってきたんだ。今回の本は古代の各国の遺跡特集なんだ。ルイはあまり本は読んでなかったからな。ちょっとはと思って...」
ハルカ「渋っ!おっさんかよ!」
ガートン「俺...猫のクッキーと猫のクッション...」
シアン「女子か!」
ルード「しかし、レイは今どこで何をしているのだろう。一度くらい顔見せに来ても良いのでは...」
シアン「女の考えは分からねぇーなぁ」
ルイが処刑された後、レイたちはしばらくシアンの隠れ小屋に住んでいた。そこで王女と執事という関係は次第に薄れていった。しかし、外に出るのが恐怖になっていた。青の国が力を強め、黄の国の土地も青の国のものになった。
そのとき、元緑の国はユシアが引き取り、赤の国として新しくなったのだ。完全になくなった黄の国は今、貿易の利用などで使われている。
そのとき、レイは海の向こうを知りたくなり、「世界をみたい」という手紙を残して旅だった。
ルイは手紙をレイに預けていた。あの紙だ。
そこには、他の五人へのメッセージも含まれていた。しかし、簡単なようで難しかった。
「自由に」
とあった。罪悪感を持たせないようにするのだと皆は思った。
??「...久しぶり、ルイ」
その場の一同「!!」
ハルカ・ミソラ・シアン「レイ!」
レイ「元気そうね」
ルード「今までどこに行ってたんだ?」
レイ「だからいろんなところよ」
ガートン「いやわかんないんだけど...」
レイ「いろいろよ。いろいろ。ルイにお土産話って思ったの」
シアン「どんなのがあるんだ!?」
レイ「えっとね、まずは...」
終
読んでいただきありがとうございました。
今回は私のミスで少しずつの更新という形になってしまい申し訳ございません。
なにかミスがあればコメントの方で教えていただければなと思います。また、感想なども書いていただけたらありがたいです。
次の作品の予定はこの物語の別の視点からも書けたらと思います。不定期の更新になってしまうかもしれませんが楽しみに待っていただけたら幸いです。