覚悟を決めました(半強制)
「さぁさぁ、これが貴方の新しい肉体じゃ」
「・・・辞退申し上げます」
完
今まさに種族の垣根を超えた新たな生命が生まれようとしていた。
人類に追い詰められた魔族と獣人はこの状況を打破すべく、魔王ゼノンと獣王ライガーカッブは同盟を結ぶ。
そして友好の証としてそれぞれの王に異種の姫が嫁ぐことになる。
両種族は敵対していた訳では無かったが、
国境付近では少数ではあるが腕試しという名の殺し合いが行われていた。
魔力に秀でた魔族、身体能力が高い獣人、繁殖能力と知能に優れた人間。
魔族も獣人もどちらの種族が強いのかが民衆の関心だった。
賢しいだけの人間など両種族は眼中に無かった。
多少の小競り合いはあったものの平和に暮らしていた魔族と獣人。
が、その平和は眼中に無かった人間によって踏みにじられてしまう。
勝手に攻めてきた癖に逆恨みした人間は勇者を召喚した。
そしてまた攻め入ってた。
勇者の力は絶大で、村を守護する魔族の兵も獣人の兵も手も足も出ず殺されてしまう。
さらには勇者と人間の軍は女子供であっても問答無用で蹂躙していった。
人間から見て醜いものは有無を言わさず殺され、見た目麗しい者は犯され奴隷として連れ去らわれた。
この事態を重く見た魔王ゼノン獣王ライガーカッブはそれぞれの種族の実力者を頭に軍を編成し、勇者にぶつけるが打ち破られてしまう。
どんどん領地を奪っていく勇者と人間たち。
自分らの種族だけではどうにもならないと思った二人の王は、同盟を結ぶことを決意する。
両国の国境に非戦闘地区を制定し、
それぞれを守護する守護神の名前を貰いアルテマサタン(サタンアルテマ)と名付け、
その地で自分らの象徴たる王が別の種族と同盟を結ぶ声明を出す。
これにより魔族も獣人も多少の反発は遭ったものの、両種族は手を取り合うことに成功する。
更に両族の友好を高める為にも、また勇者に対抗しうる新たな力を手に入れる為にも
両種族の血を混ぜることにした。
魔族の魔力と獣人の身体能力を併せ持つ新たな希望。
その希望が今生まれようとしていた。
「いやいやいやいや、無理だって重いって」
「もう時間無いんじゃ、もう腹を括ってくれ頼う」
両種族の希望が新たな身体って無いわ、あり得ないわ。
どんだけ運命の鎖グルグル巻きなのよ。
このプレッシャーって、ドラフト一位指名投手の初マウンドと同じくらい・・・
いや、実績が無い分申し訳ないが俺の方が重いと思う。
だって、霊体なのに嗚咽が止まらない。
「お主はあんだけ祈りを捧げる全ての魔族を、同盟の獣人を見捨てるのか?」
この言葉はヘタレてた俺の心に鋭利に刺さった。
「なぁなぁ、もし俺がその肉体に入り込まなかったら希望はどうなるんだ?」
「・・・魔族の魔力と獣人の身体能力を持つ脳筋戦士が生まれて、大勢の味方を引き連れて、盛大に爆死する」
「・・・それは決定事項なのか?」
「妾には千里眼がある。その能力を使って数万種類の未来を見たが、・・・全て全滅じゃ」
駄目神・・・いやサタンダーモンはそう言うと歯を食いしばり血が滲み出るほど強く拳を握りしめた。
千里眼、流石神だと感心しながらも、その神が転生を勧めると言うことは、運命は変わるのかもしれない。
「なぁ、俺がその希望になったら、魔族は獣人は助かるのか?」
しかし、返事は、
「・・・分からん」
「は?」
「見えんのじゃ、お主が希望となった後の未来が」
「いやいやいや、確信があったから転生させるんじゃないのかよ!!」
あまりに無責任な言葉に思わず言葉が、感情が荒ぶる。
「仕方なかろう。約束された滅びより、まだ見えない可能性の方が何倍もマシじゃ!!」
サタンダーモンは涙を流しながら叫んだ。
サタンダーモンの魔族への愛が、情が、悲しみが、想いが痛い。
「それにお主は既に輪廻の輪から外れておる。希望とならなかった場合、妾と共に、何も出来ず、ただただ、魔族が、・・・全ての魔族が滅ぶのを見続ける事になる」
サタンダーモンはきっと自分が希望に成りたいのだろう。
が、守護神であるがため、直接手を出すことが出来ない自分を責めている。
自傷するように笑う。涙を流しながら。
幼女の姿だというのにその姿はあまりに悲しく、そして何よりも美しく見えた。
「分かった。が、運命を変えれなくても恨んでくれるなよ、サタンダーモン様よ」
「?・・お、お主、・・・ありがたやありがたや」
俺の両手を掴み礼を言い続けるサタンダーモン。
涙を流してるのは変わらないが、その笑みは先ほどの自傷の笑みではなく、
まるで太陽のように眩しい笑みへと変わっており、
幼女だというのに一瞬心を奪われた。
が、俺はロリコンでは無い、俺はロリコンでは無い、と何度も心の中で唱え正気を取り戻すと、
「決心が鈍る前に早く転生させてくれ」
「分かったのじゃ」
さぁ、新たな人生を始めよう。
次のお話は明日の20時に更新します