表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

四葉のクローバーは歪に揺れる

作者: 颯樹

新年一発目から、こんな話で申し訳ございませぬ

m(_ _)m


どうもヤンデレに脳内が占領されている模様です。

少しでも楽しんで(?)頂けますように…。

カツン…カツン…


遠くから聞こえてきた靴音に、私は身体を強張らせた。

カタカタと震える両手を握りしめて、靴音の主が姿を現せるのを待つ。


大丈夫、怖くない。

落ち着いて、冷静に。


自分を落ち着かせようと、何度も言い聞かし深呼吸を繰り返す。

今日こそは、ちゃんと話し合いをしよう。

大丈夫、大丈夫だから…。


外側からしか解錠出来ない扉を開け、姿を現した男は私を瞳に映すとにっこりと微笑んだ。


「あれ?起きてたんだ。おはよう、良く眠れた? 」


声をかけられた途端、跳ねてしまう身体。

両手の震えは止まらない。


「今朝は君の好きな出汁巻き卵を作ってみたよ。お口にあうといいんだけど。」

「…ここから出して。」


テーブルの上に持ってきたお盆を載せながら話す男は、柔らかい笑みを浮かべていたけれど、私の言葉に表情を一変させた。

辛く、悲しそうなものに。

それでも、なんとか笑みを浮かべたまま食器をテーブルに並べていく。


「…君はここから出られない。ずっと、ここで…僕の傍にいるんだ。さ、温かいうちにどうぞ召し上がれ。」

「…どうして?どうしてなの!?家に帰してよ! 」


大きな声で詰め寄る私を見つめる男の瞳に、どろりと濁った光が宿る。

どうしてそんな目で私を見るの?

ゾワリと背筋を悪寒が這い登る。


「君の家はもうないよ。」

「……え?何を言ってるの…? 」


唐突な男の言葉が理解出来ない。

家がないって…そんな馬鹿なことがあるわけがない。


「君の家族は君がここに来た翌日に家を出ていった、と聞いている。」

「りょ、旅行に行っただけなんじゃないの? 」


震える声で反論した私をひた、と見つめながら男が口を開く。


「違う。以前から家を売りに出していたようだね。契約がまとまったから荷物を纏めて出ていったそうだ。…残念だけれど、君は置いていかれたんだよ。」


以前から売りに出していた……?

私は…置いていかれた……?


「…うそ。うそよ、そんなこと……。」


ゆるゆると左右に頭を振る私を痛ましげに…でも愛しげに見つめて。

物わかりの悪い子供に教えるように説明していく。

一言一言を区切るように、混乱している私が理解出来るように。


「君の家族は、君のことを疎ましく思っていた。僕は、君の家族に頼まれて、君をここに連れてきたんだよ。」



君がショックを受けるだろうから、出来ればこの話はしたくなかったんだけどね。

君は、僕が大事にするよ。

ずっと…ずっと僕だけは君の傍にいる。

…愛してる、四葉。

僕が君の家族になるからね。

だから、ねぇ、四葉。僕を見て。




男が何かを喋っているが、全部耳を素通りしていく。

私は…家族に捨てられたの…?

私は…いらない子だったの…?

何故?どうして!?

わからない…何も、わからない…。


わらって

テーブルを囲んで

一緒に食事をしていた光景を

こんなにはっきりと覚えているのに…!!







 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



可哀想な四葉。

あんなにショックを受けて。

あんなに涙を流して。


でも、もう大丈夫だよ。

ずっとずっと、僕が一緒にいるからね。

君の傍にいる為に、僕、凄く頑張ったんだよ。


ねぇ、四葉。

君は覚えているかな。


小さい頃、君が僕に四葉のクローバーをくれたことを。

栞にして、今も肌身離さず大事にしているんだよ。



『…ねぇ、きょーちゃん。四葉のクローバーの花言葉って知ってるー?四葉ねー、知ってるんだよ。教えてあげようか?あのね……』




「…匡輔(きょうすけ)様。四葉様のご家族ですが、無事引っ越しが完了した、と現地より報告がございました。」

「うん、わかった。ありがとう。念の為、暫くは監視を続けておいてね。結納金として纏まった金額を渡してはいるけれど、いつ金の無心にやってくるかわからないから。」

「はっ、かしこまりました。」



ねぇ、四葉。

君には、僕がいればいいよね?

僕が、君の全てだよ。


四葉のクローバーをモチーフにした指輪をコロコロと掌で転がしながらこぼれ落ちた言葉は、誰にも拾われることなく空気に溶けていく。


「…愛しているよ。離れられない程に、ね…。」


君の綺麗な瞳に目隠しをして、真実を遠ざけよう。

何も知らない君でいて。

いつまでも、いつまでも。



「…僕のものになって…。」

お読み下さり、ありがとうございました。


1/14 一部言い回しを編集


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ