第四話 鉄のまるみ
prrrrrrrr
聞き慣れた音が闇に響く。
気づくと目の前の人物は消え、代わりにスマホのライトに反射する物が落ちていた。
「これは……指輪?」
装飾などは施されておらず、ただの鉄の輪の様にも見える。
prrrrrrrr!!
「あ、ああ鳴ってた」
どうやらメールを受信した様だ。
……メールの受信音、あんなうるさかったっけ?
「なになに?」
メールアプリを開いたその瞬間に、丸みを帯びた様な破裂音が白煙と共にスマホから放たれた。
驚き腰を抜かした俺はぎゅっとスマホを握りしめていた。
フワフワと白い煙を漂わせた俺のスマホ……あ?
「……本になっとる」
……なんでだ。
握りしめていたはずの俺の手の内にはスマホではなく、一冊の本が収まっていた。
革で整えられた集めの本は肌触りがとても良い。
……いや、ちょっと待て。待て待て。
スマホどこ行った。
俺はその場に座り直して辺りを探った。スマホのライトが無くなってしまったため非常に怖い。
「無い……」
なぜだろう。
妖精広場(仮)から抜け出せないと知った時よりも、最近契約したあのスマホを紛失したという事実の方が俺を追い詰めている。
汗が止まらない。
「もー、君もしっかり現代っ子なんだねえ」
突然の人声に反射的に振り返る。
「うぐっ!? いってぇ……」
振り返る勢いに頚椎が負け、変な音が身体に響いた。
ボキャッみたいな音が。
「ふむ……やっぱり君は身体が弱いね。いや、この世界じゃ標準なんだろうけど」
「何が言いたいん、ですか……」
「さっき拾った指輪、貸してくれる?」
さっきの鉄の輪を目の前にいるであろう人物に渡す。
「ふむむむ……!!」
「……??」
指輪を両手で握り、今にも倒れるんじゃ無いかというほど顔を赤くさせて唸っている。
みたいな想像ができるほど唸っている。
「ほあーーーー!!!」
「うわあ!?」
そして手に持っている指輪を天高く掲げた。
……気がする。
「ふぅ。ははは、久しくやると疲れるね。ハイこれ、中指につけてね」
指輪を手渡される。
「付けた? よし。その指輪があれば君の身体は『怪我知らず』だ!」
「はあ……?」
「相変わらずリアクションうっすいねー」
そう言い、微笑すると、今度は声色を変えて言った。
「……私が消えた後、その本を開いて。あとはその本が導いてくれる。大抵のことは書いてあるはずだからね。て言うか私の本だから、間違いはないよ」
「ちょ、ちょっと待って。え? 意味がわかんないんだけど……」
「話はココまで。 じゃああとは頑張りなね」
そう言うと声は消え、同時にふ……と、気配も消えた。