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世紀末の七星  作者: 広川節観
第三章 乱れる世界
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77 アポロンの光剣とアレスの剛槌

 翌日、レウとラウラはコッテに旅立ち、俺たちはまたいつもの訓練に明け暮れる日常に戻った。


 空は青く、滴る汗を風が優しく撫でる。体を動かし汗を掻いているが、元の世界と同じようなのんびりとした一日。そこには、慣れ親しんだふたつの真剣な表情と笑顔があった。


 キャサリンとレイラという非日常の美少女も一緒にいるのだが、それはゲームやアニメのキャラクターのように、仮想世界の住人と接していた日常に変換されて脳に取り込まれる。


 訓練の合間に俺はしばし考える。


 この世界に来てから、もう3か月近くが過ぎていた。それでも元の世界は24時ころ。丁度、俺たちが変遷に巻き込まれた日、2019年の7月1日が終わろうとしている。


 竜王国と獣帝国(ビーストエンパイア)。それとエルフ。この戦いには、終わりがあるのだろうか。いや、そもそも、終わりがあっても、俺たちは元の世界に戻れるのだろうか? ここで一生を終えるのかもしれない。


 無事生還か、生涯中央世界セントラルワールドか、悲劇の結末か。考えられるパターンは3つだろうな……。


 それでも、今は訓練あるのみだ。


 「えいっ! やぁーーー!」


 気合を入れて剣を振り下ろす。


 視線を感じてそちらに目をやると、蛍がこちらを見て表情を緩ませた。



     ◆◇◆◇◆◇



 出発前に話していた通り、レウたちは旅立った2日後の夕方には戻ってきた。レウたちの場合は護衛の大部隊を引き連れての移動なので、駆け足といえる旅であった。


 そして、夕食後。俺たちの武器のお披露目会が始まった。


 レウはルークたちに大小5つのケースを食堂に運ばせていて、それらをレウの後ろに積んだまま、皆で食事を取った。


 チラチラと気にする視線を見つけては、忙しくチェックするレウ。そして、『おはじき』だとか、『見てても火なんて出えへんよ』だとか、『どんだけ気にしてるんや』などと、ボケたり突っ込んだりして、皆の様子を楽しんでいるようだった。


 それでも特に俺と幸介は、どんな武器なのかが気になってそわそわしていた。


 こうして、普段と変わらない楽しい夕食は終わった。


 「さて。お腹もいっぱいになったな。ほんなら、約束通り、みんなに武器を渡そうな。そうやな、まずはビビリーナからや」


 俺の武器は剣って言ってたけど、いったいどんな形、色の剣なのか。それに魔法剣と聞いていたので、ワクワクしていた。だから、いかにも剣が入っていると思える縦長の150センチくらいのケースが気になって仕方がなかったのだ。


 俺が思っていた通りのケースからレウは武器を取り出す。背中に背負えるようなバンドのついた鞘に収まった黒い剣。レウが鞘から抜いて皆に見せると、ため息がもれるほどの輝きを持った剣身が現れた。


 全体の長さは1メートル20センチくらいか。


 鍔は、クレイモアのように柄から緩やかなYの字型になっているが、先端に輪の飾りはない。鍔と柄の色は、レウたちと同じ漆黒で、剣身は輝く銀、中央の溝、フラーの部分が虹色に輝いていた。


 ゴクリと唾を飲み込み一言だけ発する。


 「すげー」


 「いいな、それ!」


 今まで訓練で使っていた剣がおもちゃに見えるほどの逸品で、思わず幸介も羨望の声を上げた。


 「そうやろ。そうやろ。これはな『アポロンの光剣』な。またの名を『ポイボスソード』や。ゆうとくけど、アポロンライトソードとかは、やめてーな。そんな字余りみたいなダサい名の名づけ親にはならんからな」


 「アポロン。またギリシア神話ですか。それと光剣なんですか?」


 レウとラウラの武器名と同じギリシア神話の神の名。ポイボスはアポロンの別名で、確か『輝く者』という意味だったよな。それに光の剣って言うけどファイヤーソードではないのか? と思い、レウに疑問をぶつけた。


 「今回、うちが造った武器には、オリンポス十二神にちなんだ名をつけた。うちらは7人で、12人はいてないけど、人類の未来を背負っているからな。それと光剣は、あんたの『逃げ足』やっけ。それは光やろ?」


 「えっ!」


 「プハッ。光の逃げ足って……。ギャハハハハ。お腹痛い。アハハハ。レウたん、可笑しすぎて、お姉さんは笑い死んでしまいますわ。ハハハハハハ」


 「レウさん。ヒット作だな。ガハハハハハ」


 「「アハハハハハハ」」


 キャサリン、幸介をはじめ、皆に大爆笑され、キャサリンはお腹を抱えて、さかんに目尻を拭っている。


 「ち、違いますよ。瞬発力!!」


 「ビビリーナちゃん。大丈夫よ。レウたんは茶化しているけど、それは照れだから。本当はあなたに『光の剣士』になって欲しいのよ。うふふふふ」


 「ねーさん! 何ゆうてんの。もう」


 光の剣士。誰よりも速く動き、剣を一閃させて敵を討つ。確かにそんな剣士には憧れる。いざというときに最も速く動ける俺の瞬発力の特性に合わせたということなんだな。ラウラの言葉で茶化された怒りは感謝へと変わった。


 「レウさん。ありがとうございました」


 「ああ。もうビビリーナは終わりな」


 赤くなった頬をさかんに撫でていたレウは俺から目を逸らして、次の武器の紹介に移る。質問の答えがすっとばされた気がしたが、次にいく流れになったため、口に出すのは止めておいた。


 「次はそうやな。幸介しゃんの行ってみようか」


 「待ってました! ほんとーに待ちくたびれたぜ。楽しみだなー」


 「そない喜ばれると、うちも頑張った甲斐があるな。そんじゃこれな」


 そう言って取り出したのは、ウォー・ハンマーの形をした槌、斧、槍の3種の性能を持った武器であった。十字型で、槌の反対側が斧になっていて先端が槍である。


 長さは1メートル50センチといったところか。


 他の武器と同じように刃の部分以外は漆黒で、十字の交点部分にゴルフボールくらいの極星珠(ポラリスパール)が輝いてる。


 「カッコイイな。斧攻撃もできるウォー・ハンマーか」


 「これはな、『アレスの剛槌』。またの名を『アレースハンマー』やで。ウォー・ハンマーなんてちゃっちい名前やないから、そこんとこは注意しといてな」


 形状を見る限りでは、幸介が言うウォー・ハンマーでいいと思うが、レウは大きく首を振って否定する。自分が造った逸品をそんな平凡な名で呼ばれたくないのだろう。レウが続ける。


 「幸介しゃん用の武器の凄いところはな、3つの部分のどれでも術を組み合わせて攻撃を放てるところやな。ビビリーナのは、火剣、雷剣として使えるんやけど、幸介しゃんのは火の槍、火の斧、火の槌という具合にな。まあ、慣れないとあかんけどな」


 「マジでか。そんなもんすぐに慣れてやるさ」


 幸介はアレスの剛槌(アレースハンマー)を受け取り、極星珠(ポラリスパール)を擦りながら、柄を持って重さを確かめ『丁度いい重さだな』と満足そうな顔をする。


 火剣と雷剣として使える。俺の剣はファイヤーソードとライトニングソードということか。さっきの答えをここで聞いて、実際に試してみたい衝動に駆られる。幸介もきっと同じ気持ちだろう。色々な角度からアレスの剛槌(アレースハンマー)を見たり触ったりしている。


 「アレウスは軍神やからな。ちょっとおつむはあれやけど、幸介しゃんにはぴったりやな」


 「軍神かー。いいなそれ。レウさん。ありがと……って、おつむがあれってなんだよ!」


 「軍神は、細かいことは気にせんのや」


 「「「アハハハハハ」」」


 「今日のレウさんは絶好調ですね」


 笑いながら蛍が声を掛けると、レウは嬉しそうに笑い、八重歯を見せた。


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