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世紀末の七星  作者: 広川節観
第六章 生まれいずる世界
288/293

288 死闘後の中央世界⑤ ~エルフの女王、南へ~

 「準備は整ったのじゃな」


 「はっ」


 「うむ。では参ろうかのぉ」


 「はっ」


 周囲が朝の澄んだ空気に包まれるなか、民族衣装のようでいて、全体的には煌びやかな装飾に身を包んだ貴婦人が、目の前に傅く革鎧などで武装している金髪碧眼の美女に声をかけて旅立ちを促した。


 ここは7大陸の北西、『7』の横棒の左の下側、つまりは横棒の南西のあたりで、森に囲まれている静かな入江である。砂浜に打ちつける穏やかな波に、少し前に顔を出したばかりの太陽光がキラキラと輝いている。


 そして、今、そこには、中央世界(セントラルワールド)で何千年もの間、同じ場所に住み続けた山奥から海路で南を目指すエルフの大集団がいた。


 入江には大小さまざまな帆船が準備されていて、大きめの十数隻はすでに海に配置され、500以上はあろうかという小型の船が、きれいに砂浜に並べられている。もし、これを遠くから見たなら、壮観な光景であっただろう。


 小型の帆船のなかには粗末なものもあるが、概ねガレー船のような全長20メートルといったところで、最も大きな大型船の全長は40メートルもあるガレオン船のようなものであった。


 過去に位置的にはもっと西のほうからゲック・トリノ城へと向かう大船団を組んだ竜王国軍よりは粗末だが、おだやかな中央世界(セントラルワールド)の海を陸伝いに進むには充分な船団であった。


 多くの兵や民たちに見守られて小舟に乗り込み、大きな旗艦に向うのは、煌びやかな装飾品に身を包むエルフの女王にして純潔の女王(ヴァージンクィーン)ことクリスティーナ・オスカルである。両手には黒髪の美少女と金髪のウサ耳の獣人を連れている。


 女王を守るようにすぐ後ろに続くのが、女王の側近で、完全武装した金髪碧眼のエルフ、エレオノーラ・ヴェルダンディ、通称ノーラだ。ノーラの後ろには彼女を筆頭としたエルフ軍の精鋭部隊がいる。


 女王が旗艦へと向かうとノーラが手を挙げて合図を送り、周囲に傅いていた兵たちは立ちあがって散会し、民たちとともに一斉に乗船作業に取り掛かる。


 この砂浜に姿を見せている兵や民はすべてが女性で、女王のお目汚しにならないように森に隠されていた数少ない男たちも、ようやくといった形でごそごそと動きはじめる。


 女王クリスティーナ・オスカル率いるエルフの集団では、男は最下層の者といっても生ぬるいほどの、種の保存のために生かされているだけの存在であった。だから数は極端に少ない。そして、普段は領地の民が暮らす場所から少し離れた所で隔離されて生活している。


 中央世界(セントラルワールド)には、およそ1万人のエルフがいるが、現在の男の数は、わずかに75人である。


 例えるなら翌年から共学になることになった女子校に、なぜか編入してきた数名の男子高校生といった比率だろう。「なんというハーレム!」と鼻息を荒くする向きもいるだろうが、実際にはこの比率は地獄なのかもしれない。そして中央世界(セントラルワールド)のエルフ族の男たちはまさに後者であった。


 エルフ族の女王クリスティーナ・オスカルは第四世界(ホーリー)からの転移者であり、もともと彼女はおぞましいもの、汚いものが大嫌いで、美しいものだけを愛でる性格だったが、その傾向は中央世界(セントラルワールド)にきてさらに強くなった。


 女王が産み出す妖精の輪(フェアリー・リング)には、彼女の性格が色濃く反映され、あくまで彼女視点となるが『汚れた者=男』という存在を忌み嫌い、見咎めれば襲って消してしまうものとして生まれていた。これが、エルフ族の男女比の圧倒的な差の理由であった。


 つまり妖精の輪(フェアリー・リング)は外敵から一族を守る絶対的な防御力を持ってはいたが、副作用のように種の保存の危機も産み出してしまっていたのである。


 もちろん女王をはじめ中央世界(セントラルワールド)のエルフ族にとっては、周囲に男がいないことは長年の慣習であり、当たり前のことであって、それに疑問を持つ者などはすでにいなくなっている。


 こうして、江戸時代の大奥にも似た『女だけの秘密の花園』を創り出していたのが中央世界(セントラルワールド)のクリスティーナ・オスカルが率いるエルフ族だったのである。


 ちなみに、第四世界(ホーリー)では、このようなことはなく、エルフ族の男女比はほぼ同数であった。



 「これでいいのだろう。なあ、ノートルダムよ」


 旗艦に乗り込み、青みを帯びてきた空を見上げて、クリスティーナ・オスカルは、そう呟いた。頭の片隅には、まだ見ぬ純白の聖女の美しさを思い浮かべながら……。



 ◆◇◆◇◆◇



 クリスティーナ・オスカル率いるエルフ族が、長年住み慣れた故郷を捨てて、今、準備を整えて大移動を開始する理由、それはおよそ1年前の出来事に遡る。


 まだ、人類が大森林で昆虫軍との死闘を演じる前のことだ。


 いつものように謁見の間の玉座で人種(ひとしゅ)の黒髪の美少女と金髪のウサ耳の獣人を愛でていたときであった。純潔の女王(ヴァージンクィーン)は、異様な気配を感じ取って「っ」と、短い音にならない声を発した。


 「ノーラ! ノーラはおるか!」


 周囲を見渡し、いつもの見慣れた光景にピクリと全身を震わせた女王が大声で叫ぶ。左右にいる美少女たちがその声に驚き、女王から少し遅れて体をビクリと震わせた。


 しばらくして謁見の間にノックの音が響き、カツカツカツと足早にノーラがやってきて女王の前に傅く。


 「純潔の女王(ヴァージンクィーン)。エレオノーラ・ヴェルダンディ。ただいま参りました」


 「ふむ。ノーラよ。すまぬが客を迎えにいってくれ」


 「客? ……ですか?」


 「そうじゃ。客じゃ」


 ノーラには、客が誰なのか、女王がなにを言っているのかがわからずに顔を下げたまま小首を傾げる。そんなノーラの様子を一瞥した女王は、腰のあたりから水晶玉を取りだした。


 「こやつじゃ。あやつひとりではここへは来られんからな」


 「失礼いたします」


 ノーラは立ちあがり、女王に近づいてから差しだされた水晶玉を覗き込む。


 「なっ!!」


 驚きの声を発してノーラは絶句し、水晶玉を覗き込んだままの姿勢でしばらく固まった。大きく見開かれた視線は水晶玉に映し出された者に固定され、声を発した口は美人が台無しの半開きのままである。ノーラにとっては、エルフの里に迎える客としてはありえない者がそこには映っていた。


 「ふんっ。これみよがしに光のオーラなど発しおって」


 吐き捨てるように呟いた女王の言葉に我に返ったノーラは、すぐさま所定の位置に戻って傅く。


 「陛下。それが客とは、それは誠にございますか?」


 『なにかの間違いではないのか?』と思う心と『きっと間違いに違いない』と思う強い心が、女王にはいつも忠実なノーラに疑問と確認の言葉を吐き出させていた。


 「ふむ。残念だがな。妾も迎えたくはないのじゃ」


 「はぁ……」


 本当に嫌そうにそっぽを向いて女王は顔を顰める。そして大きく二度首を振って、食い入るように黒髪の美少女の顔を見つめ、ウサ耳の美少女の頭をなでまわす。


 「ノーラよ。これを持っていって、あやつに渡せ。さすれば妖精の輪(フェアリー・リング)に攻撃されることはあるまい」


 「そ、それは……一族に伝わる秘宝ユグドラシル……」


 美少女たちで、少し気持ちを落ち着けた女王が水晶玉を戻してから取りだしたのは、一本の短剣(ユグドラシル)だった。


 エルフ族の秘宝とされ、唯一男であっても、所持していれば妖精の輪(フェアリー・リング)の攻撃を避けられるという宝であった。


 数百年と女王に使えてきたノーラも数度しか目にしたことがない貴重な短剣で、鞘の中央には、7人の精霊たちが楽しそうに7つの実が成る大木の周囲で遊んでいる図柄の紋章が刻まれている。


 「御意」


 嫌々ではあったが、秘宝ユグドラシルを使ってでも連れてこなければならない者ということを理解したノーラは、短剣(ユグドラシル)を押し頂くように受け取り、いつものように頭を下げてから、踵を返して謁見の間をあとにしたのだった。



 ◆◇◆◇◆◇



 「貴様はそのような場所でなにをしている!」


 およそ20人の精鋭部隊を引き連れて、問題の人物のところへ到着したノーラは周囲を完全に取り囲み、いつでも矢で射殺せる状態のまま大声を発した。


 「これはこれはお美しい方々ですな。私は過去を知り未来を見通す者にございます。ゆえあってここで旧知の者からの招きをお待ちしておりました。もしやあなた方がそうなのでございますか?」


 優しく微笑み、女王の知りあいのような答えを返してきたが、ノーラは、しばしこの怪しい者の姿を観察する。


 エルフ族と同じような金髪碧眼ではあったが、耳は小さく、どうみても人種であり、あきらかに男である。髪は肩まで伸び、フード付きの黒いロングコートのような服を着て、先ほどまでは蛍のように怪しげな光を放っていた。そしてなにより汚らわしく、とても怪しい。


 彫りの深い端正なマスクから放たれた高めの声と作り込まれたような笑みもノーラにかなりの嫌悪感を抱かせていた。


 さらにノーラは男の周囲に目をやり背後の木に立てかけてあった杖に気がつき、思ったことを口にする。


 「貴様は魔術師なのか?」


 「いえ。私は過去を知り未来を見通す者にございます」


 「きっ!」


 「ノーラ様!」


 人を食ったような答えが返ってきて激怒したノーラは、剣の柄に手をやったが、左隣にいたノーラの腹心の部下エミール・スクルドがポニーテールを揺らし、あわててノーラの腕を掴んだ。ノーラの右隣には同じく部下でエミールの妹であるショートボブのエマ・スクルドがいて、心配そうな顔でふたりの方を見つめている。


 「ノーラ様。いけません。いけません」


 「ああ、エミール。心配するな。わかっておる。ふざけたことをぬかしたので、ちょっと脅かしてやろうかと思っただけだ。ふーーーー。我らは陛下の命を受けているのだからな」


 「はい」


 ノーラは何度か深呼吸を繰り返したあと、心配そうに様子を見ているエミールとエマを制して、睨むような顔で男の方を向いた。


 「我ら、純潔の女王(ヴァージンクィーン)の命により、貴様を里へ案内する。これを持て」


 そう言ってノーラが秘宝の短剣(ユグドラシル)を差しだすと男は深く頭を下げて、両手を掲げて押し頂くようにそれを受け取った。


 「皆さまのような美しい方々のご案内。心より感謝いたします」


 「ふんっ」


 相変わらずのふざけた態度と気に入らない笑みに、ノーラはそっぽを向きながら鼻を鳴らした。


 そのあと一向は、エミールを先頭、最後方にエマ、ノーラはいつでも斬り殺せるような男のすぐ後ろに張り付くという隊列を作って、女王の下へと戻ったのであった。



 ◆◇◆◇◆◇



 「やはり生きておったのか」


 ノーラたちに連れられる道中でフードを被った男は、そのままの格好で純潔の女王(ヴァージンクィーン)の前に傅いた。すると女王は男の方を見ずに黒髪の美少女を見ながら吐き捨てるように言葉をかけた。


 ノーラを筆頭としたエルフの精鋭たちは、少し離れた場所ではあるが男を取り囲んでいる。そして、狙うほどには構えてはいないが、弓に矢を番え、剣に手をかけた格好、つまりはいつでも攻撃できる状態で待機していた。しかも、謁見の間の外には即座に死体を処理できる清掃班も準備を整え終えていた。


 「はい。おかげさまで。陛下におかれましてはご息災でますますお美しくなられたようで、嬉しく思います」


 周囲の様子というか、殺気には気が着いているだろうとノーラは考えていたが、フードの男は顔を下げたまま落ち着いた口調で喋り出していた。


 「ふんっ。貴様の世辞など虫唾が走るわ。のぉ。おお、可愛いのぉ、可愛いのぉ」


 ウサ耳の美少女の顎のあたりを優しく撫でながら女王は応える。


 「はは、これは手厳しい」


 フードの男がそう言うと、周囲にいた兵士たちは攻撃しろという合図を待っているかのように一斉にノーラの方を向いた。ノーラはゆっくりと首を振り、兵士たちは矢の狙いを定めたり、剣を抜くのを止めてため息を吐く。


 「貴様の要件はわかっておる。のぉ、そんなの知っているよのぉ」


 再び黒髪の美少女に同意を求めるように女王は語りかけつつ会話を続ける。女王のこの態度は、しばらく続いていく。


 「さすがは陛下。お見通しでしたか」


 「ふんっ。それでなぜ封印が解かれたのじゃ!」


 「ええ。それなんですが、誠に申し訳ありません。私もなにが原因かはわかっていないのです。もしかするとヤツが内側から破壊したのかもしれません」


 「そんなことが可能なのか? おお、可愛いなぁ」


 「いや、本当ならそんなことはできないはずなのですが、それ以外には説明がつかない状態でして。私が確認をした直後でしたから、突然破られたとしかいいようのないタイミングだったのです」


 「ふんっ。未来を見通す者などという妄言を吐くペテン師にしては、無様なことよのぉ。のぉ、笑ってやれ。ほれっ、さぁ。おおお、その笑顔も可愛い、可愛いのぉ」


 「誠に面目次第もございません」


 「それで?」


 顔は黒髪の美少女の方に向け、深々と頭を下げたフードの男を視線だけで一瞥して、女王は続きを催促するかのように疑問符を投げかけた。


 ノーラを含めた周囲の兵たちには、ふたりがどんな話をしているのかは皆目見当もつかなかったが、女王の『ペテン師』という言葉にはピクリと反応していた。


 しかし、フードの男は、そんな周囲の反応などお構いなしに、待ってましたとばかりに頭を少し起こしてからとんでもない言葉を吐き出していた。


 「はい。大陸の北、つまりはここは危険でございますから南の大森林へと退避されるのがよろしいかと」


 「「「なっ!」」」


 ノーラをはじめとした周囲にいる多くの兵たちから一斉に驚きの声があがり、すぐさま矢を番えて降ろしたままだった弓をフードの男に狙いをつけるように持ちあげて引き絞る。弓兵以外の者たちも素早く剣を抜いた。そして皆、怒りに震えフードの男を睨みつけていた。


 もともとノーラたち周囲の兵には、ふたりがなんの話をしているのかはわからなかったのだが、それでも数千年も過したこの地には一族を守るとされている世界樹もあり、簡単に離れられる場所ではないため、軽々とこの地を捨てる提案をしてきた男を許せなかったのである。


 さすがに今度はフードの男も皆の動きに呼応するかのように右手を懐へと近づける。当然、杖は謁見の間に入る前に取り上げられているため、武器というかもし総攻撃されたときに防ぐ手立ては懐に忍ばせている水晶玉を使う術だけであった。


 「待て!」


 黒髪の美少女から視線を外し、右の方で男を睨みつけて今にも攻撃合図を出そうとしているノーラへと顔を向けた女王が大声で止める。女王の声を受けたノーラは、訝しがりながらも兵士たちに攻撃するなという合図を送った。


 「貴様。なにをもってそのようなことを言っている。事と次第ではいくら貴様でも生きてこの地から出すわけにはいかぬぞ」


 「封印を解かれたヤツは間もなく本体の下へと到着してしまいます。完全復活を遂げ、近くに陛下がいれば、おそらく、ここは……」


 「ふんっ。そんなことは貴様に言われなくてもわかっておるわ。妾は誇りを持って最後までこの地を守るために戦うつもりじゃ。たとえ勝算などなくてもな。おお、お前は心配するでない。可愛いのぉ」


 「さすがは陛下。その御覚悟感服いたします。しかし……」


 「しかし、なんじゃ?」


 「南に降臨の兆しがございます」


 「な、なんじゃと! それは誠か!?」


 突然、飛び跳ねるかのように腰を浮かせた女王は、驚く美少女たちを気にもせずに、はじめて強い視線をフードの男に固定した。


 「はい。遅くてもあと2年かと」


 「…………」


 女王には続く言葉はなかった。周囲の者たちはまるで狐につままれたような顔で豹変した女王の態度に視線を送っている。


 しばらくの間、沈黙が場を支配した。静かに時が流れ、誰もなにもいわずに女王も腰を浮かして男の方へ顔を向けているのだが、見開かれた瞳が男を見ているようにはみえなかった。


 ノーラが「陛下、いかがなされました?」と声にしようとしたところで、女王がノーラの方を向いた。


 「ノーラよ。この者を外まで送ってゆけ」


 「……はっ」


 一呼吸置いてノーラは答えたが、なにがどうなったのかノーラにはわからないことだらけであった。傅いていたフードの男はゆっくりと一礼してから立ちあがる。口元は満足したかのように口角が少し上がっていた。


 「陛下。最悪の場合は……」


 立ちあがりながら、そこまでいいかけてフードの男は顔を上げて女王へと視線を送った。女王は見るともなしに男の方を向いていたため、視線を受けたが答えることはなかった。


 そして、このあと女王は、まるで熱に浮かされたような状態でふたりの美少女を伴って、世界樹の根本に立てられた煌びやかな建物の奥、そう、秘密の部屋に閉じこもったのであった。



 エルフの里にフードの男が招かれてから数日後。


 久しぶりに秘密の部屋から出てきた純潔の女王(ヴァージンクィーン)ことクリスティーナ・オスカルは、ノーラを謁見の間に呼び、すべての事情を説明し、船を造るように命じたのであった。



 ◆◇◆◇◆◇



 こうして、エルフたちは、船を造り始め、およそ1年かけてすべての準備を整えて全員で南へと向かうこととなったのである。


 また竜王アンゴルモアの魂の復活を悟ったクリスティーナ・オスカルには、魂と本体との完全復活までの時間、つまりは初代光の子ライニャの封印によって魂がドラゴン・パレスの上空で足止めを食らっていたこともわかっていた。


 それがなければ、もっと早く少数精鋭だけでも南へと向かう道を取っていたのだが、残りの封印の数もしっかりと把握できていたために、すべての民を率いて南へと向かう準備を整えられたのであった。


 もちろんそれも、魂がドラゴン・パレスに到着した、封印に阻まれている、封印のひとつが破られた、まだ封印は残っている、などという具合に、段階を追って理解できたことであったが。


 特にライニャの封印がこれほどの時をかせげたことは、はじめからわかっていたことではなく、それはフードの男も同じであった。ふたりが知っていたのはライニャが封印したという事実だけだったのである。


 ちなみに船の設計図は、フードの男が別れ際に「美女たちのお役に立てば」という言葉とともにノーラに渡していたのであった。



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