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8、お悩み

 届いたメールには「明日はちゃんと仕事あるからね~」と書かれていた。


 語尾にハートマークが付いている辺り、より苛立ちを誘う文面である。


 もちろん送り主は透だ。あの野郎、人の気も知らないで。


 あの後、美帆とは駅に着くまで一緒に話をして帰った。


 「……、でも、アイツ、見た目程良い奴じゃないからね」


 彼女には自分が思っているままを伝えた。まぁ、せめてもの抵抗である。


 別に彼女と透を引き会わせたくない訳じゃない。


 ただ、中学の時のことが気になり、どうしても気が進まないのである。


 「え~? そうかな~? でも、ちゃんと話してみなきゃわかんないよ。だからよろしくね」


 何も知らない彼女はそう言い残し、自分の帰るホームへ降りて行ってしまった。


 こういう少し強引なところも恵そっくりだった。まぁ、恵以上に積極的ではあったけれども。


 嫌な記憶を思い出し、すっかり憂鬱な気分になりながら私は電車に乗った。


 で、どうしたものかと頭を悩ませていたところにさっきのメッセージが届いたのだ。


 「分かってるわよっ! 心配しなくてもちゃんと行くから」


 そう簡単に返信してから、ふと思いたった。そもそもこいつって?


 「ねぇ、全然関係ないけど。あんたって今彼女とかいるの?」


 そう、そもそもこいつに彼女がいれば紹介も何も無駄な話になるのである。


 確か、恵を振ったのは他に好きな人がいたからだと言っていた。


 それなら今彼女がいたって不思議はない。そう思いメッセージを送ると、すぐに返事が来た。


 「もちろん! いないよ」


 一縷の望みは一瞬で砕かれた。


 じゃあ、何であのとき恵を振ったんだよっ!


 文章の最後に親指を立てたグーのマークが付いている辺りがやっぱり腹立たしい。


 無駄なメールを送ってしまった。するとまた立て続けに携帯が震えた。


 「ていうか、まさか? 由美ちゃん彼氏できたの?」


 驚愕の表情をした顔文字が付いていた。ええ、それはもちろん。


 「いないわよ」


 そう送ってやりましたとも。思い切り文末に怒りマークを付けて。


 「だよね~」


 そのメッセージには満面の笑みマークが付いていた。


 たく、どんだけ人を馬鹿にしたら気が済むというのだろう。自分も同類のくせに。


 まぁ、それでも透はちゃんとモテている辺り、完全に私の敗北なのだろう。


 あまりにムカつくので私はそこで返信するのを止めた。 

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