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3、お呼び出し

 「はぁ……」


 溜息が出た。帰りのホームルームが終わり、鞄に教科書を詰めていた時のことである。


 「あれ~? 由美。どうしたの~? 溜息なんか吐いちゃって~」


 そんな風にのんびりと話し掛けてきたのは、高校で一番の友達の美帆だった。


 「いや、なんでもないわ」


 実際は何でもなくもない。透の奴、全く面倒臭い案件を持ってきやがって。


 まぁ、生徒会活動の手伝い自体はそんなに嫌な訳ではない。


 実は、私は中学時代生徒会に入っていたのだ。高校になれどそう勝手は違わないだろう。


 だから、透が私に頼む理由もよくわかる。


 「そう? それに何か、いつにもまして儚しげな美人さんっぽい雰囲気になってるけど」


 だから、それは多分泣き黒子の所為である。


 ていうか、どうして誰もそこに突っ込まないんだよ。


 「いや、ちょっとね。知り合いに生徒会の手伝いを頼まれててさ……」


 「えっ! あの生徒会のっ? 由美、生徒会に知り合いなんかいたっけ?」


 「う……。まぁ、ちょっとね。で、これから行かなきゃなんないのよ」


 私は少し憂鬱になりながらそう答えた。但し、問題は生徒会にあるのではない。


 「へぇ~。いいなぁ。由美。これで鏡見先輩と透様にお近付きになれるじゃんっ!」


 問題はそこである。先輩はともかく透とお近付きになれてしまうのだ。


 実は、高校に入ってから奴といとこ同士であるのは周りに秘密にしていた。


 中学時代にその所為でトラブルに巻き込まれたからである。


 幸い別のクラスになったので、今まで学校では関わることなく来られたのだが。


 しかも透の奴、無駄に人気があるのだ。それもあって一年の身で会長になってしまった。


 何だよ。今どき様付けって。だから、あんまり親しくするとファンの女子からの嫉妬も怖い。


 私はなるべく目立ちたくないのだ。そんな奴なんかに関わっていられるか。


 大体、みんなあいつの本性を知らないから、そんなことを言っていられるのである。


 あんな、悪戯っ子なガキのどこがいいって言うんだろう?


 「いや、別に遊びに行く訳じゃないからさ」


 「もう。相変わらず、そういうとこクールなんだから~」


 人の気も知らないで、勝手を言ってくれるものである。


 まぁ、所詮手伝いだけのことだから、なるべく深入りせずに帰ってこよう。


 「あっ、いたいたっ! 由美ちゃ~んっ! 行こうよ~」


 廊下から掛けられた声に、教室にいた半数以上の女子の眼が私に向けられる。


 ドア口には、それはまぁ随分と良い笑顔で透が立っていた。 

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