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17、お眼鏡

 「馬鹿なことを言わないでくれっ! 君程の逸材は中々いないんだっ!」


 そう叫んだのは鏡見先輩。


 どうやら、文字通りの意味で私はこの人のお眼鏡にかなってしまったらしい。


 せめて私の仕事が優秀だったからというならまだ考えようがあったものを。


 ちなみに昨日の書類の山は、私が今日来た時点でもう全て片付いていた。


 恐らく、あの後先輩二人で終わらせたのだろう。それなら尚更私が残る理由はない。


 「そんなこと言われても困ります」


 「そんな……。君以上の顔立ちに出会うことなんて滅多にないのに」


 先輩、その発言は完全にセクハラです。


 さっき、一瞬でもこの人を紳士だなんて思った自分が悔しくなった。


 「頼む。僕は君に惚れ込んでいるんだっ!」


 まるで告白のようなセリフだった。


 「ごめんなさい。諦めてください」


 もちろん一瞬でお断わりさせて頂きました。


 「……、鏡見はしつこいわ」


 そう言って助け舟を出してくれたのは北條さん。


 「すみません。北條さん。急な話で申し訳ないんですけれども……」


 「いいのよ。新しい子が増えるのは大歓迎だもの」


 「はい?」


 なんだろう? 話が微妙に噛み合っていない気がする。


 「今度はその子も一緒に着付けてあげるから」


 駄目だ。この人、そもそも状況すら理解出来ていない。


 「え~と、北條さん。その子の代わりに私辞めるんですよ?」


 「……、駄目よ。この身体は私のものだもの」


 「って、どこ触ってるんですかっ!」


 抱きつかれて、首の下から太股にかけてを撫で回された。


 そんな様子を後ろから、透が少しムッとした表情で眺めていた。


 「はいはい。先輩。もういい加減にしましょうよ」


 そう言って私から北條さんを引き剥がしたのは、意外にも透だった。


 「しかし、高砂……」


 「鏡見先輩も往生際が悪いですよ。そんなんだから彼女も出来ないんでしょ?」


 そう言われた先輩は顔をしかめて言葉を失った。多分、図星を付かれたのだろう。


 「じゃあ後は任せといて。あと由美ちゃん。明日その子連れて来てね」


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