12、大喧嘩
「おいっ! 北條っ! 由美さんはお前の人形じゃないんだぞっ!」
「鏡見の眼鏡掛けでもないわっ!」
的外れな口喧嘩をし出した二人の先輩。
「眼鏡掛けとはなんだっ! 僕は由美さんの眼鏡映えする顔立ちに惚れ込んでいるんだっ!」
「私だって、由美の着物映えする体型に惚れ込んでいるのよっ!」
え~、お二人とも。褒める振りして人の傷に塩を塗り込まないでくれませんか?
そりゃあ、私は地味顔の寸胴体型ですけれども……。第一、論点はそこじゃない。
「お前には渡さんっ!」
「私だって、あんたになんか渡さないわ!」
いや、誰もあなた達のものになるなんて言ってませんから。
「大体、前の書記が辞めたのだって、君が無理やり着物を着せようとしたからだろうっ!」
何ですって? 今聞き捨てならないセリフが聞えたような……。
「違うっ! あの子の身体は着物を着たがっていたもの。無理やりなんかじゃないわっ!」
……、いえ、北條さん。そういうのを無理やりって言うんですよ。
「大体、鏡見だって無理やり眼鏡を掛けさせてたじゃないっ!」
「違うっ! あの子には眼鏡が必要だったんだっ! 服なんかと一緒にするんじゃないっ!」
「服なんかとは何よっ!」
もはや聞いていると何の喧嘩だかわからなくなりつつあった。
「……、え~と、由美ちゃん。つまりですね……」
そう言って、赤く頬を腫らした透が話し出した。
もちろん頬が腫れているのは私が平手で打ったからである。
ちなみに、鏡見先輩の頬も腫れているが、それをやったのは北條さんだ。
で、透曰くこういうことだそうだ。
当初書記は二年の女子だったのだという。
彼女は元々眼鏡を掛けていたそうなのだが、ある時急にコンタクトに替えてしまった。
で、それを見た鏡見先輩が暴走し、無理やり眼鏡を掛けさせようとしたのだと。
それに怯えた当時の書記さんは北條さんに泣きつき、この作法室に連れて来られた。
で、無理やり服を脱がされそうになったものだから、大泣きして退会を申し出たという。
「って、今の状況と大差ないじゃないっ!」
「ははは。だから頼めるのが由美ちゃんしかいないって言ったじゃん?」
悪びれずにそう言う透は何だか楽しげだった。つまり私は人身御供だったのである。
「ていうか、これどうするの?」
「う~ん? まぁ、いつも放っておけば勝手に収まるから、今日は帰ろうか?」




