11、お騒がせ
「き……、ぃやああああああっ! ちょ、ちょっと止めてくださいっ!」
当然、私は悲鳴を上げた。それはそうだ。いきなり制服を脱がされそうになったんだから。
ていうか、何で私は女の人に脱がされそうになってるんだ?
いや、男だったらもっとダメだけど。っていうか、どっちでも嫌だっ!
「駄目。もう我慢できない」
お願いです。我慢してください。
北條さんは細腕の割に力が強かった。いや、私が非力なだけかもしれないけれども。
「む? 高砂。そこから声がしたぞっ!」
廊下から鏡見先輩の声が聞えた。
「先輩っ! 鍵が掛ってますよっ! ここっ!」
追って透の声が聞えた。そう言えば二人から逃げてきたのだった。
「ぐ、北條の奴。仕方ない職員室に行って借りてこようっ!」
「はいっ!」
そんな二人ですら、今は天の助けのように感じられた。
眼の前にいる北條さんはまるで何かに取り憑かれたように怪しい眼を光らせている。
何? 何なのよこの人? 怖いっ! 本当に怖いからっ!
「せ、先輩っ! ちょっと、落ち着きましょう? ね?」
「私は落ち着いてるわ。落ち着いてないのは由美の方」
確かに焦りまくっているのは私の方である。
「いえ、そういう意味じゃなくってですねっ! だって、私女子ですよっ!」
「知ってるわ。だって、女子じゃないと駄目じゃない?」
「いやぁあああああっ!」
私は二度目の悲鳴を上げた。駄目だ。この人、本格的にヤバい人だ。
「大丈夫。由美。ちゃんと綺麗にしてあげるから」
お願いです。綺麗になんかなれなくていいから。後生だから勘弁して下さい。
「……、でも、どっちがいいかしら? ねぇ、どう思う?」
何の選択肢ですかそれ? と思ったのも束の間。答えは眼の前で北條さんが開いていた。
「え~と、北條さん。なんですか? この着物特集って」
「あなたに着せたくって。絶対に似合うから」
「最初にそれを言って下さいよっ! 急に脱がされたら誰だって驚くじゃないですかっ!」
「そう?」と小首を傾げる先輩は、変態ではないにせよ、やっぱり変人だと思った。
それから、キラキラと眼を輝かせた北條さんに着物を着せられまくった。
その後、男子二人が教室に飛び込んで来た。私が三度目の悲鳴を上げたのは言うまでもない。




