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9、お仕事

 翌朝、私はいつも以上に念入りに顔を洗っていた。


 「……、とれない」


 そう、昨日の泣き黒子を消すのに必死になっていたのだ。


 多少薄くなった気はしたが、まだまだしっかり残ってしまっている。


 ママが後ろで「由美ちゃん、今日はまた随分と念入りなのね~」などと言っていた。


 人の気も知らないで、随分と呑気なことだ。


 しかも、その呑気さが微妙に透と似ているので、少しイラッとしてしまう。


 まぁ、血筋の所為だろう。そう、透の父親はママのお兄さんなのである。


 あちらの家系はみんなマイペースなキャラクターなのだ。しかも美形揃い。


 自分で言うのも何だが、ママも40手前とは思えない外見をしている。


 ちょっと年の離れたお姉さんと間違われても不思議はないだろう。


 どうしてその血を私に分けてくれなかったんだよ。もはやその血を吸ってやろうか。


 外見、性格のどちらもパパ似の私としては切実に思うところである。


 そんなスプラッタな妄想を繰り広げながら私は家を出ることになった。


 で、放課後。しぶしぶ生徒会に向かう私を呼び止める子がいた。


 「ねぇ~。由美~」


 もちろん、美帆だった。


 「透様の件だけど……、ど、どうかな?」


 どうかなと言われても困ってしまう。正直なところまだ何もしていないのだ。


 「う……、え~と。まだ彼女はいないとは言ってたけど……」


 「本当にっ! やったぁっ! じゃあ、まだチャンスはあるよね? ねっ!」


 そうして興奮状態になった彼女に、その後数分の間捕まることになった。


 それから生徒会に行くと、もうみんな真剣に仕事を始めていた。


 それは異様と言っても良いくらいで、あの透でさえ完全な真面目キャラと化していたのだ。


 全員が一心不乱に書類に向き合っている中、鏡見先輩がこちらに気付いてくれた。


 「おお、由美さん。待ってたよ。こっちに座って」


 そう言われた机の上にはどっさりと書類の山が乗っていた。これはやりがいがありそうだ。


 「じゃあ、さっそくだけど、まず最初にこれを掛けてくれるかな?」


 「はい?」


 急に視界に丸い枠のようなものが現れた。何だこれ? その枠にはレンズがはめられている。


 「ん? いや違うな……。こっちの方だろうか?」


 そのレンズ越しに見えたのは、今にも私に眼鏡を掛けようとする鏡見先輩の姿だった。


 「な……、何するんですかっ!」 

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