80 蜘蛛VS火竜①
鑑定様の結果に満足したので、冷ましたナマズを食べる。
中層にいる魔物はこうやって時間を置かないと食べられないのがネックだよねー。
時間を置いても冷めたのは表面だけで、中はまだまだ熱々だったりするし。
下手したらHPが減るし、食べるのに神経使うとか嫌んなるわー。
あ、ナマズ美味い。
マジで!?
この蜘蛛生の中で初めて美味いと思える食材に出会ったぞ私!
やべえ。
もう1匹逃がすんじゃなかった。
いや、まだ追っかければ間に合わないかな?
あいつ、速度はかなり遅かったし、今からでも追いつけないかな?
ああ、でもマグマの中逃げられたらどうしようもないか。
くそう、失敗した。
とりあえずこのナマズは味わって食べよう。
《熟練度が一定に達しました。スキル『味覚強化LV5』が『味覚強化LV6』になりました》
美味いよー。
私、生まれてきてよかったー。
マジうめえ。
前世で食べてたものに比べたらそりゃ全然だけど、今まで不味いものばっか食べてきたんだもん。
やっと、本当にやっとまともに美味しいと思えるものに出会えた。
前世ではそんな食べることに固執なんかしてなかったんだけどなー。
あの頃がどんだけ恵まれてたのか、蜘蛛になってから初めて知ったよ。
もう不味い魔物は飽き飽きしてるんだよ。
美味しいもの食べたいんだよ。
よし。
ナマズ狩ろう。
ナマズがちょっと強いからって気にする必要はない。
この欲求を満たすためなら、命を賭けてもいい。
それだけの価値がある。
さあ、待っていろよナマズ。
絶滅するまで食い尽くしてやる。
ナーマーズー!
ナーマーズー!
ナーマーズーはーどーこーだー!
ナマズを求めて迷宮内を徘徊する。
いない。
いてほしくないときはポッと出てくるくせに、いてほしい時に限って出てきやしない。
早く出てこい。
出てきて私に食われろ。
こういう時に限って別の奴が出てくんのよ。
『エルローゲネラッシュ LV8
ステータス
HP:170/170(緑)
MP:161/161(青)
SP:158/158(黄)
:156/167(赤)
平均攻撃能力:87
平均防御能力:84
平均魔法能力:84
平均抵抗能力:81
平均速度能力:91
スキル
「火竜LV1」「命中LV4」「遊泳LV4」「炎熱無効」』
現れたタツノオトシゴ3匹。
その中の1匹のステータスに、今までなかったものが追加されてた。
おお、そうだった!
鑑定様のレベル上がったから相手のスキルもわかるんだ!
うは!
いよいよ鑑定様がチートじみてきた!
しかしタツノオトシゴよ、お前スキル少なすぎやしないか?
4つって。
寂しすぎやろ。
どうりでステ以上に弱く感じるはずだよ。
しかも炎熱無効っていう、明らかに火耐性のカンストスキル以外は、みんなレベル低いし。
とりあえず、初めて見たスキルを鑑定しておこう。
『火竜:火竜種が有する特殊スキル。レベルにより特殊な効果を発揮する。LV1:火球ブレス』
『遊泳:泳ぐ動作にプラス補正が働く』
ふむ。
火竜は予想通り、火竜種のみに存在する特殊なスキルっぽいね。
私の蜘蛛糸みたいなもんか。
レベル1だとあの火の玉飛ばすのしかできないっぽいね。
というか、本人のレベルが8なのに、火竜のスキルはレベル1なのね。
これはスキルのレベルが上がりにくいのか、はたまたこいつが熟練度稼ぐのを怠けているのか。
で、遊泳は泳ぐのが上手くなるスキルと。
うん。
スキルを見て確信したわ。
こいつには負けようがない。
というわけで、サクッと、はいかないんだよねーこれが。
だってこいつらマグマの中にいるんだもん。
こっちはチマチマ投石するしか攻撃手段がないんだって。
あ、待てよ?
毒合成で出した猛毒を、石に塗りつけたらどうなんだろう?
物は試しだね。
まずは相手の火球を避けて、その隙に石を拾う。
うむ。
思考加速がいい仕事する。
前までだったら3匹相手には避けるのに専念しただろうけど、思考加速があるおかげで反撃する余裕もある。
石に向かって毒合成と。
よしよし。
ベチャッと毒がくっついたところで、ダラッシャー!
私が投げた石は見事タツノオトシゴの1匹に命中する。
HPの減りは?
うーん。
イマイチだなあ。
何もしないよりかはマシだけど、そこまで増えてない。
やっぱ石に付けた程度じゃ、しっかり相手の体に付着はしてくれないかー。
私の蜘蛛猛毒は、接触ダメージと摂取ダメージの2種類のダメージがある。
接触ダメージは毒が皮膚とかについてると発生するダメージで、摂取ダメージは相手の体内に毒が侵入すると発生するダメージだ。
接触ダメージと摂取ダメージだと、摂取ダメージの方が圧倒的に高い。
接触ダメージはそこまで高くないんだけど、毒を付着させたまま放置してると、一定の時間の後に爆発的にダメージが増える。
付着した毒が浸透して体内に入るからだ。
つまり、接触の方も、最終的には摂取されてしまうわけだ。
まあ、その前に洗い落としたりすれば話は別だろうけどね。
なので、毒を洗い落とすとかそんなこともできない魔物相手だと、わざわざ口を狙わないで、体のどこかに毒を付着させるだけでいい。
急いでる場合は口とか目を狙うのが一番だけど、安全のことを考えると隙の多い場所に付けたほうがいい。
それはそのときどきの状況で使い分けるけどね。
そういうわけで、MPが切れてノコノコ陸に上がってきたタツノオトシゴに毒を順にまぶしていく。
こいつらの場合、口が小さくて狙いにくいから体にぶっかけるしかないんだよねー。




