74 中層攻略開始
さて、とりあえず現状を確認しよう。
只今マグマの煮えたぎるど真ん中。
陸地とマグマの比率はだいたい同じくらいかな。
勢いでここまで来ちゃったけど、道合ってるのかな?
まあ、どっちにしろ合ってるか間違ってるかなんてわからないし、適当に進むしかないんだけどね。
で、地龍の攻撃の余波と、限界を超えて走り続けた結果、HPがやや減ってる。
減りとしては大したことないけど、常時ダメージを受け続けるこの灼熱エリアにおいては、自動回復と相殺になっちゃうから回復は見込めない。
回復にはレベルアップによる全回復か、HP自動回復か火耐性のスキルレベルが上がって、回復とダメージの均衡が崩れるかしないと。
とはいえ、マグマがすぐ近くにあるわけだし、最悪ダメージの方が大きくなることもあるかもしれない。
なるべくならそういうさらに熱い場所は避けていきたいところだけど、どうなることやら。
今までの上層とか下層の感じから言って、この中層も相当広いと思っておいたほうがいい。
なんせ世界最大の迷宮だしね。
大陸と大陸を繋ぐくらいなわけだし、中層を抜けるには何日も掛かるのを覚悟しなきゃならない。
先は長いのに、出だしで挫いちゃったからなー。
幸先悪い。
よし、それでは行ってみよう。
うむ。
しかし熱い。
蜘蛛に生まれ変わってからというもの、暑くも寒くもない快適な気温の中生活してたからねー。
こうも急激に環境が変わると怠い。
一応火耐性のスキルレベル上げるのにちょいちょい来てはいたから、耐え切れないってことはないけどね。
それでも中層を抜けるまではずっとこの状態が続くのかと思うと、やっぱりうんざりする訳よ。
特に足ね。
そりゃ、マグマがすぐ近くを流れてるような場所よ?
地面も熱々に決まってんじゃん。
もうね、夏の陽に当てられたアスファルトの比じゃないわ。
ここで卵割ったら目玉焼きができるどころか、そのまま焦げるね。
そこに素足着けなきゃならんわけですよ。
もう熱いっていうかそれ通り越して痛い。
痛覚軽減とHP自動回復がなかったらやってられないわ。
お、魔物発見。
『エルローゲネラッシュ LV5
ステータス
HP:159/159(緑)
MP:145/148(青)
SP:145/145(黄)
:116/145(赤)
ステータスの鑑定に失敗しました』
あれは中層に到着してから初めて見た魔物やね。
タツノオトシゴみたいなやつだ。
初日と同じようにマグマの中悠然と泳いでる。
ないわー。
こっちに気づいてる様子はないし、このままスルーしたいとこだけど、進行方向にあいついるんだよねー。
どうしたもんか。
んー。
ここは一戦やっておくか。
中層でどの程度糸が使えるのか実験しておきたいし、前に見たあの魔物のステータスなら、今の私なら真正面から戦っても勝てると思う。
相手としては手頃だし、今のところ他に魔物の姿はない。
行くか。
とりあえず向こうは気付いてないんだし、遠慮なく先制攻撃貰いましょう。
ということで、カモン斬糸!
糸を伸ばしてそのまま横薙ぎにする。
糸が警戒もしてないタツノオトシゴの首目掛け、振るわれ、そのままマグマの上で燃え尽きた。
こっちに引火しても困るので慌てて残りの糸を体から切り離す。
あー、うー。
ダメかー。
マグマに直接触れてもいないのに燃えちゃったよ。
これ、中層では糸全く役に立たないってことかー。
うわー。
マジかー。
私の最強武器が封じられたかー。
予想はしてたけどショックだわー。
て、何か飛んできた。
火の玉やね。
当たったら痛い、ていうかこのサイズだと私、燃え尽きるんちゃう?
そおい!
避ける。
そりゃ避けるでしょ。
あ、第二射きおった。
そおい!
タツノオトシゴはマグマの中から火の玉を吐き出してきてる。
うん。
そのくらいのスピードじゃ、私には当たらんよ。
昔は蛙の唾液攻撃も避けられなかったけど、今じゃ速度増し増し、回避スキル持ちと、あの時の比じゃないくらい強くなってるからね。
今じゃ、ゲームのキャラにも引けを取らない神回避力を備えているのだ!
一発喰らえば消し炭の紙装甲だろうと、当たらなければどうということはないのだ!
しかし、これ、あかんわ。
どっちも決め手がない。
向こうの火の玉は私に当たらない。
けど、私も糸が使えない以上、あいつに対して取れる攻撃手段がない。
どっちも手詰まり。
あ、いや、あいつのMPがもう少しで尽きるな。
あの火の玉、MP使ってるっぽい。
ということは、MPなくなれば火の玉は飛んでこなくなるわけだ。
やっぱ鑑定様チートだわ。
戦いながら相手の情報がわかるんだもんね。
よし、最後の火球を避ける。
これであいつのMPはもうない。
次のあいつの行動で、この勝負の行方が変わるけど、いかに?
あ、マグマから這い出してきた。
そのまま突進してくる。
バカだなー。
私だったらMP尽きた時点で戦略的撤退するのに。
私から見るとおっそい突進を余裕で避ける。
そのままタツノオトシゴの背中に取り付き、爪に毒攻撃を乗せて突き刺す。
ていうか、コイツの体熱い!
HPちょっと減ったじゃん!
貴重なHPが!
とりあえず、猛毒に侵されたタツノオトシゴはコロッと息絶えた。
うむ。
初戦はなんとか突破。
しかしあれだ。
この中層、最大の敵は地形かもしれん。