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S9 スキルポイント

 カティアと一緒にダラダラとする。

 さっきまで二人でスキルレベルを上げるために、城内の運動場で体を動かしていた。

 今はそれを終えて、こうして休憩してるわけだ。


「あー、しんどい。魔力関連のステは結構上がってるけど、身体能力はそんな高くないもんな」


 今日は珍しくスーがいないため、カティアは日本語で喋っている。

 二人っきりの時はこうして日本語で会話するのが普通になっていた。


「だな。けど、それでも前世よりかは運動神経相当いいし、鍛えれば鍛えただけちゃんと成長するっていうのがいいよな」

「ああ、わかるわかる。学校のマラソン大会とか何のためにやるんだよって思ってたけど、こっちだと走れば走るだけ持久力上がるもんな」


 スキルもそうだけど、この世界では鍛えれば鍛えた分だけステータスが伸びる。

 レベルアップができない今、ステータスを伸ばすためには地道に鍛えるしかない。

 けど、地道に鍛えれば、確実に強くなれるのだ。

 鍛錬はきついけど、それが全て糧になると思えば、やる気も出るというものだ。


「で?どんな感じよ?」

「瞬発、持久、強力、堅固、疾走、それぞれレベル8まで上がったな」


 俺は手に持った鑑定石で自分のステータスを確認する。

 この鑑定石は、カティアの公爵家が保有するレベル9の鑑定石だ。

 国によっては国宝に指定されかねない貴重品だが、カティアは気軽に公爵家から持ってくる。

 公爵家大丈夫か?と思わなくもないけど、便利だしありがたく使わせてもらってる。


「やっぱお前、スキルのレベル上がるの早いな。これが才能の差か」


 カティアが悔しそうに呟く。

 実際、同じことをしているのに、俺とカティアではスキルのレベルアップ速度が違う。

 この世界では努力すれば誰もがその分強くなれるが、その速度は異なる。

 それが才能の差なのだという。


「俺だって公爵家始まって以来の天才って言われてるんだぜ? その俺がこんだけ差つけられるってどうなんだよ。このチート野郎め」


 恨みがましいカティアの視線から目をそらす。

 そんなこと言われても、俺にどうしろと?


「そういえばお前、スキルポイントは使ったのか?」

「いや、なんか使いそびれてそのままな。手付かずのまま残ってる」


 スキルポイントとは、消費することで新しいスキルを得たり、熟練度の足しにすることができるポイントのことだ。

 普通は生まれた時に持っていないはずのこのスキルポイントを、俺とカティアは転生特典なのか、生まれた時から持っていた。


「10万ポイント貯金か。このチートブルジョワ野郎め」

「さっきより酷くなってる!?」


 いや、本当になんとなく使う機会を逸してしまっていた。

 最初は魔法スキルを取得しようかとも思ったんだが、アナに魔法は使うなと言われていたので、やめた。

 アナもまさか俺にスキルポイントがあるなんて思ってもみなかっただろうけど、それをいいことに、黙って魔法スキルを取得するのは、なんだか裏切ったようでできなかった。

 それ以来、なんとなくスキルポイントを使う気が起きなくなっていた。


「そういうカティアは使ったのか?」

「…1000ポイントだけ」


 カティアはたしか、5万ポイント持っていたはずだ。

 話を振ってくるからてっきり相当使ったのかと思いきや、ほとんど使っていなかった。


「何取ったんだ?」

「…黙秘する」

「は? いや、いいから言えよ」

「…絶対笑わないか?」

「笑わないから言えって」

「…鑑定」


 笑いはしなかったけど、思いっきり不思議そうな顔をしていたと思う。

 鑑定といえば、取得しちゃいけないスキルの代名詞みたいなもんだ。

 それを何故取得してしまったのか、逆に気になる。


「なんでそれ取ったんだ?」

「いや、転生したら鑑定ってくらい、小説の定番なんだよ。ほら、異世界で情報収集って大変じゃん? だから、小説とかだとそっから鑑定無双とかするわけよ。で、俺もそれにあやかろうと…」

「いや、お前、鑑定ってハズレスキル筆頭みたいなもんじゃねえか。それ聞いてなんで取ろうと思えるんだよ」

「だーかーらー! 俺が鑑定取ったのはそんなこと知らない赤ん坊の時なの! 右も左もわかんねー転生したての頃だぜ? そりゃ、情報に飢えてるに決まってんじゃん。で、鑑定のこと思い浮かべたら都合よく神言が聞こえるじゃん? はずみで取っちまっても仕方ねーじゃん!」


 それを聞いて、一応納得した。

 確かに、赤ん坊の頃は何がなんだかわからなくて、相当不安になったのを覚えてる。

 周りの人間が話している会話も、言葉がわからなくて余計に不安になったものだ。

 そこに、日本語(・・・)で語りかけてくる神言が聞こえれば、すがりたくなる気持ちもわかる。


「で、鑑定はやっぱハズレか?」

「ああ。大ハズレだ。レベル低いうちは全く役に立たねーし、使うたびに頭痛くなるし、おまけに一度鑑定したものじゃ、時間置かないと熟練度上がんなくなるから、レベル上げもしにくいし。結構頑張って暇な時とかに熟練度稼ぎしてんのに、俺未だにレベル4だぜ? 心が折れるわ」


 聞くだけでうんざりしそうだった。

 俺は鑑定石を持ったまま、スキルポイントの欄を再度鑑定する。

 すると、取得可能なスキルの一覧が、必要なポイントと同時に表示される。

 その中で鑑定を探すと、あった。


「あ、俺鑑定100ポイントで取得できる」

「え、マジで?」


 100ポイントと言えば、スキルを取得できる最低のポイントだ。

 100ポイントで取得できるスキルは、それだけ効果の低いスキルか、よっぽど相性がいいスキルかのどちらかだ。

 鑑定はカティアが1000ポイント使ったことから分かるとおり、効果の低いスキルとは言い難い。

 低レベルのうちは確かに効果は低いが、高レベルになれば相当有用なスキルだ。

 そうなると、俺は相当鑑定との相性がいいことになる。


 俺はかなり迷った末、鑑定を取得した。

 所持ポイントが99900に減る。


「鑑定取った」

「え、マジで?」


 カティアがさっきと全く同じことを言う。

 

「後悔しても知らねーぞ?」

「ま、その時はその時だろ。ポイントはまだまだあるしな」


 とりあえず、残りのポイントはいざという時のために温存しておこう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] こいつら本当に運動とか真面目にしたことないんだろうな。運動してもしても体力が上がらないとか言ってる時点で大した運動経験が無いってことがよく分かる。
[一言] え、主人公やばくないか、韋駄天元々持ってただけでなく、ほとんどの、スキル100pで取れてるって。
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