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最終決戦⑰

 ギリギリセーフ!


 黒を下し、戻った先で今まさに魔王が殺されそうになっていた。

 あとコンマ1秒でも遅れていたら危なかった。

 マジで危なかった!

 ちょっとやばい感じで心臓がバクバクいってるくらいには危なかった!

 はー、ちょっと、うん、いったん落ち着こう。


 はい、状況確認。


 後ろに魔王。

 無事。

 はい。


 前に龍人。

 体系は人型なんだけど、龍っぽい見た目のやつだ。

 たしか黒が率いてる第九軍にこんな奴がいたはず。

 こいつがついさっき魔王をぶち殺そうとしていた下手人だ。


 他。

 離れたところで山田くん一行プラス龍が何匹か。

 VS、パペットタラテクトとか。

 どうやら龍の相手をパペットタラテクトがしていて、その他のタラテクト系の魔物が山田くんたちに襲い掛かってるようだ。

 そっちはパペットタラテクトたちが押されてるけど、すぐに瓦解するほどじゃない。

 それにちょっと距離が離れてるから今は放置で。


 結論。

 とりあえず目の前の龍人をやればOK。

 ひとまず目についた一番近くにいた敵をやろうっていう安直な発想だと言ってはいけない。

 戦場では近場の敵からぶっ飛ばせばだいたいそれが正解なんだよう!

 ていうか戦場で敵をえり好みできるかボケえ!

 見つけた端からぶっ飛ばせ!

 サーチアンドデストロイ! サーチアンドデストロイですよ!


 テンション無駄に高いって?

 そりゃこちとら黒さんとのランデブーでフラストレーション溜まりまくってますから!

 神同士の戦いってものすんごい神経使うんだって。

 お互いの領域削り合って、お互いのエネルギー削り合って。

 攻撃するにも、その攻撃で相手のエネルギーどのくらい削れるか計算しなくちゃいけなくて。

 防御するにも、相手の攻撃でどのくらい自分のエネルギーが削られるか計算して、そこから被害を抑えるためにどのくらい防御にエネルギーを回すか計算し直して。

 ドンパチやりながらそんな計算を瞬時にし続けなきゃならないわけですよ?

 頭疲れる、体も疲れる。

 何も考えなしに全力でドーンとぶっ放したら、攻撃した側なのにエネルギー消費量が多くて収支マイナスになったりするからね。

 待ち時間ゼロの将棋の早打ち勝負、なお、千手くらい先まで読まないとすぐ負ける、みたいな。

 それをやりつつボクシングで殴り合う、みたいな。


 つらかったわー。

 ミスった瞬間終わるって緊張感の中頭フル回転させなきゃいけなかったんだから。

 ちなみにミスらしいミスはしなかったのにこの有様ですよ?

 全身ズタボロ。

 片目は潰された。

 ちなみにこれ、修復不可能。

 さすがちゃんとした神様っていうところか、肉体を再生させるのを阻止する術式っていうのがあったらしく、それを駆使しながら傷つけられたんよ。

 絶対に治せない、ってわけじゃないんだけど、無理やり治そうとすると結構な量のエネルギーを持ってかれちゃうんで、戦いが終わるまで治すのは保留。


 でも、最大の障害である黒を倒した今、あとはただの消化試合だ。

 さーて、とりあえずこの龍人をぶっ倒すか。


「白ちゃん」


 と、意気込んだところで後ろから魔王に声をかけられる。

 龍人を警戒しつつ振り返る。

 魔王は複雑な表情で私を見つめていた。

 安堵、歓喜、それから悲しみ?

 ……ああ、黒のことか。

 魔王からしてみれば黒とは長い、長ーい付き合いなんだから、その黒が倒されたとなれば敵対していたにしても複雑な気持ちにもなるか。


「あれ、生きてる」

「え? あ、そうなの?」


 だから私はとりあえず黒の生存を報告しておいた。

 どう見ても死んでる黒だけど、あれでもちゃんと生きてます。

 ていうか肉体から半分くらい解放されている神が、肉体が滅んだくらいで死ぬとは限らないのだよ。

 一応あの肉体も原形とどめているし。

 今はダメージを負いすぎてエネルギーも枯渇気味。

 肉体の再生もおぼつかないから死んだみたいに見えるってだけで、ちゃんと生きてはいる。

 まあ、早々に復活できないようにしてあるから、動けるようになるまでだいぶ時間がかかるだろうけど。


「ソウカ。ナラバ安心シテ戦エル」


 聞きとりにく!?

 なんか独特な声のせいでものすごく聞き取りにくいけど、この龍人、まさか私と戦いになるとでも思ってるんだろうか?


「参ル」


 龍人が突っ込んでくる。

 んー?

 速度はそこまで速くないな。

 これなら避けるのは簡単、って!


 龍人の拳に嫌な感じの気配が漂っている。

 あれは食らっちゃいけないと本能で理解する。

 この感じ、外道攻撃だ!


 スキルの外道攻撃は魂に直接ダメージを与える効果がある。

 神に対しても有効、っていうか、ぶっちゃけ神を相手にするのを想定しているようなスキルだ。

 私もこの外道攻撃の再現を頑張ってみたけど、難しすぎて断念したものだ。

 そんな難解な術をスキルとしてシステムに組み込んでいるところがDのあくどいところだよな!

 一体誰に向けてそのスキルを使わせようって魂胆だったんだか!

 この世界にいる神なんて一人しかいなかったはずなんですがねえ!

 そこで死んだ魚の目してる黒とかいう奴なんですが!


 龍人の攻撃を避ける。

 私でも外道攻撃は食らっちゃいけない。

 肉体の再生は瞬時にできても、魂のダメージは早々に治すことはできない。

 おいおいおい。

 消化試合だと思ってたらとんだ隠し玉がいたもんじゃないか。

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― 新着の感想 ―
[一言] だーかーらー、ちんたら油売ってたと思ったら今度はなに舐めプこいてんだ主人公(呆 まあらしいっちゃらしいからむしろいいぞもっとやれ(を
[良い点] 白視点良い。 なんか安心感ある。
[一言] 神同士の戦いがe-sports扱いで笑った。
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