最終決戦⑩
前話、書籍版とWEB版がごっちゃになってるところがありましたので修正しました。
書籍版だとエルフの里で戦闘になってるメラゾフィスとクニヒコアサカコンビですが、WEB版だと遭遇すらしてませんでした。
そこの文言だけの訂正ですので見直す必要はないと思います。
混乱させてしまって申し訳ありません。
先生(岡ちゃん)視点
私の固有スキルである生徒名簿を見つめる。
生徒名簿には元生徒たちの過去、現在、そして未来の死因、これらが簡単に書かれています。
過去に関してはどこで生まれたかが書かれており、記述が変わることはありません。
それに対して、現在と未来は変化します。
ここで重要なのが、未来の死因。
私はここに記された死因を回避すべく、今まで行動してきました。
ほとんどの元生徒が若くして死ぬ定めにあったからです。
そして、その死因として記されていたのが、スキルを剥奪され死亡、です。
あのワールドクエストが発令され、禁忌を得たことによって、私たちはその意味を知ることができました。
スキルを剥奪されるということは、システムがなくなるということなのだと。
そして、その際に無理やり魂に付属されているスキルを剥がすことに衝撃に耐えられなくて、死ぬことになるのだと。
スキルを剥奪されて死亡という死因が書かれた転生者は、スキルの多い子たちでした。
スキルが多ければ多いほど、リスクが高くなるということでしょう。
つまり、スキルの多い子たちを生き残らせるには、システムの崩壊を阻止しなければなりません。
そう、思っていました。
「やっぱり、来ましたか」
私はモニターに映る光景を見て、肩を落としました。
そうならないでほしいと願って、けれど、現実にはそうなってしまったことが、その光景で判明してしまったからです。
「先生。落ち込んでる暇はないわよ?」
「わかってます」
工藤ちゃんの言葉で落ち込んでいた気分を無理やり引き戻します。
「宇宙戦艦的な戦闘やるとは思わなかったなー」
「テンション上がるよな」
「敵艦発見! ってね」
「敵は艦じゃないし宇宙でもないけどね」
エルフの里に保護していた生徒たちがわいわいと楽しげに話しています。
けれど、それは軽口をたたいて緊張を紛らわせているだけだとわかります。
エルフの里で魔物などの脅威から遠ざけられて生活していた彼らにとって、生き死にがかかった戦いは初めてのことなのですから。
「みんな、操作の仕方は大丈夫ね?」
「もちろん」
「OK」
それぞれの席に着いた子たちが工藤ちゃんの確認に答えます。
彼らの前にはそれぞれモニターが設置されており、それぞれの役割に応じた操作ができるようになっています。
このUFOに備え付けられた砲の操作や、無人戦闘機などの操作です。
私たちが今いるここは、エルフの里に隠されていた宇宙船であるUFOの中です。
魔王アリエルさんに連れられ、エルロー大迷宮近くまで来ましたが、さすがにこのUFOをエルロー大迷宮の中に入れることはできませんでした。
なので、監視を残し、私たちはエルロー大迷宮近くの上空を飛んでいたんです。
そこに、敵がやってきたわけです。
その敵の姿がモニターに映ります。
空を飛び、こちらに向かってくる多くの影。
その姿は、前世では現実にはお目にかかることはできなかった、幻想上の生物。
龍。
『龍に殺害され死亡』
ワールドクエストが発令してから変化した、ここにいる転生者たちの死因がそれでした。
エルフの里に保護されていたスキルの少ない子たちの未来の死因の項目は白紙になっていました。
それが変化して出てきたのが、この死因です。
逆に、戦いに赴いたスキルの多い転生者の子たちの死因は、白紙になっています。
この白紙が何を意味するのか、それはわかりません。
システムがなくなってしまうから、それ以降のことは記されないということなのだと、そう思いたいですが。
それならば、白紙になっている子たちは生き残るということです。
そうであってほしいです。
ですが、そちらを気にしている余裕はありません。
まずは、目の前に迫った死因を乗り越えねばならないのですから。
私はこうなる前、魔王アリエルさんと交わした会話を思い出します。
「……龍に殺される?」
「そうです」
生徒名簿の存在は転生者には明かせないという制約があります。
そこから得られた情報も転生者に直接伝えることはできません。
ですが、第三者を交えればその限りではなくなります。
ですから、第三者である魔王アリエルさんに、生徒たちが龍に殺されることを伝えたのです。
「ダスティンが転生者を狙う? なんのために?」
魔王アリエルさんは私の説明を聞き、しばし考え込みました。
「……さすがに狙いまではわかんないな。いくつか仮説は立てられるけど」
そして、魔王アリエルさんはそれ以上考えることはやめたようでした。
「話はわかった。つまり、君はこちら側につくということでいいのかな?」
「そう、なります。ならざるをえないです」
「で、その見返りとして龍を撃退し、守ってほしいと」
「はい」
「なるほどなるほどー」
魔王アリエルさんは納得したように頷きました。
「ま、最初から転生者たちを保護するのは決まってたからね。それに関しちゃ問題ないよ」
「! ありがとうございます!」
「ただ!」
喜ぶ私を制止するように、強めの口調で遮る魔王アリエルさん。
「最初から守るつもりだったにもかかわらず、その死因が出ている。つまり、私たちは君らを守り切れない可能性が高いってことだ」
「……はい」
それはたしかにそうでした。
「そして、正直に言うとこっちもこれ以上割ける戦力は少ない」
「そんな!?」
「だからさ、君ら自身でも戦わなきゃならない。他ならぬ、君ら自身のことなんだから」
そして、私たちは戦うことが決まったのです。
そして現在。
私たちはエルフの秘密兵器であるこのUFOを使い、龍たちを迎撃します。
このUFOはポティマスが宇宙に飛び立ち、他の星に移住するために作られた移民船だそうです。
そして、慎重なポティマスは過剰とも言える防衛機構をこのUFOに搭載しています。
それらを使って、私たち自身の手で龍を撃退する。
幸いにして、このUFOにはそれができるだけのエネルギーが積んであるそうです。
すでに積まれてしまっているエネルギーならば、好きに使ってもいいそうです。
それらはもう星から抽出してしまったものだから、今さら返すこともできないそうで。
魔王アリエルさんは戦力兼監視員としてアエルちゃんという子をよこしてくれています。
見た目は幼い子供ですが、上位の龍に匹敵する力を持っているそうです。
そのアエルちゃんを筆頭にして、同種のパペットタラテクトという子たちがあと四人。
アエルちゃんを合わせて五人います。
本来ならばアエルちゃんだけの予定だったのを、私の話を聞いた魔王アリエルさんが追加で人員をよこしてくれたんです。
魔王アリエルさんたちも余裕はないでしょうに、感謝してもしきれません。
「よし! 皆さん、行きましょう!」
はい! という唱和。
ポティマスに加担し、みんなをエルフの里に閉じ込めていた私です。
みんなはまだ私のことを許していないでしょう。
ですが、それについて悩むのは後にします。
私は、今私のできることをするのみです。
私は担当する無人戦闘機を出撃させます。
そして、龍の群れに向かって発進させました。
私は先生ですから、生徒には手出しさせませんよ!
書籍版では四人しか生き残ってないパペットタラテクトですが、WEB版では十人生き残ってます。




