最終決戦⑧
草間忍視点
ああー。
なんでこうなったかなー?
ぶっちゃけ俺的には世界の命運とかなんだとかそういうのちょーっと重過ぎっていうか、よそでやってくれ? みたいな。
まー、転生者って時点で滅茶苦茶巻き込まれるの確定だし、しょーがないのかもしんねーけどさー。
転生者プラス神言教の暗部の一人が親って、そりゃそうなるよなって感じ。
俺は神言教の暗部の、割と偉い奴が父親だった。
そのせいっつうか、おかげっつうか、赤ん坊のころに転生者ってバレて、教皇の爺に早めに保護されていた。
そのせいで暗部の特訓受けさせられてクソが! って思ったことは一度や二度じゃない。
つれーんだよ、特訓。
けど、他の転生者の境遇聞いちゃうと、それでも俺ってば恵まれてたんだなーって感謝の気持ちもわかなくもない。
神言教に保護されてなかったらエルフの連中に監禁されてたわけだろ?
そりゃねーぜ。
「そーゆーわけだからさー。一応爺には恩があるわけよ。世界の命運とかなんとかかかわりたくはねーんだけどさー、爺に恩を返さないでとんずらこくのもちげーかなって」
「そうですか」
「そうそう。だから爺のとこにはいかせらんねーんだわ」
「では、力づくで押し通るとしましょう」
そう言って白装束のねーちゃんが丸い、チャクラムっつーんだっけ? を投げてくる。
あー、なんでこうなったかなー?
まー、悩むまでもなく爺が若葉さんたちに喧嘩売ったからだよなー。
だからこうして若葉さんの部下たちの襲撃うけてるわけだ。
飛んできたチャクラムを回避。
これでも暗部の特訓受けて、しかも転生者のチートスキル持ちなんでね。
若葉さんとか笹やんとかに比べたら弱いけど、それでもそんじょそこらの連中には負けない自信があるね。
問題は、相手がそんじょそこらの連中じゃないってことかなー。
俺が対峙してるのは若葉さんの部下の魔族軍第十軍。
若葉さんが鍛えたっていう魔族の精鋭どもだ。
おそろいの白装束が目印のヤベー集団。
そいつらがここ、神言教の総本山たる聖アレイウス教国に攻め入ってきてるわけだ。
若葉さんたちって防衛側だよな?
なんで逆侵攻かけてきてるわけ?
俺、エルロー大迷宮の天下分け目の合戦に参戦したくなくて留守番組に立候補したのに。
ていうかあの爺、たぶんこの事態を想定してやがったな?
どーりで俺が留守番したいって言ったのに、素直にいいよって言うはずだぜ。
あっさりしすぎててなんかあるんじゃねーかって思ったらこれだ。
聖アレイウスの戦力は多くがエルロー大迷宮に行っちまってる。
残ってるのはわずかな守備隊のみ。
それと、俺みたいな居残り組。
その居残り組の中には、俺の親父含む暗部の一部がいる。
その暗部たちと守備隊を合わせた戦力が、攻め込んできた白装束どもと戦っている。
戦況は、いやー、これ無理じゃん……。
どう考えても勝ち目ないじゃん。
白装束は一人一人がクッソ強い。
神言教の暗部は幼少の時から厳しい訓練を施された精鋭だ。
白装束はその精鋭と互角以上。
しかも数は向こうの方が上。
一対一ならなんとかやりあえないこともないけど、向こうのほうが数が多い以上、どうしようもない。
守備隊は普通の兵士だし、そこまで強くない。
頑張ってくれてはいるが、時間稼ぎしかできてない。
ははーん、さてはこれ、負け戦ってやつだな?
……笑いごっちゃねーな。
ここで俺がチート的な力で形勢を逆転させる!
ってできれば苦労はねーんだけど、それも難しい。
俺が相手してる白装束のリーダー格のねーちゃん、普通につええんだよ。
チャクラムと俺の投げた手裏剣が衝突。
その間に肉薄し、忍者刀を振るうも、向こうも腕に装着したチャクラムで防御。
口から火を噴く火遁術をお見舞いするも、それすら闇の魔法っぽいので相殺される。
ここまでの攻防で、お互いに力量はほぼ互角だって理解した。
自身なくすって。
俺、これでも暗部の厳しい訓練乗り越えてきてんだぜ?
それこそ赤ん坊のころから転生者だからっつってちょっとした修行やらされてさ。
若葉さんとか笹やんとか、命がけで生き延びて強くなったのに比べたらそりゃ敵わないけど、それでもちょっとした自信はあったんだけどなー。
天狗の鼻が折れる。
「あなたは転生者。教皇の居場所を吐けば、悪いようには致しません」
ねーちゃんはそう言いつつも俺の動向を警戒している。
俺とねーちゃんの実力はほぼ互角。
本気でやり合えばどっちが勝つかわからない。
そして、本気でやり合った場合、勝つにしろ負けるにしても無事な保証はない。
戦況は向こうの方が断然有利。
時間を稼げばねーちゃんの仲間が加勢に来れる。
だから、ねーちゃんの方は無茶をする必要はない。
それがわかってるから必要以上に踏み込んでこねーのな。
このままいけば自分の勝ちは揺るがねーから。
ねーちゃん的には降伏勧告なんだろう。
「俺もそーしてーのはやまやまなんだけどさー」
ちらっと視線を逸らす。
その先には俺の親父が白装束三人を相手に奮戦してた。
戦いが始まる前、俺は親父からこう言われていた。
「逃げても構わん」
ってさ。
だってここには爺はいねーし。
白装束の皆さんには申し訳ねーけど、無駄足なんだわ。
ただ、ここに白装束たちを足止めしておけば、その分若葉さんたちの戦力を分散できる。
足止めが長くなればなるほど、主戦場に取って返すタイミングが遅れる。
が、無理に足止めしなくても、ここにいる時点で時間稼ぎは十分できてる。
だから、俺たちが命がけで戦う必要はない。
……ないんだけどなー。
「まー、受けた恩の分くらいは戦わねーと、かっこつかねーっしょ」
親父が命がけで戦ってるのに、息子が背を見せて逃げるのもな。
「お手柔らかにお願いするわ」
「そうですか。では殺す気でやります」
「お手柔らかにって言ったじゃん!?」
あー。
なんでこうなるかなー。
白装束のねーちゃんはフェルミナ
まっとうに鍛えた転生者の力 = 蜘蛛ん式訓練を受けた精鋭中の精鋭の力




