選択の時⑤
短め
全人類が聞いているアリエルの言葉
『あー……。うんっ! 締まらない出だしになっちゃったけど、そこの部分は忘れてほしい。ぜひ』
『さてと。それで、なんだっけ? 主張だっけ?』
『主張。主張ねえ……』
『そうは言ってもさ、正直あんまり語ることってないんだよね』
『だって、私は人類に期待してないからさ』
『そりゃそうでしょ。こんな状況になるまでのうのうと暮らしてたような連中に、何を期待しろっての?』
『サリエル様がさ、命を賭してこの世界を存続させてくれたっていうのに、今の今までその恩を忘れてるんだもん』
『それからどんだけの年月が経ったと思う? 禁忌の履歴を見れば大まかな年月はわかるっしょ』
『まあ、それをあえて忘れさせようと歴史から抹消した奴がいるからっていうのもあるけどさ』
『それでもずーっとはたから見てきた私としては、もう怒りを通り越して失望してんだよね』
『こんな連中を救うためにサリエル様は犠牲になったのかって思うと、ね』
『人類はさ、過去に自分らが救われるためにサリエル様を生贄にすることを選択した。だったらもう今回だってどんな選択をするのかって、目に見えてんじゃん』
『だから期待なんかしないし、説得しようとも思わない』
『でも、これだけは言っとく』
『勝つのは私たちだ』
『誰も、それこそサリエル様本人ですら救おうとしないのなら、私がサリエル様を救う』
『たとえ人類の半数以上を犠牲にしようとも』
『そっちがサリエル様を犠牲にしようってんなら、そっちが犠牲になる覚悟だって、あるはずだよね?』
『だから宣言させてもらう』
『私こそが、二代目魔王アリエル』
『魔族の王として、システムに指名されてきたまがい物じゃない、真なる魔王』
『サリエル様を解放するために、全人類の抹殺を目指した初代魔王フォドゥーイの遺志を継ぎ、私は人類に宣戦布告する』
『人類よ、女神のために、死んでくれ』




