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318 仲間じゃなかったのか!?

 皆さんこんばんは。

 やってまいりました異世界ナンバーワン決定戦。

 チャンピオンは管理者ギュリギュリ。

 対する挑戦者は魔王。

 神VS魔王という、ありがちな展開ですが、ありがちだからこそ伝統の一戦。

 果たして勝者は神か?

 それとも魔王が下剋上を果たすのか?

 こうご期待です。


 さあ、開戦のゴングが鳴る前に魔王が突撃したー!

 汚い!

 しかしそこはやはり魔王。

 汚いは褒め言葉!


 チャンピオン、この不意打ちをもろに食らい、吹っ飛んだー!

 顔面への右ストレート強打!

 これにはたまらずチャンピオンもたたらを踏む!

 今の攻防、どう見ますか? 解説の蜘蛛Bさん。


 イヤー、今のはチャンピオンわざと受けましたね、実況の蜘蛛Aさん。


 というと?


 チャンピオンは魔王の不意打ちをしっかりと認識していました。

 しかし、避けることも防御することもせず、あえて受けたんです。

 これはチャンピオンなりの余裕というやつでしょうか。


 なるほど!

 挑戦者の最初の一撃をあえて受けることによって、格の違いを見せつける目的があったわけですね!

 と、しかし、魔王そこで止まらない!

 襟首、襟首? あそこは襟首と言っていいのかどうか、まあとにかく襟首をつかんで地面に引き倒した!

 そのまま馬乗りになる!

 マウントポジションだ!


「どういうことだ!」


 ここで魔王の詰問!

 なされるがまま、無抵抗のチャンピオンに対して憤りを感じているようです!

 戦え!

 真面目に戦えと訴えております!


「……すまない」


 しかーし!

 それでもチャンピオン、戦う意志を見せません!

 これはどういうことでしょう!?

 チャンピオン戦意喪失か!?

 魔王はそんなチャンピオンに殴りかかる!


 ふう。

 実況ごっこも飽きたな。


「アリエルさん! 待って! やめるんだ!」


 鬼くんが黒の顔面を殴打し続ける魔王を羽交い絞めにして止める。

 魔王は鬼くんの腕の中でもがいて、なおも黒のことを殴り続けようとするけど、力ずくで引き剥がされてそれもままならない。

 魔王はポティマスとの戦いで、その力の大半を失ってしまっている。

 今は見た目通りの小娘、下手したら見た目よりもはるかに弱々しい。

 鬼くんの力で引き剥がされたら、抵抗できるはずもない。


 鬼くんグッジョブ。

 今の魔王は絶対安静の病人みたいなもんだからね。

 あんま暴れるのは体によくない。

 とは言え、ある程度発散しないとこの件は納まりもつかないし、黒は何発か殴られておくべきだと思って私は手出ししなかった。

 止めるタイミングとしてはいい感じ。

 さすが空気の読める男。


 え? 吸血っ子?

 ミノムシ状態で成り行きがわからずポカーンしてるけど、なにか?


「どういうこと?」

「すまん」


 以下、鬼くんに拘束されながらも黒に食って掛かり、問い詰める魔王と、すまん、しか言わない黒の問答が続く。

 私はそれをしり目に、さっきまで魔王が見ていたポティマスの日記の続きを読んでいく。


〈ギュリエディストディエスが外で活動させているボディに接触してきた。珍しいこともあったものだ。何か異変はなかったかと聞かれたが、間違いなくMAエネルギー激減と、同時期に発生した次元震のことだろう。もちろんこちらから情報を出すつもりはない。逆に探りを入れ、情報を引き出そうとしたが、奴自身も具体的に何が起きたのか知らないようだ。結局何の成果もなく別れることになる。奴自身も把握していないこの異変。情報を集める必要がある〉


〈勇者が代替わりした。新しく勇者になったのはアナレイト王国の第二王子ユリウス。そちらはどうでもいいが、代替わりしたということは先代となる勇者ダレスメイグが死んだということ。時期から考えて過日の次元震と関連があるはず。ダレスメイグが次元震を引き起こしたのだとすれば、納得はいく。魔王のほうは代替わりが確認できていないが、もしダレスメイグとともに協力していたのであれば、そちらも死んでいるだろう。そして、ギュリエディストディエスは生きていた。つまり、奴らは失敗したということか。使えん〉


〈次代の私のメインボディとすべく生ませた個体が、念話にて妙なことを言い始めた。自我もろくに芽生えるはずのない赤子の段階で念話を使うこと自体がありえないが、その話の内容もまたありえないものだった。しかし、内容自体は実に興味深い。こことは異なる世界の記憶を持った転生者か。例の次元震で消えたMAエネルギーがどこに行ったのかと思えば、まさか異世界に流れ込んでいたとは。なぜ本来ギュリエディストディエスに向かわなければならないものがそうなったのか、理由は不明だが面白いことになったのは確かだ。転生者、異世界の、我らとは異なる魂。それらを利用すれば、あるいは行き詰っている私の研究に一つの打開策をもたらすこともできるのではないか? 試してみる価値はある。であれば、早急にサンプルの確保に努めなければ。幸い、私に転生者のことを話した個体、フィリメスも転生者の保護を望んでいる。その願い、聞き届けてやろう〉


 う、む。

 これは何というか。

 読んでるだけで精神がゴリゴリ削られていくような、えげつない内容。

 悪いことを悪いと思ってないで、平然と実行する奴はこれだから。

 先々代の勇者とか先代の魔王とか、何よりも先生のことを一個の人格としてじゃなくて、道具としか思ってないのがこの短い文章だけでひしひしと伝わってくる。

 まあ、わかりきってたことだけど、やっぱポの字クズイな!


 過去のデータをあされば、先々代勇者と先代魔王とのやり取りも出てきそうだけど、そこまで調べる必要はないかな。

 ていうか、あんま詳しく読みたくないわー。

 大体の構図は見えたし。

 まあ、元から知ってたけど。


「ねえ、私さ、ギュリエのこと勝手に仲間だって、同志だって思ってたんだけど、それって私の勘違いだった?」


 おっと。

 放置してた魔王と黒のやり取りが、かなり深刻な感じになってる。

 魔王が今にも泣きそうになってるじゃん。

 こんな小さな女の子泣かすなんて、黒はサイテーだな!

 ……というのは冗談にして、そろそろ割って入るか。


「ヘタレ」


 あ、間違えた。

 ついつい心の声のままに黒に呼び掛けちゃったぜ。

 まあいっか。


「ちゃんと説明しないと伝わらない。謝ってないで一からちゃんと説明しろ」


 倒れた状態から半身を起こした黒が目を見開く。

 魔王もこっちを振り返って同じように目を丸くしていた。


「……え? それをご主人様が言うの?」


 吸血っ子がなんか変なこと言っていたので、とりあえず蹴っておいた。

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― 新着の感想 ―
[一言] うんおまえがゆーな案件。 つうかギュリギュリが前々勇者と前魔王をそそのかしたんじゃなく、ポティマスがギュリギュリを葬ろうと前々勇者と前魔王を唆したつもりがギュリギュリがその攻撃を弾き飛ばした…
[良い点] そらブーメランやぞw
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