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296 エルフの里攻防戦⑧

 空に浮かぶ無数のウニ。

 その中心にあるでっかい三角錐。

 なんか、無性に宇宙でやれって言いたくなる光景だわ。

 ないわー。


 ごめんよ、この世界に生きる諸君。

 君らは頑張ってた。

 そりゃ、あんなもん浮かばせて喜んでる変態がいたんじゃ、貯まるエネルギーも貯まらんわ。

 ウニ一体だけでもどんだけエネルギー横領してんねんって思ったけど、こんないっぱいいたら世界の一個や二個とっくに救われてるわ。

 むしろよくこんだけ好き勝手搾取されて存続できたな、この世界。

 そんだけこの世界の住人が頑張ってた証拠やね。

 イヤー、頑張った頑張った!

 ……まあ、だからといって私のすることに変わりはないんだけどね。


『総員、全力退避』


 念話で各部署に退避命令を下す。

 吸血っ子や鬼くんでもウニを相手にするのはきつい。

 あのクイーンですら私の助太刀がなければどうにもできなかったウニが、数えるのも億劫なくらい浮いてるんだから、逃げるが勝ちってやつよ。

 それに、私が本気出すなら巻き添えにしちゃうかもしれないし。


 メラはその点優秀。

 私が退避命令を出す前から軍を後退させていた。

 あらかじめ不測の事態が起こったらムリしないようには言ってあったんだけど、それにしても即断即決。

 危険を感じたらすぐさま撤退するとは、なんだかんだ言ってうちらの中で一番将として優れているのはメラなんじゃないかな。


 胃液シスターズを介して転生者を確保。

 異空間に適当に放り込む。

 なんか二人ほど別行動をとっていたんだけど、そっちも追いすがって確保。

 うむ。

 これで何の憂いもなくここら一帯戦場にしちゃっても問題なし。


 さて、本気出しますか。

 あーあ。

 できれば手の内を全部さらすのは避けたかったんだけど、そうも言ってらんないしなー。


 私が着々と下準備を進める中、三角錐の角が発光し始める。

 〇動砲っすか?

 〇動砲っすね!

 私の予想通り、一瞬の後に光が極太のレーザーとなって私に向かって発射された。

 はいはい、異空間にボッシュート。

 かーらーのー、そのままお返し!

 向かってきた極太レーザーが、私の前に出現した異空間へのゲートに吸い込まれる。

 そして、その隣に出現したゲートの出口から、三角錐に向かってレーザーが飛び出してくる。

 空間使いだったら誰でも考えるよね!

 遠距離攻撃をそのまま空間を繋げて相手にお返しするやつ!


 自分で撃ったレーザーが三角錐を襲う。

 が、やっぱりというべきか、三角錐には結界が張ってあったらしく、まばゆい光を発しながらレーザーが弾かれた。

 たぶん、魔術妨害結界と反射を合わせた結界かな?

 レーザーが結界に弾かれて四方八方に枝分かれして飛び散る。

 それらの着弾点が、消滅した。


 ……威力高すぎー。

 なんやのんあれ?

 着弾点の地面が消失してるんですけど?

 なんかクレーターっていうか、穴になってんですけどー。

 物理的にこの惑星ぶっ壊す気ですか?

 〇動砲かと思ったら、〇ススターのスーパーレーザーだった件。

 あれ一発撃つのにどんだけのエネルギーを浪費してんだか。


 まともに防御しようとか考えなくてよかった。

 あんなん防御できる訳ねーっしょ。

 ふっ、しかしながら遠距離攻撃は私には通用せん!

 全て跳ね返してしんぜよう!

 まあ、第二射を撃たれる前に沈めるけどな。


 一度だけチラッと黒のことを盗み見る。

 黒は鬼くんに連行されていっている。

 私の視線に気づいたのか、振り返ったけど、すぐにまた前を向いて避難を再開した。

 とりあえず、この戦いに介入する気はないっぽい。

 それはいいんだけど、私の手の内を見せることになるのは遺憾やね。

 けど、さすがにこれを本気出さずに乗り切れるかって言われると、厳しいがな。

 イヤ、時間かければできなくもないけど、そんな悠長に事を構えてたらここら一帯焦土通り越して消滅してしまうわ。


 ふう。

 では、参る。

 と言いつつ、私自身は異空間にさよなら。

 ふふん。

 いくら破壊力の高いビーム撃とうとも、空間を超えてこなければ私には届かん!

 空間使いの何が卑怯かって?

 空間能力を持たない相手には一方的にやりたい放題できるってことよ。

 まあ、だからこそ神にとって空間能力は必須なんだけどね。

 その中でも私は空間能力に特化してるっぽいけど。


 では、地獄の釜の蓋を開こうか。

 三角錐とウニが浮かぶ空中。

 そのさらに上空に、空間の亀裂が入る。

 その亀裂は蜘蛛の巣のような模様をとって広がっていき、エルフの里がある森の上空を覆いつくす。

 そして、亀裂から地上を覗く無数の目。

 八百万の目が地上を見下ろす。

 我が分体たちの暴食の邪眼。


 ウゾウゾとひしめく分体たちが一斉に発動した暴食の邪眼は、三角錐やウニたちのエネルギーを食い散らかす。

 三角錐もウニも対空砲火を放つも、蜘蛛の巣状の空間に阻まれ、分体たちには一切その攻撃が届くことはない。

 そりゃ、空間遮断されてんだもん。

 届くわけがない。

 そうこうするうちにエネルギーを食いつくされたウニたちが地上に落下していく。


 これが私の本気。

 空間能力をフルに生かし、無数の分体を異空間「マイホーム」に引きこもらせたうえで、暴食の邪眼で一方的にエネルギーを搾取する。

 神だろうがエネルギーが尽きればただの生物。

 通常の生物ではありえないエネルギーの量こそが神を神足らしめているのだから、それを奪ってしまえば神は神と言えない。

 なりたての半端な神である私が、黒に対抗するために編み出した戦法。


 ていうか、これしかなかったんだよねー。

 だって、真正面からやりあったら確実に負けるし。

 だから、もともとあった手札を徹底的に伸ばしていくしかなかった。

 ぶっちゃけ、私はこれしかできない。

 神としては失格とも言えるほどできることが少ない。

 それでも、格上の神である黒を倒すために磨き続けてきたこの新マイホーム戦法。

 エルフの兵器ごときが破れるはずがない。


 もう一度黒のことを確認する。

 うわー。

 めっちゃ見てるよ。

 やめてくれ、見ないでくれ。

 私はこれしかできんのだから、これの対策をされたら詰むんだって。

 だからやりたくなかったんだよ。

 頼むから対策すんなよー?


 そんなことを私が祈ってる間に、ウニが全て地上へと落下し、最後の三角錐も力なく落下していった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 黒視点のこの話とか見たいです
[一言] あんなもの浮かべて喜ぶ変態… ソ○ディオス?コ○マ?
[良い点] うわー、反則くせぇー
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