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SS バレンタイン

遅刻ですがバレンタイン短編。

特に本編とは関係ない小話です。

『ハッピーバレンタイン。友チョコです。一生懸命作ったので食べてください。Dより』


 朝起きると枕元に可愛くラッピングされた箱が置いてあった。

 簡易ホーム内で身の安全を確保したうえで寝ていた私に気づかれることなく枕元に何かを置くだと?

 と、我がホームに自信を持っている私としてはプライドを傷つけられたものの、箱と一緒に置かれていたカードに書かれた差出人を見て納得。

 あんにゃろうなら仕方がない。


 それにしても、チョコだって?

 たまにはいいことするじゃないか、あの邪神様も。

 私甘いもの大好きですよ?

 しかもこっちじゃチョコッてないからメッチャうれしいんですけど。

 早速いただこうじゃん。


 パカッ!

「マ゛ア゛ア゛ア゛ァァァ!!」

 パコッ!


 ……何今の?

 私の目の錯覚か、箱を開けたらなんか謎の茶色いドロドロしたクリーチャーが奇声を上げていたように見えたんだけど?

 チョコ?

 チョコってあんな見ただけでSAN値チェック入るような代物だったっけ?

 もう一度箱を開けて確認してみよう。

 うん。

 私の目が一時的におかしくなっただけかもしれんしね。


 パカッ!

「マ゛ア゛ア゛ア゛ァァァ!!」

 パコッ!


 どうしようこれ。

 食えと?




「それでどうして私のところに持ってきた?」

「マ゛ア゛ア゛ア゛ァァァ!!」

「食べて」

「……断る」

「マ゛ア゛ア゛ア゛ァァァ!!」


 やってきました黒のところ。

 神様が作ったものは神様にブン投げるのが正しい対処法です。

 そういうわけで黒に押し付けようとしているのだけど、こやつなかなか受け取りやがらない。

 ほら、こんなに自己主張して受け取ってほしそうにしてるじゃないか。

 よくよく見るとなかなかに可愛げがあるんでない?

 だからほれ、受け取るんだ!

 バレンタインで女の子からチョコがもらえるんだぞ!

 世の男子どもが君のことを羨望の眼差しで見つめること間違いなしの待遇だ!

 これを受け取らないなんてそんなバレンタインを侮辱するようなものじゃないか!


 押し付けようとする私と、かたくなに受け取ろうとしない黒の攻防。

 それが二十分ばかし続いた末、諦めたかのように黒がクリーチャーに手を伸ばす。

 お?

 ついに観念して受け取る気になったか!

 そうかそうか。

 末永く可愛がってくれたまえ。


 ガシッとその右手がクリーチャーを掴み、ガシッと左手が私の顎を掴む。

 ん?

 そしてその手が無理矢理私の口を開かせ、強引にクリーチャーをその中に放り込んできた。


「マ゛ア゛ア゛ア゛ァァァ……」


 私の口の奥深くに消えていくクリーチャーの叫び声。

 思わず食っちまったじゃないか!

 なんてことをしてくれるんだ!?

 普通にチョコの味したわこんちくしょうめ!


「Dにも困ったものだ」






「マ゛ア゛ア゛ア゛ァァアッ!? アアァ……」

「なんですか、これは?」

「見てわかりませんか?」

「わからないから聞いているんです」


 謎の奇声を発する物体にスプーンを突き刺し、その身を削って口元に運んでいるDに、メイド服を着た和風美人が問いかける。


「チョコです」

「チョコは奇声を発したりはしません」

「それは固定観念というものですよ。食べます? 美味しいですよ?」

「たとえ美味しくてもそんな奇妙なものを食べたくはありません」

「美味しいですのに」

「それよりも、仕事を放り出してどうしてそんなものを作っているのか。納得のできる説明をしてくれるんでしょうね?」

「バレンタインだからやらねばならぬと思った。反省も後悔もしていない」


 その後Dがどうなったのか、知る者はいない。

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― 新着の感想 ―
[一言] そのチョコ○園○リスから買ってきた?(汁゛
[良い点] ハリポタのカエルチョコみたい
[一言] どうやったらそんなもんができて、どうやったらそんなものが美味しいんだよ…
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