41 念願の、レベルアップを果たしたぞ!
もう何匹目かになるはぐれを狩ったとき、その声が聞こえた。
《経験値が一定に達しました。個体、スモールタラテクトがLV2からLV3になりました》
《各種基礎能力値が上昇しました》
《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『強力LV1』が『強力LV2』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『堅固LV1』が『堅固LV2』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『過食LV1』が『過食LV2』になりました》
《スキルポイントを入手しました》
待ちに待ったレベルアップの瞬間が来た。
私の体から皮がゴソッと剥ける。
背中に空いた大穴が、なんとも表現できないような感覚で塞がっていくのが分かる。
《熟練度が一定に達しました。スキル『HP自動回復LV1』を獲得しました》
え?
マジで?
おおう。
これは予想外だわ。
ていうか、レベルアップの全回復も自動回復になるの?
めちゃくちゃ嬉しいけど、贅沢を言うならもうちょい早く欲しかった…。
そうすればここまで苦労はしなかったのに。
いや、それは本当に贅沢なことだ。
今はこうしてレベルアップして後顧の憂いが消えたことを素直に喜ぶべきだ。
実際かなり危なかった。
HPがついに減り始めていた。
6だったHPが5に減った時は、生きた心地がしなかった。
そのあと、ゆっくりと減っていき、レベルアップ直前で3まで減っていた。
本当に危なかった。
焦る心を押し殺して、はぐれ狩りに専念した甲斐があった。
はぐれ狩りは順調だった。
最初の予想と違って、クモーニングスターの遠距離攻撃は、百発百中だった。
びっくりだわー。
これも蜘蛛の体の成せる技なのかね?
しかも、そのおかげかどうかわからんけど、スキルの『投擲』と『命中』がそれぞれレベル1で手に入った。
両方とも効果を底上げしてくれるスキルだと思う。
それに、今回のレベルアップでもスキルが3つも上がった。
どれも効果がわからないのばっかだけど、上がったからにはどっかしらで熟練度を稼いでるってことだし、無意識のうちにその恩恵にあずかってた可能性もある。
上がって損はないし、いいこと、のはずだ。
過食だけちょっと不安だけど…。
巣を作ったり、はぐれ狩りをしたりで使う機会の多かった蜘蛛糸と操糸もレベルが上がった。
それぞれ蜘蛛糸がレベル8で、操糸がレベル5だ。
操糸は思った以上に役立ってくれてる。
レベル5になって、かなり操作できるスピードや精密さが上がった。
このスキルはとって大正解だった。
痛覚軽減もレベル5まで上がった。
おかげで途中からはかなり楽だった。
このスキルのいいところは、痛みを感じなくなるのはもちろんのこと、痛みを感じなくても危険な状態だということがちゃんとわかるってことだ。
痛いっていうのは危険を伝える信号で、ちゃんと意味が有る。
それがなくなるってことは、危険を感じなくなるってことなんだけど、このスキルの場合、痛みは感じないけど、傷の深さだとか、その傷がどれだけ危険なのかとかはきちんと分かるのだ。
こう、感覚的なことだから言葉にするのは難しいけど、傷から焦燥感というか、なんというか、とにかく痛みとはまた違った感覚でちゃんと分かるのだ。
おかげで痛みがないことのデメリットはない。
まあ、まだ5レベルだから、痛みが完全になくなるわけじゃないんだけどね。
さて、せっかくレベルが上がったことだし、どれだけステータスが変化してるのか見てみよう。
『スモールタラテクト LV3 名前 なし
ステータス
HP:38/38(緑)
MP:38/38(青)
SP:38/38(黄)
:38/38(赤)
平均攻撃能力:21
平均防御能力:21
平均魔法能力:19
平均抵抗能力:19
平均速度能力:369』
ほうほう。
HPMPSPがそれぞれ2ずつ、攻撃力と防御力も2ずつ、魔法と抵抗力が1ずつ上がってるね。
で、速度、お前何なん?
前は348だったはずだから、21も上がってんですけど?
おかしくない?
他のステの慎ましい上がりと余りにも差がありすぎじゃありませんかね?
1レベルの上昇分がそのまま攻撃力と防御力の数値と同じってどういうことよ?
魔法と抵抗に至っては1レベルで抜かれるんですけど…。
ありえねー。
まあ、ステのひどい偏りには目を瞑ろう。
今更っちゃ今更だし。
念願のレベルアップで全回復できたし、これで脱出に向けて全力で挑める。
やっぱり怪我があった分、どうしても作業は遅くなるし、行動も慎重にならざるを得なかったしね。
これからは適当にはぐれを狩って、スタミナを確保しつつ巣をドンドン伸ばしていこう。
今、巣は目標地点の四分の一くらいまで伸びてる。
まだまだ先は長い。
蜂はまだ積極的にこっちに仕掛けてくる雰囲気はないけど、それもいつまでもつかわからない。
そう考えると、蜂の襲撃に耐えられるくらいの強度を保ちつつ巣を作っていかなきゃならない。
ならないんだけど、これが結構難しい。
やっぱり、地上に張るのと違って、上に上にと伸ばしていく巣は、どうしても上に行けば行くほど作るのが難しくなっていく。
土台である岩から支柱となる太い糸を伸ばさなきゃならないし、その支柱を固定するためにさらに糸で雁字搦めにしなきゃならない。
四分の一でこれだから、さらに上に行けば、作業の困難さはもっともっと上がっていく。
それでもやらなきゃならない。
いつまた地龍がフラッとやってくるかわかったもんじゃない。
その前に、なんとしてでもここから脱出しなきゃならない。
最悪、巣は途中で放棄して、素早さに物を言わせて突貫しなきゃならないかもしれない。
かなり分が悪いけど、このままじゃ確実に死ぬ、って時にはやらざるを得ないかも。
そうならないように、今は巣作りを頑張ろう。
ステータス表記を弄ってみました。これでどうでしょうか?