276 BBA無理すんな!
山田くんを分体で見張っていると、やっぱりというべきか、新たな勇者に山田くんがなっていることが判明した。
山田くんが教師にその口から証言しているので間違いなさそう。
砦の攻略をワルドくんに任せ、魔王のところに転移する。
何はともあれ魔王と相談しないことには始まらない。
魔王がいる魔王軍本陣に転移すると、やたら殺伐とした空気になっている。
「いいところに来た。聞きたいことがある」
魔王と一緒にいた黒が私と魔王を人気のないところに連れて行く。
バルトが物言いたげに私たちのことをジッと見つめていたけど、結局何も言わずに見送った。
多分、念話でブロウが死んだことを知ったんだと思う。
「あれを投入する必要があったのか?」
「あれって? 何かなー? あれだけじゃ私わかんなーい」
私に向かって問いかけられた質問に、魔王が割って入ってはぐらかす。
黒は魔王に一瞬だけ視線を向けながらも、すぐにまた私をジッと見つめて口を開く。
「クイーンタラテクトだ」
「ああ、あのでっかい蜘蛛さんねー。すごい偶然だよねー。戦場にいきなり転移してくるなんてさー」
「惚けるな」
「黒ちゃん、こわーい。白ちゃんたすけてー!」
私への質問に魔王が答え、そんな魔王を見ずにジッと私を見つめる黒。
その異様な雰囲気の中、私はだんまりを決め込む。
黒に今回のことを教えるつもりはない。
「白ちゃん、せめて反応くらいは返して欲しいって、お姉さん思うなー」
「話を逸らすな」
私が何も答える気がないと察したのか、黒が魔王に向き直る。
そこからは魔王と黒の言い合い。
魔王もクイーンタラテクトで行った虐殺の理由は知らないはずだけど、それについてとやかく言うつもりはないらしい。
どころか、言葉の端々に、人族や魔族に対する鬱屈した思いが見え隠れしている。
今までずっと我慢してきた分、少しくらい多めに殺してもいいと思ってるのかも。
まあ、魔王の本心はどうであれ、私のことをかばってくれているのなら、私から言うことはない。
「それを言葉にしないとわかんないかなー? ねえ、底抜けの優しさってさ、底抜けの間抜けと紙一重だって思わない?」
「思わんな」
しばらく魔王と黒の言い合いを観戦していたら、魔王が信じられないことを口にした。
それはまるで、今回のことを知っているかのような口ぶりで。
そして、女神の行動を非難しているかのようで。
黒はその魔王の言葉を即座に否定したけれど、魔王がそんなことを言うということが、どれだけおかしなことなのか、わかってるんだろうか?
「あっそ。けどこれだけは覚えておいたほうがいいんじゃない? 優しさだけで救われるものなんて、タカが知れてるんだよ」
「私はその優しさに救われた。そして、それは我らをも否定することになるぞ?」
「そうだね。だからこそこうしてあんたと私は反目し合ってるわけだ」
「引く気はないのだな?」
「ないね」
「……わかった。今しばらくは付き合おう」
「さすが黒ちゃん! 話がわっかるー!」
「だが、どうしても納得できなくなったときは、容赦しない」
「あいよー。できればその時が来ないことを願うぜ」
話は終わったとばかりに機嫌悪そうに出て行く黒。
魔王はその姿を見送ってから、大きく息を吐いて脱力した。
「あー。殺されるかと思ったぜ」
この世界で間違いなく最強の存在である魔王も、世界の理の外にいる神である黒には敵わない。
威勢良く啖呵を切っていたけれど、内心結構緊張してたらしい。
「魔王」
「いいよ。言わないで」
今回のことを説明しようとしたら、魔王に制された。
「というか、言わないで欲しい、かな。決意が鈍りそうだから」
そう言って、魔王は背中を向けた。
私の目には、背中を向けていてもその表情がわかる。
魔王は相変わらずのヘラヘラした笑みを浮かべている。
ただ、その表情の下で、泣きそうになっているんだということは、わかった。
魔王はわかっていた。
どうして私が予定外の行動を起こしたのか、その理由を。
そこに、どんな意味があるのかを。
自分の行いを、他ならない、救おうとしている相手に否定されているということを。
わかっていても、私の口からその事実を聞くのは怖い。
聞いてしまえば、立ち止まりたくなるから。
そして、立ち止まってしまえば、きっと魔王はもうどこにも進めなくなる。
それを魔王自身がわかっているから、聞くことを拒否したんだと思う。
けど、それは逆に言えば、まだ立ち止まる気がないということでもある。
たとえ女神に否定されても、それでも進む気でいる。
強いなぁ。
魔王は強い。
神だとかステータスだとかなんだとか、そういうの抜きにして、私が知る人物の中で一番強い。
眩しいくらい強い。
その強さが、羨ましい。
魔王には、これ以上ないくらいの誇りがあるから。
私には、まだ胸を張れるような信念がない。
誇りがない。
だからこそ、この誇り高い魔王の手伝いを、本気でしてみたいと思ったのかもしれない。
後ろを向いたままの魔王の体を抱きしめる。
「大丈夫」
こういう落ち込んでる人を慰めることなんかしたことないけれど、今はそうすべきだと思った。
「私がついてる」
Dとの契約もあるけれど、それ以上に、個人的な感情で、魔王の最期まで見届けようと思う。
だから、その時が来るまで私はずっと魔王の味方だ。
「こうしてると、どっちがお姉さんかわかんないね」
魔王が冗談めかして言う。
魔王の見た目は幼い少女だからね。
傍から見たら私の方がよっぽどお姉さんだろう。
実年齢は魔王の方が断然上だけど。
「お姉さんっていうか、おばあさんだけどね」
私はマザーの子供として生まれたわけで、そのマザーを生み出した魔王とは、おばあちゃんと孫の関係にあたるわけだ。
なので、姉云々はどっちにしろ間違っているのだよ。
「あっは。確かにそうだった」
BBAが笑う。
「ありがとう」
そんでもってBBAは礼を言った。
いえいえー。
私おばあちゃんっ子ですんでー。
魔王と黒の会話全部は「人魔大戦裏」にて。
白的「心」戦闘力
魔王>先生>女神=教皇>鬼くん>>>超えられない壁>>>吸血っ子>黒
あくまでも白の主観なので異論は認める。




