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40 蜘蛛VS蜂③

 とりあえず、食料の確保はできた。

 蜂の体の大きさを考えると、数日はこのままでも飢えをしのぐことができる。

 これでスタミナの心配をする必要はなくなった。

 となると、行動の選択肢が増える。


 一番現実的なのが、このまま同じ方法で蜂をチマチマ狩りつつレベルが上がるのを待つ。

 無理な冒険をしない分、堅実に安全に稼ぐことができる。


 もう一つの案が、巣をさらに拡張すること。

 上に向かって。


 この底のエリアを探索するのは、ヤダ。

 できるできないの問題じゃない。

 ヤダ。

 地龍怖い。

 ムリ。


 そういうわけで、私としてはどうにか上に這い上がっていって、落っこちてきた元の通路に戻りたいところ。

 そのためには蜂をどうにか躱していかないといけない。

 単純に壁をよじ登るだけじゃ、蜂の餌食になるだけだし、何か対策を考えないといけない。

 

 そこで考えたのが、巣をそのまま上の方まで伸ばしていくという案だった。

 案というかゴリ押しというか。

 うん、我ながらものすごい力技。

 けど、これくらいしか上に戻る方法が思いつかないし。


 もちろんデメリットもいろいろある。

 まず巣を作ればそれだけスタミナを消耗する。

 しかも今回はいつもと違って、壁面を上に登るように巣を作らなきゃならない。

 勝手が違うから、どれだけ余分にスタミナを消費するかわからない。

 かなり大規模な巣作りになるだろうし、今手元にある蜂だけじゃ、スタミナは確実にもたない。

 どこかしらで補給する必要がある。


 それに、補給以外でも蜂と戦う羽目になるかもしれない。

 今は見逃されてるけど、巣を上の方に伸ばしていけば、そのうち蜂の主領域に侵入することになる。

 領空侵犯だね。

 それをあいつらが見逃してくれるかどうか。

 最悪上空に飛び回っている数百、下手したら数千規模の蜂の大軍団が一斉に襲いかかってくるっていう、悪夢のような状況になりかねない。

 さすがにそんな数を相手にしたら、巣でも防ぎきれない。


 警戒すべきは蜂だけじゃない。

 今のところ、この縦穴の底には蜂以外の魔物は入ってきてない。

 一番初めの蛇と地龍だけだ。

 けど、もしその地龍がフラッと現れたら…。

 前回は岩陰に隠れてやり過ごしたけど、巣を拡張するってなったら嫌でも目立つ。

 もし興味をもたれでもしたら、アウトだ。

 今でも地龍が来るんじゃないかとビクビクしてるくらいだし。


 そういうわけで、成功すれば私は晴れてこの超危険地帯から脱出できるけど、それだけリスクもでかい作戦になる。

 けど、これ以外の選択肢が私にはない。

 もしかしたらあるかもしれないけど、私には思いつかない。


 ということで、覚悟を決めて巣作り開始!


 まずは土台。

 家を作るにはまずしっかりとした土台を作らなきゃならない。

 土台の出来で家の出来が決まるといっても過言じゃない。

 そんな土台に適した岩がここに!

 

 私が一番最初に逃げ込んだ岩。

 壁際ギリギリのところに鎮座するその岩は、高さにして7メートルくらい、横幅も5メートルくらいと、なかなかに大きい。

 この岩を土台にするようにして巣を拡張していこう。


 いま完成している巣は、この岩と壁の間及び、そこから少し横にはみ出した感じで作られている。

 まずは反対側の岩と壁の間を糸で塞ぐ。

 そして、岩の頂点から壁に向かって、斜め上に糸を取り付ける。

 その糸を中心に岩と壁を繋げていく。

 これで土台は完成だ。

 

 あとはちょっとずつ上に向けて巣を拡張していけばいい。

 蜂を食べてスタミナを回復させつつ、作業を進めていく。

 その途中、何度か蜂の隊がこっちをジッと覗ってたけど、やっぱり襲いかかってはこなかった。

 このくらいならまだ、見逃してもらえる範囲らしい。

 

 蜂を食べきった時点でこの日の作業を中断し、眠りについた。


 五日目。

 なんとなく痛みが和らいだ気がする。

 HPは相変わらずの6。

 回復してないことから、痛覚軽減のスキルレベルが寝てるうちに上がったんじゃなかろうか。

 多分そう。


 痛みが少ないっていうのは素晴らしいね。

 今までも苦痛無効のおかげで動くのは問題なかったけど、やっぱり気分的に痛みがあるのとないのじゃ大違い。

 いや、完全に痛みが消えたわけじゃないし、怪我が治ったわけでもないんだけどさ。

 だいぶ楽。

 人間だったときはこんな大怪我負ったことなかったからねー。

 人間の頃にした一番痛い思いは、ドアの角に足の小指打った時かなー。

 あれは痛かった。

 けど、背中に大穴空くような大怪我とじゃ比べものにならないし。


 気分的にもだいぶ上向きになってきたおかげで、作業は順調に進む。

 

 その途中で、はぐれが近くまで来た。

 けど、隊もわりと近くにいる。

 ふむ。


 ここは一つ、実験の意味も込めてはぐれにちょっかいをかけよう。

 はぐれにちょっかいをかけて、隊が反応するかどうか。

 隊が反応したら巣の深いところにすぐ撤退。

 反応しなかったら、そのままゴーで。


 クモーニングスターを振り回す。

 そういえば、前の時に集中なるスキルを手に入れたけど、あれは単に集中力が増すスキルなのかな?

 まあ、レベル1じゃ大した効果もないだろうし、それ以外の効果だったら使いようがないから放置でいいかな。


 と、集中集中。

 集中のことを考えて集中力が乱れるってどういうことよ。

 よーく狙いを定めて、ここだ!


 あ、当たった。

 

 え、ええ?

 すごくない?

 当たるわけねー、って思ってたんだけど、2連続で命中しちゃったよ。

 私、体力測定のソフトボール投げでは、学年最下位の結果を叩き出したくらいなんだけどな…。

 

 おっと、ビックリしちゃって肝心の隊の動きを見てなかった。

 隊は、いたいた。

 ふむ。

 動きなし。

 はぐれを襲っても逆襲に来ることはないわけね。

 薄情、っていうわけでもないのかな?

 野生で生きていくにはこのくらいシビアでなければやっていけないのかな?

 まあ、どっちにしろ襲ってこないのは好都合。

 これで心置きなくはぐれ狩りができる。

 

 捕えた蜂をホクホク顔で回収。

 毒牙で止めを刺した。

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