255 三行で、ムリ
Q、気を失ってる間に何があったの?
A、黒とかいうのがボコってエネルギーを浪費させることによって、憤怒を持続させる力を根こそぎ奪った。だから今は正気を保つことができる。とりあえず憤怒が本当に発動していないのか確かめるためにも、安全な異空間に隔離しておいた。
Q、その黒って何者?
A、この世界の神様。ただし優柔不断のヘタれ。
Q、白さんとどういう関係?
A、今のところ協力者。便宜上魔王の下についていることになっている。
Q、魔王?
A、魔王。
Q、えーと、魔王ってことは魔族の王って事?
A、厳密には違うけど、今はその認識でもいい。
Q、僕と戦ってた女の子は?
A、吸血鬼。一応魔族の国で生活中。ちなみに転生者。
Q、前世の名前は?
A、根岸彰子。
Q、随分イメージ変わったなあ。
A、いろいろあったのだよ。
Q、根岸さんは無事?
A、無事。ちょっと君との戦いで無茶したからお仕置きしたけど。
Q、そ、そう。それは悪いことしちゃったかな。
A、そんなことはない。気にする必要なし。
Q、他の転生者はどう過ごしてるの?
A、ほとんどは先生がエルフのところに保護してる。その他の一部は人族の学園に通ってたりしてるけど。山田くんと大島くんは学園組。
Q、ここからその人族の学園までは遠い?
A、遠い。
Q、僕はこのあとどうなる?
A、どうもしない。理性が戻ってるなら好きにすればいい。
以上、質疑応答でした。
頑張った私、超頑張った私。
ちなみにここまでかかった時間は、言わないでおこう。
うん、腹が減ったので途中で一回退室して食べ物取りに行ったりもしたけど、そんなに時間かかってないよー。
ないんです。
そういうことにしとくのです。
鬼くんは好きにしていいという言葉に、逆に困ったような顔をして何ごとかを考え込んでいる。
まあ、いきなり好きにしていいって言われて放り出されても、困るわな。
ここは助け舟を出すべきか?
一応同じ転生者同士、助けてやるのもやぶさかではない。
「行くあてがないのなら、しばらくうちにいる?」
うちって言っても、バルトのところだけど。
なんだったらこのまま異空間を貸出してもいいし。
ああ、けど、私がいないと出入り不可能になるから、死ぬわ。
「そう、だね。正直、これからどうすべきなのか、僕自身もわからないんだ」
というわけで、迷える子羊ならぬ、迷える鬼くんを保護。
とりあえず半裸族のままなのもアレなので、バルトの屋敷に戻って適当な男物の服を使用人に見繕ってもらい、着せてみた。
鬼くん、憤怒の影響で理性なくしてた影響で、童話に出てくる鬼さながらのパンツ一丁スタイルだったからね。
パンツだけでも履いていたのは、残ってた理性の最後の意地だったのかも。
で、服を着せてみると、なんかコレジャナイ感が漂う。
鬼くんの顔は前世のままなので、日本人顔。
そんでもって種族は鬼で、ザ・和風。
和服とか百歩譲って中華っぽい感じの鎧とかならまだいいけど、洋物の服を着せると違和感が半端ない。
私としては珍しく、思わず口に出して「似合わない」ってボソッと言っちゃったし。
どうもその呟きを聞かれたらしく、鬼くん地味にショック受けてたっぽいけど。
うむむ。
なんかしっくりこない。
だって刀持った純日本人顔の鬼が、西洋の貴族服着てるの想像してみ?
あ、バルトはそれなりどころか、魔族の中じゃ超がつくほどの上流階級なんで、その屋敷に置いてある服も貴族御用達の紳士服ばっかだった。
紳士服着た鬼。
なんだ、人によってはうけるのかもしれないけど、私としてはない。
鬼くん元の顔もそれなりに整ってたし、鬼になったせいか背も高くなってるから、格好悪いわけじゃない。
わけじゃないんだけど、違和感がね。
うん。
ここはやっぱ和服でしょ。
けど、和服、ないんだよなー。
魔王城にたどり着くまでの旅で、割といろいろなところを回ったけど、和服はなかった。
というか、日本の文化がそのものがない。
異世界なんだし当たり前だけど。
なんかDなら無理矢理エセ日本文化を立ち上げててもおかしくなさそうなもんだけど、なかった。
ないなら作るっきゃないな。
ふふふ。
我が糸に作れぬ服はなし!
どんな和服が似合うかなー?
あ、その前にバルトに話通しておかなきゃ。
とりあえず、鬼くんには普段私が使ってる部屋で待っててもらう。
服を取って来てくれた使用人に空き部屋の有無を聞いてみると、屋敷の大半は空き部屋だそうだ。
あー、まあ、めっちゃ広い割に人少ないもんね。
主のバルトはほとんど帰ってこないし。
鬼くんが住むのはスペース的に問題なし。
あとは屋敷の主にOK貰うだけ。
転移で魔王城に赴き、バルトが普段使っている執務室の扉をノックする。
私だって少しくらい常識がある。
いきなり部屋の中に転移することは、ないこともないけどあんまりやらないと言えなくもない。
「どうぞ」
入室の許可が出たので、扉を開ける。
仮にも魔族の頂点がいる魔王城だし、普通だったら扉の開け方にも気を使うんだろうけど、あいにくそんな細かいマナーまでは知らん。
できるだけ丁寧に、くらいの気持ちで扉を開ける。
どうせ口を開く羽目になったら口調とか口数とかどうしようもないところでマナー以前の問題になるんだし。
そんなことを考えながら開いた扉の先、そこにはお目当てのバルトが書類と格闘していた。
それはいい。
バルトが書類に埋もれて死にそうになっているのはいつものことだ。
けど、執務室にある応接テーブルで、その弟も一緒に書類に目を通していたのは予想外。
「なんの用だ?」
チンピラはガンを飛ばした!
蜘蛛は扉でガード!
「おい! 用件も言わずに帰ろうとするんじゃねえ!」
うえー。
なんでコイツいるの?
ぬかったわー。
転移してすぐ扉ノックしたから、気配の有無とか気にしてなかった。
いるってわかってたら時間ずらしたのに。
あー、メンドくせ。




