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249 鬼さんこちら

 ちょうどタイミングよく校外演習があるということで、吸血っ子をそれに参加させた。

 場所は低レベルの魔物が生息している、いわゆる初心者向けのレベル上げの狩場。

 この世界の魔物は危険度なるランク分けがされているようで、その狩場である森には危険度E程度の魔物しか出ないそうな。

 危険度Eというと、エルロー大迷宮にいた蛙相当。

 どうあがいても今の吸血っ子が苦戦するような相手じゃない。

 

 この危険度というものは、人族が初めに制定したものらしく、人族の冒険者六人がその魔物一体を相手にした際の目安となる危険度、らしい。

 どういうことかというと、危険度Bの魔物がいた場合、ランクBの冒険者六人で戦えば互角、といった具合だそうだ。

 つまり、冒険者のBランク=危険度Bの魔物、というわけではない。

 実際にはかける六倍の強さであるということだ。

 

 ただ、冒険者の最低ランクというのはDランクらしく、このランクなら誰でも気軽になることができる。

 なので、一般人でも登録さえしてしまえばその日からランクDの冒険者を名乗れるわけだ。

 そのため、ランクD以下は魔物の強さで、おおよそのランク付けをしたに過ぎない。

 なり立てホヤホヤのDランク冒険者と、ちゃんとした訓練を受けたDランク冒険者では、実力の幅が大きいからね。

 Dランクの冒険者の一部は、魔物と戦わずに薬草集めなんかをして生計を立ててるなんちゃって冒険者であることも多いので、あまりあてにはできないというのもある。

 まあ、そういうことを言い始めると、そのランクに昇格したての冒険者と、次のランクに昇格寸前の冒険者とでも実力に差があるだろうし、あくまで目安って話だね。


 実際に一人で魔物と戦う場合、その適正ランクは一つか二つ下げるのが普通。

 Bランクの冒険者だったらCランクの魔物とか。


 ちなみに、私の元の種族であるスモールレッサータラテクトは、危険度F。

 危険度F。

 危険度F!

 どんだけ弱いのかと。

 一般人でも勝てますって言ってるようなもんじゃん。


 閑話休題。

 森で狩りを続ける吸血っ子。

 その顔には不満の色がありありと見て取れる。

 どうも、魔物が弱すぎて手応えがないのがお気に召さないらしい。

 メラの話を聞いてはいたけど、吸血鬼の戦闘意欲というのは、蹂躙することではなく、対等以上の相手といい勝負がしたい、というものだそうだ。

 そう考えると、危険度Eクラスの魔物じゃ、今の吸血っ子の相手は務まらんわな。


 まあ、安心せよ。

 条件にピッタリ合う相手を用意してやったから。


 それとなく進路を誘導していたオーガくんが森にやってきた。

 鑑定が使えないので、今のオーガくんのステータスがどうなっているのかはわからない。

 というか、もうオーガくんって言うのは違うかも。


 進化してる。

 殺戮を繰り返したせいか、レベルが上がって進化したんだろうね。

 大柄だった体が小さくなり、今は人と同じ程度になっている。

 ただし、体は小さくなっても、纏う力の強さは大きくなっている。

 私の見立てでは、ほぼ吸血っ子と同じくらい。

 額に角が生えたその姿は、鬼と呼ぶべきもの。


 驚いたのは、鬼くんの顔だ。

 どっかで見覚えがあると思ったら、笹島くんだった。


 若葉姫色の記憶では、笹島くんは人族の学園にいる山田くんと大島くんと仲が良かったはず。

 よく三人で話していた記憶がある。

 鬼くんが転生者だっていうのはわかってたけど、誰だかは知らなかったからなー。

 山田くんも大島くんも笹島くんの行方は気にして、先生に何度か聞いてた。

 先生は、どうも笹島くんのことを知っていそうな感じだったけど、人族の領域で暴れてた頃にあたりでもつけてたのかな?

 エルフの里にいる転生者と、人族の学園にいる転生者を合わせて考えれば、逆算して誰かは見当がつくし。

 あ、そうだよねー。

 そう考えれば鬼くんが誰かは消去法でわかるじゃん。

 知らなかったっていうか、知る気がなかったんだなー、私。


 まあ、鬼くんの正体はどうでもいいか。

 気になるのは、どうして前世と同じ顔になってるのかってことかな。

 私もアラクネになったら若葉姫色の顔になったし、魔物は進化して人型に近づくと、自分のイメージしてる顔になるんかね?

 だとすれば、自分の顔として馴染みのある前世の顔になるのも納得だけど。


 吸血っ子は笹島くんの顔見てどう反応するかな?


 しませんでしたー。

 出会った瞬間から戦闘開始っすわ。

 転生者同士の感動の再会だっていうのに。

 

 あれ?

 吸血っ子気づいてない?

 それとも、気づいてて無視してる?

 うーん。

 気づいてない方に一票。

 気づいてるけど、こいつ強そうだしそんなの関係ねー!

 って、パターンも捨てきれないけど。


 まあ、いっか。

 目論見通りぶつかってくれたし。

 鬼くんには悪いけど、吸血っ子のストレス発散の相手になってくれ。

 そのあとは、勝敗に関係なく、眠らせてやるからさ。


 初手、先制は吸血っ子。

 ヒャッハー! 我慢できねえ!

 そんな声が聞こえてきそうな感じで突撃。

 吸血っ子、こんな立派な脳筋に育って……。


 大剣を鬼くんに叩きつける。

 鬼くんはそれを片手に持った刀で受け止めようとして、受けきれずにもう片手に持った刀も合わせて、ようやく受け止める。

 多分、片手で受け止めて、もう片方の刀でカウンターを狙ってたんだろうね。

 けど、予想以上に吸血っ子の攻撃が重くて、慌てて防御に全力を注いだと。


「ふ、ふふふ。止めた。私の攻撃を、止めた。ふふふ!」


 お、おおう。

 吸血っ子が危ない笑みを浮かべておりまする。


「これが、戦い!生まれて初めて!本気で戦うのは!」


 どんだけ溜まってたのかと。

 こいつはイっちゃってますわー。

 バトルジャンキーの称号があったら確実に取得してますわー。

 そんな称号ないけど。


 吸血っ子が魔法とスキルを発動させる。

 鬼くんもそれに合わせて身構える。

 私はそれをお菓子片手に観戦する。

 ふぁいとー。

 むしゃむしゃ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 娘の死闘を娯楽にすなw まぁ、いざとなれば蘇生とかできるんだろうけど
[一言] D「観戦する蜘蛛子を更に後ろから観戦」 冥「し・ご・と しよ?」
[気になる点] お菓子食べながら闘いを観戦…………やってることがDと同じだぁ(笑)
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