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234 嫉妬の鬼と憤怒の鬼

 一年程が過ぎた。

 この一年で随分と進捗した。

 

 エルフの里は完全な監視体制が出来上がりつつある。

 まさか、転生者をあんなに集めているとは思っていなかった。

 私が行動するよりもはるかに早く、エルフは転生者確保に乗り出していたことが分かる。

 それに、先生を利用していることも。

 いくらエルフが優秀な魔法使いを数多く有していようと、いろいろな裏組織と繋がりを持っていようと、これだけの数の転生者を集めるのは至難の業。

 支配者権限という例外を除けば。

 ポティマスが支配者権限を使うとは思えないので、先生が何らかの支配者スキルを獲得し、スキル検索で転生者の位置を割り出しているんだと思う。

 その情報を頼りに、エルフは転生者を集めていた、と。


 エルフが転生者を集める理由は、なんとなくだけど推測できる。

 エルフは転生者を飼い殺しにして、育たないようにしたいんだと思う。

 もともと大量のスキルポイントを持って生まれる転生者は、チートクラスに育つ可能性がある。

 それを、エルフは良しとはしないんだと思う。

 敵になりうる芽をあらかじめ摘んでおく。

 即殺さないのは先生を利用するための餌代わりか、それともなければDの真意が見えなくて殺すことをためらっているか。

 あるいは、黒の脅しがある程度きいているのか。

 そこらへんは想像の域を出ない。


 私は転生者確保の段階で大きく遅れを取った。

 現在手元にいる転生者は吸血っ子だけ。

 どうもそれらしき人物には目星をつけることができたけど、残っているのは王族とかの身分の高い子か、神言教が保護してるかで手出しがしにくい。

 同じことがエルフにも言えるらしく、それとなく監視は付けているものの、直接接触するのは避けているっぽい。

 変わり種では傭兵団の中にもいて、絶賛魔族軍と衝突中の転生者っぽいのもいる。

 一応その子供が死なないように、分体とちょうどそこに派遣されているメラに見張らせている。


 あと気になるのは、最近現れたというオーガ。

 まだ噂でしか聞いてなくて、実物を見たことはないけど、通常の個体では考えられないような特異な能力を持っているらしい。

 曰く、発光すると完全回復する。

 曰く、急激に戦闘能力が上昇する。

 曰く、魔剣を複数所持している。

 

 最初の完全回復、これ、レベルアップ回復じゃね?

 二つ目、これも心当たりがある。

 システムの憤怒のロックが外れていた。

 これは、誰かが憤怒を取得したということ。

 憤怒はステータスを爆上げしてくれる代わりに、ドンドン神性領域がガリガリ削れていくという、やばすぎるデメリットがある。

 こんな地雷スキル取るアホ、というか、取れるスペックを持ったアホなんて転生者しか考えられない。

 支配者スキルはそれくらい取るのが難しい。

 けど、転生者なら有り余るスキルポイントで強引に取得することもできそう。

 なんだってこんな地雷スキル取ったのかは不明だけど。

 そんでもって、最後の魔剣。

 魔剣を作るスキルとか、転生者なら持っててもおかしくない。


 というわけで、そのオーガが転生者である可能性は非常に高い。

 それなら接触してみないとね。

 で、分体を派遣してみたんだけど、残念ながら発見することはできなかった。

 どうも、一足先に帝国の騎士団がオーガの討伐に乗り出していたらしい。

 しかも、弟子志望の魔法使いが率いる連中。

 前に会った時は爺一歩手前って感じだったけど、今はもう立派な爺だった。


 その爺、後一歩のところまでオーガを追い詰めたんだけど、すんでのところで逃げられたらしい。

 脳天魔法で貫いたところから、例の全回復でしのがれて、逃走を許してしまったそうだ。

 あっぶな。

 それ、死ぬって。

 もし私の予想通り、その全回復が転生者特有のレベルアップによるものなら、オーガくん随分危ない橋を渡ったことになるなー。

 瀕死の時にタイミングよくレベルアップするなんて、リアルラック高いわ。

 そのラックを少し分けて欲しい。


 しかし、死にかけて生存本能を刺激されたせいか、逃走の時に憤怒を使ったっぽい。

 まずいな。

 調査した限りだと、オーガくん、結構な頻度で憤怒を使ってる。

 理性を失うのも時間の問題かも。

 できればそうなる前に確保しときたいところだけど、見つかるかな?

 分体にあたりを捜索させる。


 オーガくんを追っかけるのと同時に、私はちょっとした問題を抱えていた。

 吸血っ子である。

 ノリで育てちゃったけど、私がやろうとしてる事を思えば、スキルなんか取らせちゃダメだったんだよねー。

 このままでは私の計画で吸血っ子死ぬんじゃね?

 育てて殺すとかどうなのよ?

 何か対策を考えて、吸血っ子を生かす方法を編み出さないといけない。


 という問題に、さらに吸血っ子自身が問題を積み上げやがった。

 憤怒とほぼ同時に、嫉妬のロックが外れた。

 犯人は、身近にいた。

 ああ、分体がバッチシ試し撃ちでスキル使うところ目撃しましたとも。

 吸血っ子、あいつ嫉妬のスキル取りやがった!


 アホなの? バカなの? 死ぬの?

 イヤ、マジで。

 支配者スキルとか取っちゃいけないスキルの筆頭、なんで取っちゃうかなー。

 過去に複数所持してた私が言うことじゃないけど。


 支配者スキル、それは、ぶっ壊れ性能の超強力スキルであると同時に、所持者を問答無用で蝕む地雷スキルでもある。

 私はまだ良かった。

 外道無効持ってたしね。

 支配者スキルの精神汚染にそこまで影響を受けなかった。

 けど、吸血っ子はそうもいかない。

 このままでは吸血っ子が嫉妬狂いになってしまう!


 とりあえず、対処療法としてスキルの使用を禁止しよう。

 それで、被害を最小に抑えられるはず。

 なんでまたこんなスキル取ったのかも聞かなきゃならないし、一度会って話をしとくべきかなー。

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― 新着の感想 ―
[一言] いや白たんあーたの今やってる事て禁忌カンストに精神汚染されてるからだよね?(汁 結局何をそこまでマヂになっちゃってんのかゼンゼンわかんないけど、もしかしたら知ってしまうと精神汚染されます? …
[気になる点] 支配者スキル取ってる転生者って、望んで取ったんじゃなくて、偶然とか無意識に取得してる印象 蜘蛛子が特殊過ぎるんじゃ [一言] リアルラックならお前も大概だよ
[一言] テーマって異世界に放り込まれて自分らしく生きるとどうなるかって事じゃないかな 説教臭いアニメやドラマよりはいいと思う
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