表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
362/600

233 腹黒どもの胃液

 アーグナーを屈服させることに成功した。

 とはいえ、なんかまだ腹に一物抱えてそうなので、油断はできない。

 ここでサクッと殺ってしまうのも一つの手だけど、せっかくエルフに内通している魔王軍の将軍なんて、美味しい立場に居るんだから、せいぜい馬車馬のごとく働いてもらおう。

 

 具体的にはエルフの情報を探らせ、逆に魔王軍の都合のいいようにエルフに情報を流す。

 前者はあんまり期待しない。

 アーグナーに探らせるよりも、私が探ったほうが絶対に多くの情報を集めることができる。

 重要なのは、後者。

 エルフに偽情報や、本当だけど流しても問題ないクズ情報を握らせ、その行動をある程度制御したい。

 それが成功すれば、罠にはめることもできるだろうし。

 あんまりやりすぎると相手に不信感を与えちゃうから、そこらへんの匙加減はアーグナーに任せよう。


 私はアーグナーに軽くそんな説明をし(丸一日以上の時間がかかった)、分体をこれみよがしに配置してから転移で帰った。

 疲れた。

 主に精神的に。

 もうなんか、人を使うのってメンドイ。

 全部私一人でやったほうがよくね、とか思っちゃう。

 どうして人と人は分かり合えないんだろう?

 教えて、神様。

 ただしD、てめーはダメだ。


 休んでいたいけど、そうも言ってられない。

 本体がアーグナーと接触してる間に、分体の方で色々と動きがあった。

 その確認と対策を考えなきゃならない。


 まず、エルロー大迷宮組。

 反対側の入口に到着し、いよいよダズトルディア大陸への侵入を開始した。

 予想通りというべきか、入口には砦のようなものが建っていて、人族が見張りについていた。

 その目を盗んでの侵入になるから、一斉にではなく、一匹ずつ見つからないように慎重に行く必要がある。

 蜘蛛渋滞発生中。

 抜けたやつから随時ダズトルディア大陸の探索を開始しているけど、この分だと本格的に行動に移るのはまだ先になりそう。


 次に、人族領組。

 人族領組の活動方針を、転生者の探索からエルフの監視に変更。

 街での情報収集は継続して行っていくけど、それ以外ではエルフを探し出し、監視する方向にシフトしていく。

 流石にこの短期間で発見できたエルフの数は少ない。

 こちらも焦らずに長い目で見ていく必要がある。


 魔族領。

 アーグナーは済んだ。

 あとは、残りの軍団長やその他の有力者の監視を強化する。

 今のところエルフと繋がりがあるのは、今回粛清したワーキスとアーグナーのみ。

 ワーキスの領土はチンピラがしばらく仮統治するようだ。

 順当に行けばチンピラが繰り上げで軍団長に就任し、ワーキスの後釜に付くんじゃないかと思う。


 先生。

 あのあと、他のエルフの部隊と合流し、無事保護された。

 監視は怠らない。

 もし先生に妙なことをしようものなら、ただじゃ済まさない。


 吸血っ子。

 学園でいろいろやらかしてる。

 イヤー、君ね。

 もうスペック的にはそんじょそこらの精鋭魔族でも片手でひねられるくらいなんだから、そんな本気出したら周りのガキども死んじゃうよ?

 何してんだか。


 そして、一番重要なのが、エルフの里。

 見張り三人に飲み込ませた卵は無事孵化した。

 予定通り、結界の中に入ったところで孵化。

 まんまと結界の中に侵入することに成功した。

 

 夜中に寝ている間に口の中からこんばんは。

 胃液1!

 胃液2!

 胃液3!

 三匹合わせて、胃液シスターズ!

 とう!


 あー、くっさ。

 ないわー。

 これ、やられた方もイヤだろうけど、私もイヤだわ。

 二度とやらん。


 とりあえず、三匹だけじゃ出来ることなんか限られてくるので、しばらくは中で潜伏しつつ、数を増やすのに勤しむ。

 幸いエルフの里はかなりだだっ広い。

 居住区っぽいところ以外に、ただの森っぽいエリアも広がっている。 

 食うものには困らんでしょう。

 最悪本体からエネルギーを供給してもいいし。

 

 ただ、結界が邪魔してエネルギーの伝達効率は大幅に落ちそう。

 若干だけど、本体との繋がりも阻害されている。

 完全に切れることはないだろうけど、時差みたいな感じで入ってくる情報が遅い。

 本体の認識だと、もうちょっと前に孵化しててもおかしくないはずなのに、今孵化した情報が来たのがそのいい証拠。

 

 実時間で孵化したのは、おそらく半日以上前。

 なんとかこの認識のズレを修正したいところだけど、結界が作動してるうちは厳しいか。

 あんまりやりたくはないけど、結界内の分体にはある程度の自我を持たせたほうがいいか。

 今までの遠隔操作タイプだと、緊急事態が発生した際に、時差のせいで対応が全くできない可能性がある。

 もしそうなったら、芋ずる式に結界内の分体が全滅することもあり得る。

 そうならないためにも、ある程度自己判断できる能力を付加しておいたほうがいいか。


 そういうわけで、随分久しぶりだけど意思を分割する。

 それを結界内の分体に注入。

 この作業でも結界が邪魔をして、かなりの時間がかかった。

 その上無駄にエネルギーを消費した。

 けど、あとは結界内でどうにかしてくれるはずだ。

 頼んだぞ、胃液シスターズ!


 さて、下界についてはこんなもんか。

 全体的に対エルフに戦力を傾ける方向で進めている。

 エルフは潰す。

 これは決定事項。


 そして、その前から進めている作業も同時に並行する。

 考えてみれば、それは先生を裏切る行為になるのかもしれない。

 転生者を救おうと活動している先生。

 対して私は、転生者を殺すかもしれない立場。

 転生者だけじゃない。

 人族だろうが魔族だろうがエルフだろうが魔物だろうが。

 等しくこれまでにない規模での大虐殺になるだろう。

 転生者も、きっと何人かは巻き込まれる。


 スキルを奪う。

 私が目指すそれは、スキルを多く持てば持つほど、死ぬ確率が上がるのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
シュンたちの死因かよ、、。
[気になる点] いやだからなんでわざわざ自らドツボに(汁←胃液 服に仕込むとかでいいじゃんと。 あとやっぱスキル悪なの?
[一言] 胃液シスターズw 嗅覚はオフにできないのか、それとも精神的な嫌悪感か
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ