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229 腹黒

 さーて。

 チンピラに認めてもらって、三食ガッツリ食べる権利をもぎ取った。

 これでなんの憂いもなくダラダラ、もとい、自分の仕事に専念できるというもの。


 分体のうち、エルロー大迷宮踏破組はそろそろ反対側の入口につきそう。

 ただ、人族の出入りがそこそこあるので、目立たないように一匹一匹見つからないように慎重に出さないといけなさそう。

 むしろ大迷宮を踏破するよりもそっちに時間がかかりそうだわ。

 ちなみに、ベイビーズはもう元の住処への帰還を始めている。

 仮死状態のクイーンを護衛してるベイビーズと合流させて、しばらくは迷宮内で好きにさせようと思う。

 あいつらは分体と違って、既に私から独立した個を形成してるし、ある程度自由を認めてあげないとね。


 あとは、魔族領での情報収集担当。

 チンピラに横流ししたように、第七軍が不穏な動きをしている。

 チンピラが対処に当たるようだけど、万が一に備えて裏から協力してやろう。

 今魔族の足並みが乱れるのはよろしくないし。


 それに、この件に裏で関わっているやつらを締め出さなければならない。

 第七軍の軍団長ワーキスを唆し、クーデターを起こさせたやつらをね。


 私は第七軍の監視を行っている分体の一匹に繋げる。

 そこには、ワーキスと覆面の男。

 第七軍が駐屯する街の領主館、その最奥の部屋だった。


「武器の搬入がもう少しで済む。これで準備もかなり整ったな」


 ザ・悪役です、という顔の男が覆面の男に話しかける。

 わかりやすいくらいのやられ役三下。

 もう、なんか見た目から強欲そうな顔してるし、魔王の座に興味あるかー、とか持ちかけられてコロッと騙された情景が目に浮かぶようだわ。

 三下、もといワーキス第七軍団長は、これまたわかりやすい悪役仕草でタバコをふかしている。


「君には感謝している。君のおかげで早期に動くことができそうだからな」

「利害の一致というものだ。感謝されるいわれはない」


 覆面の男は淡々と答える。

 こいつだ。

 こいつがこのクーデターの真の主犯。

 第七軍に武器などの補給を行い、情報をコントロールしてお膳立てした張本人。


 ぶっちゃけ、このクーデターは失敗することが確定した茶番だ。

 第七軍だけで行動を起こすなんて先のことを見据えていない愚挙。

 短期決戦を想定してるんだろうけど、行軍による疲労を抱えたまま、無傷の第四軍を相手に不利な攻城戦を仕掛けないといけない。

 時間をかければ援軍が他の都市から駆けつけて鎮圧されるし、そうでなくても勝てる確率は低い。

 仮に万事うまく行ったとしても、魔王の力は一個で一軍を軽く蹴散らせる。

 初めから第七軍に勝ちの目なんてない。


 それでも、私がこの情報をチンピラにリークしたのは、この覆面の男の存在があったからだ。

 こいつは臭い。

 分体を使って監視をしているけど、いつも途中でまかれてしまう。

 私の分体の目を誤魔化すことなんかできるはずもないので、空間魔法で逃げているんだと思う。


 空間魔法が使えるやつは限られるはず。

 多分この世界では数えるくらいしか空間魔法のスキル持ちはいない。

 それくらい空間魔術は難しい。

 いくらシステムの補助があろうと、そう簡単に会得できるものじゃない。

 私が知ってる空間魔法の使い手は、魔王と弟子志願のあの魔法使いくらい。

 魔王は空間魔法のスキルは持っていたけど、スキルレベルが低かったので大したことはできない。

 なので、私が知ってる空間魔法の使い手はあの魔法使いだけということになる。

 それくらい希少なんだ。

 私自身がバンバン使ってたからそういう認識はあんまなかったけど。

 ついでに言えば黒もバンバン使ってたし。


 その空間魔法を使えるって時点で警戒するには十分。

 加えて言えば目的がわからない。

 監視を続けていると、この覆面の男が三下に与えた情報の中に、魔王の存在があった。

 というか、このクーデターは魔王を亡き者にするための準備のようだ。


 なんでそんなことをするのかわからない。

 けど、重要なのは、まだ一部の人間しか知らないはずの魔王の存在を、この覆面の男が知っているということ。

 私の監視の目を掻い潜って、魔王の存在を暴いたその手腕。

 魔王領についてから、私は分体による監視体制を完璧にしてきた。

 魔王領に不審な人物がいれば、私が見逃さない。

 となれば、魔王の存在を外から知ったことになる。

 どうやって?


 答えは、おそらく魔王領につく前、旅の最中から監視されていたと考えるのが妥当。

 だとするならば、覆面の男の正体もわかる。

 エルフだ。


 思えば吸血っ子を助けた時から、エルフのリーダー格のポなんとかは魔王のことを知っていた。

 魔王の力を思えば、コソコソ動き回ってる連中が監視の一つのつけておいても不思議じゃない。

 それが、まさか私でも気づかないレベルだとは思わなかったけど。

 ずっと監視されていたのなら納得がいく。


 多分、エルフは魔王のことを魔王だと認識してたわけじゃなく、最古の神獣として監視してたんでしょう。

 それが、魔王領に到着して、最古の神獣が魔王になったという仮説を立てた。

 そして、その存在を邪魔に思い、第七軍を唆して亡きものにしようと画策した。


 これで一応の筋道は説明できる。

 けど、わからないこともある。

 魔王を最古の神獣と理解してるなら、その力も知ってるはず。

 第七軍をぶつけようと、魔王を殺せるとは思えない。

 何か別の狙いがあるのか。

 はたまた、魔王を倒すための秘密兵器でもあるのか。


 どっちにしても、油断はできない。

 なので、チンピラに先に行動してもらって、出鼻をくじく作戦に出た。

 先制攻撃で一発。

 これで相手の出方を見る。

 エルフのリーダーは殺しても死なない、私の卵復活みたいなことをするそうだし、始末してもあんまり効果はなさそう。

 なら、相手の目論見を全部引き出した上で、叩き潰す。

 シンプルで分かりやすいっしょ。

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