鬼7 幻想武器錬成
MPの続く限り武器を錬成する日々を送っていたおかげで、僕の武器錬成のスキルレベルが10に到達した。
それと同時に武器錬成のスキルが上位のスキルへと進化を果たした。
そのスキルの名前は、幻想武器錬成。
幻想武器と名が付くことから予想できるように、このスキルの効果は錬成した武器に特殊な効果を付与できるというものだ。
ただし、付与できる効果は決まっていて、レベル1で僕ができるのは、5つの効果の中から1つだけを付与するというものだった。
その効果は、加護、属性攻撃追加、状態異常攻撃追加、自動修復、自動回復、の5つ。
加護は装備者の防御力を高めるというもの。
ある程度なら属性や状態異常に対する耐性を高めてくれる。
MPやSPを消費しない常時発動タイプだけど、その分効果は低め。
属性攻撃追加は名前のとおり武器に属性攻撃を発動させる効果を付与することができる。
常時属性が追加されているわけではなく、任意で発動させるタイプのもので、発動には装備者のMPを消費する。
状態異常攻撃追加も属性攻撃追加とほぼ似たような効果で、違いがあるとすれば消費するのがSPだということくらい。
自動修復は武器が時間経過で減った耐久度を自動で回復してくれるというもの。
MPやSPの消費はなし。
地味だけどずっと同じ愛用の武器を使いたい人には向いている。
最後の自動回復は、スキルのHP自動回復とMP回復速度を合わせたような効果だ。
SPは回復しないけど、逆に言えば消費もしない。
スキルと比べると効果も劣るけど、スキルとの重複が可能なので、その分回復速度が早くなる。
幻想と呼ぶにはいささか地味なように見える効果だけど、その力は侮れない。
単純な攻撃力の上乗せなら属性攻撃追加か状態異常攻撃追加。
防御力を高めたいのなら加護。
継戦能力や魔法によるMPの確保が目的なら自動回復。
武器の保全を考えるなら自動修復。
それぞれ単純であるがゆえに使い道も幅広い。
ただ、問題がある。
この特殊効果付与は、MPを消費して行う。
効果の高さは消費したMPの量に依存し、MPを多く使ったほうがより良い効果になる。
ここで重要なのは、特殊効果を付与する武器もまた、その時にMPを消費して錬成しているということだ。
特殊効果の付与は錬成した瞬間でないとできない。
錬成して、後から特殊効果を付与することはできないのだ。
そのため、特殊効果を付与するためには、武器を錬成した余りのMPを使わなければならないということだ。
僕のMPには限りがある。
今までは最高の武器を作るために武器錬成にすべてのMPを注げばそれでよかった。
けど、特殊効果を付与するとなるとそうもいかない。
僕のMPが有限である以上、武器の質を落として特殊効果を付与するか、武器の質を高めて特殊効果を諦めるか低い効果で我慢するか。
そのどちらかを選ばなければならない。
だいぶ増えたとはいえ、僕のMPの量では、両方を満足な出来に仕上げることはできない。
僕はゴブリンシャーマンに進化していた。
魔物使いの男、ブイリムスの手によるパワーレベリングの成果だ。
ブイリムスは魔物を従えて戻ってきて、その魔物を僕に殺させているのだ。
従えられた魔物は僕が攻撃しても反撃ができない。
そして、死ぬまで僕に攻撃され続けるのだ。
この方法で僕は安全に格上の魔物を倒すことができ、レベルを上げることができた。
レベル10になって進化条件を満たすと、ブイリムスは僕にシャーマンに進化するように命令してきた。
目的は、MPの上昇。
シャーマンは魔法関連のステータスの伸びがよく、MPの伸びも他の進化先に比べると良かった。
武器錬成のMPを確保させるためにも、シャーマン以外の選択肢はなかったんだろう。
武器錬成によって作られる武器の性能は、その時に込められたMPの量で上がっていく。
僕のMPがあればあるほど、いい武器ができる。
そこに上限はなく、それゆえに武器の質か、特殊効果か、どちらかを選ばなければならないという事態になっているわけだ。
まあ、僕は注文された武器を作るだけだ。
奴らが使う武器の出来などこだわらない。
どうせなら付与にマイナス効果でもあれば付けてやりたいくらいなのだから。
シャーマンに進化し、レベルも上がったことから僕の戦闘能力は上がった。
ステータスも伸びたし、スキルも鍛えられるときに鍛えている。
けど、未だブイリムスの手から逃れられるチャンスは来ない。
奴らの言葉も覚えた。
これは比較的楽だった。
もともと1からゴブリンの言葉を覚えた経験が生きたし、何よりブイリムスの命令は言っている言葉はわからないけど、意味はわかる。
そこから言葉の意味を理解して覚えていくのに、そう時間はかからなかった。
まだわからない単語も多いので、完璧に覚えたとは言い難いけど。
けど、最初は「ブイリムス」という人名と、「隊長」という言葉のどちらが名前なのかわからないくらいだったのだから、かなり上達はしたはずだ。
言葉を覚えた僕は奴らの会話を盗み聞いて、情報を集める。
その中に、何かこの状況を脱するきっかけがあればいい。
この頃気になるのは、どうにもブイリムスは何か焦っているようだということ。
ブイリムスは帝国とかいう大きな国の、それなりに地位のある将軍だったらしいけど、何か大きなミスをしてここに左遷させられてきたらしい。
奴はどうにかして手柄を立てて、早く本国に戻りたいようだ。
奴が焦って本国に戻りたい理由。
以前やらかしたミス。
この状況を脱するのには関係ないことかもしれないけど、ブイリムスの弱みには繋がるかもしれない。
情報収集を続けよう。