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血17 金の魔王

 街に着くと、真っ先に宿屋に直行した。

 流石に街の中では私はメラゾフィスに抱き抱えられている。

 自走する赤ん坊とかいくらファンタジーな世界でも異様すぎるでしょう。

 まあ、それでなくても目立つ集団ではあったけど。


 まずメラゾフィスは全身真っ白な格好で青白い顔をしているので、幽鬼か何かのようにしか見えない。

 実際吸血鬼だから当たらずとも遠からずなんだけど。

 そんなメラゾフィスが赤ん坊である私を抱いている。

 この時点でもういろいろアウトな感じ。


 そんな子持ちと一緒にいるのは、美少女2人。

 特に白織へと注がれる男の視線が半端ない。

 まあな!

 こいつこんなでも前世から男子の目をかっさらっていってたからな。

 

 こいつのせいで共学だっていうのにくっつく男女の数が少なかったっていう弊害まで出てたからな。

 なんでかっていうと、身近にそんな高嶺の花がいると、ちょっとだけでも男子は期待してしまうから。

 もしかしたら、なーんて甘い期待を持ってしまうバカが多かったのよ。

 そうでなくてもどうしても比べちゃうのよね。

 おかげで付き合いだしたけどすぐ破局なんてかわいそうなカップルもいたっけ。

 うちのクラスにも意中の人がこいつに淡い恋心を抱いていて見向きもされなかったっていう、哀れな被害者がいた。

 尤も、そいつはその後陰口やら些細な嫌がらせとかをして、加害者の方に回ってたから同情するに値しないけど。


 生まれ変わっても男を狂わせる美貌は健在。

 しかも、目を閉じているから神秘的な雰囲気を醸し出してるのも、視線を集めるのに拍車をかけている。

 私もここ何日かずっと一緒にいるけど、未だに目を開けたところ見たことないんだけど、どうしていつも閉じてるのかしら?

 気になるけど、聞いても絶対答えてくれないし。


 好奇の視線に耐えながら宿屋に到着。

 私の母親はどっちの少女なんだとかいう会話が聞こえてきたときはどうしようかと思った。

 どっちも違うから。

 アリエルさんも白織もどう見ても10代でしょうが。

 あ、でもこの世界だと10代で子持ちとかいても不思議じゃないのかな?

 

 宿屋の代金はアリエルさんが払った。

 コイン1枚だけ受付の人に渡して。

 1枚で足りるの?

 と、疑問に思ったけど、受付の人はものすごく慌てていた。


「お釣りはいらないよー」


 という言葉を聞くに、どうやらあのコインは相当価値の高いものだったようだ。

 けど、宿屋の人の慌てぶりとアリエルさんの態度から、あのコインはアレイウス金貨なんじゃないかしら?

 目を凝らしてよく見てみると、書物を掲げる人物の絵柄。

 あの絵柄はアレイウス金貨だ。

 実物を見るのは初めてだけど、書斎で挿絵付きの本を読んだことがあるので間違いない。


 この世界では紙幣は発達してなくて、主に硬貨が貨幣として用いられている。

 その中で流通しているのは、さっき言ったアレイウス硬貨と、帝国が発行しているレングザント硬貨、女神教が発行しているサリエーラ硬貨、ダズトルディア大陸で広く普及しているオクト硬貨、この4種類が一般的には多く使われている。

 その他にもマイナーな貨幣はあるけれど、その貨幣が使われていない地域ではまず使えない。

 例外で魔族硬貨や古代硬貨なんかは高値で取引されたりするけど、それを普段使う人はまずいない。

 さっき挙げた4種類にしても、地域が変われば使えないこともあるし、価値が著しく下がる場合もある。


 オクト硬貨はこのカサナガラ大陸ではあんまり価値がない。

 大きな街などに行くと適正価格で換金出来るけれど、小さな村だと使えないことのほうが多い。

 逆に、レングザント硬貨はこっちでは価値が高いけど、ダズトルディア大陸では価値が下がるらしい。

 サリエーラ硬貨なんか、女神教の地域でしか使えないし、この前の敗戦を受けて価値が暴落していてもおかしくない。


 そんな硬貨の中で、アレイウス硬貨は最も広く普及しており、それだけ価値も高い。

 単純に硬貨といった場合、アレイウス硬貨を指すことが多い。

 その訳はアレイウス硬貨が神言教が発行している硬貨だからだ。

 

 神言教は人族の広く普及されている。

 その分この硬貨も広く普及し、ほとんどの国で使うことができる。

 それだけ他の硬貨よりも価値が高くなる。

 アレイウス金貨ともなれば、1枚だけで宿くらい泊まり放題となる。

 料金表を見ると、1泊1レングザント銀貨となっていた。

 レングザント銀貨は100で金貨1枚。

 レングザント金貨とアレイウス金貨の相場は、およそ10倍。

 つまり、この宿に約1000泊できる額を支払ったことになる。


 汗をダラダラ流しながら恭しく頭を下げる宿屋の人の姿を見てると、金貨を持った手がものすごい勢いでブルブル震えていた。

 自称魔王なこの人、普段のおちゃらけた態度からは想像できないけど、冗談抜きですごい人なのよね。


 ちなみに、私たちのこの街での滞在予定日数は2、3日。

 宿屋ボロ儲け。

 というか、アリエルさん気前良すぎじゃない?

 お財布の中身は大丈夫なのかしら?


「大丈夫大丈夫。あんな端金くらいどうってことないよ」


 私の不安を感じ取ったのか、若干ドヤ顔でそう言ってのけた。

 私ってそんなに顔に出てるのかしら?

 というか、端金ですか。

 アリエルさんの総資産がどれだけあるのか、聞いてみたい気もするけど、聞くのが怖い気もするわ。

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