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血16 道中

 やっと、やっと人のいるところに着いた。

 ここまで長かった。

 ここまで苦しかった。

 ここまで辛かった。

 ようやく一息つける。


 ここまでの道のりは本当に険しかった。

 ええ、道のない森の中を延々歩いて、人の背丈を超える高さの草が生えた草原を突っ切り、やっとまともな道にたどり着いたと思ったら急激にペースアップして。

 この歳で過労で死ぬんじゃないかと本気で思ったわ。


 森の中で白織に魔闘法というスキルを覚えさせられていなかったら、ここまでたどり着けなかったでしょうね。

 MPを消費して身体能力を強化する魔闘法。

 それを白織は私に強制的に覚えさせた。

 朝、いきなり手を繋いできたかと思うと、勝手に私の魔力を操作して、魔闘法を発動させたのだ。

 

「そのまま、維持」


 手を離されると、魔闘法はすぐ解除されそうになったので、慌てて言われるがままに維持しようと奮戦した。

 結果、私は魔闘法のスキルを得ることができた。


 おかげで道中の移動が幾分か楽になった。

 尤も、魔闘法はMPを消費するので常時使いっぱなしというわけにもいかない上に、魔闘法を使ってる間はペースを上げられていたので、あんまり楽になったような気はしなかったけど。


 それにしても、他人の魔力を操作するなんて、どれだけ魔力操作のスキルレベルが高いのかしら?

 少なくとも私には他人の魔力の操作なんてできないから、私よりもスキルレベルが高いことは確実。

 まさかとは思うけど、スキルレベルカンストなんてしてないわよね?

 まさかね。


 草原では背の高い草があたり一面びっしり生えていて、それを手で掻き分けながら進まなければならなかった。

 もう少しまともなルートはなかったのかと思うけど、森の中でも道なき道を行っていたし、人が来ないようなところをあえて進んでいたのかもしれない。


 草を掻き分けるのは結構力が必要で、いつの間にか「強力」なんてスキルが身についていた。

 しかも、硬い草を素手で触っていたせいで、あちこちに切り傷が出来て、HP自動回復で治るというのを繰り返していた。

 おかげで「生命」「堅固」なんてスキルも手に入り、HP自動回復のスキルレベルも上昇した。


 そして相変わらず食事は毒入り。

 しかも日々毒の強さが強くなっていくという。

 食材が普通なのが唯一の救いで、ものすごく苦いけど食べられないことはない。

 何度かその毒入りメニューを食べていると、「悪食」なる称号をもらってしまった。


 称号というのは特定の行動を取ることによって得られるらしい。

 ただでスキルがもらえる上に、称号自体にも特殊な効果があるものが多いので、取っておいて損はないそうだ。

 でも、悪食って、響きが悪いわ。


 悪食でもらったスキルは「毒耐性」と「腐蝕耐性」。

 毒耐性の方はもともと私が持っていた状態異常耐性に統合された。

 白織曰く、重要なのは腐蝕耐性の方らしい。

 いつも無口なくせに、この時は結構饒舌に腐蝕属性の恐ろしさを語っていた。

 なんでも死を司る属性らしく、その属性が付与された攻撃を受けると、体が塵になって消滅するらしい。

 しかも、耐性がないと攻撃した側にすらダメージを及ぼす危険な属性なんだとか。

 あんまりにも威力が高すぎるせいで、なかなか耐性を上げることもできない属性なので、その耐性をもらえる悪食の称号は貴重なんだとか。

 ちなみに、悪食の称号自体の効果は腹を壊しにくくなる、というものらしい。

 地味に有効。


 当然のごとく、私と同じ食事を取り続けていたメラゾフィスも悪食の称号をもらった。

 メラゾフィスも私と同じ行動を取っているので、私と同じようにスキルが上がっているそうだ。

 ただ、赤ん坊の私と違って、大人であるメラゾフィスはその分余裕があるせいか、私より上がり方は緩やかなようだ。

 

 メラゾフィスは食事のたびに白織から渡されたあの赤い液体を飲んでいる。

 中身はエルフの血だ。

 初日に白織が食べ、よそう、これ以上は気分が悪くなる。

 とにかく、私と違ってメラゾフィスは定期的に血を摂取する必要がある。

 血ならなんでもいいそうだ。

 なので、エルフの血がなくなった際は、適当に魔物でも狩ってその血を飲めばいいとアリエルさんは提案していた。

 けど、メラゾフィスは血を飲むことにやっぱり抵抗があるらしく、ちびちびとしか飲まなかったのでなくなることはなかった。


 ただ、血を飲んだ量が少なかったせいか、メラゾフィスは日に日に青白さを増していった。

 私が聞いても「大丈夫です」としか言わなかったけど、弱ってきているのは明白だった。

 かと言って、私は血を飲めと強制することはできない。

 同じ吸血鬼でも血を飲む必要がない私は、メラゾフィスの血しか飲んだことがない。

 飲もうとも思わない。

 そんな私が飲めと言っても説得力がない。

 同じ苦しみを味わったのなら、言う権利もあるだろうけど、それはつまり私も血を飲まなきゃならないわけで。

 私にはその覚悟がなかった。

 だから、メラゾフィスが本格的に倒れる前に街についたのは僥倖だった。


 ついでに、街道に出てからは走らされた。

 もちろん人目のないとき限定だけど。

 「疾走」のスキルが手に入った。

 魔闘法のスキルレベルも上がり、魔闘法を使い続けたおかげか、魔力感知と魔力操作のスキルレベルが上がり、魔量とMP消費緩和とMP回復速度のスキルを新たに取得した。


 ここまで来ると流石に私も白織の狙いが見えてきた。

 白織は私にスキルを増やさせようとしているんだと思う。

 何のためかはよくわからないけど、自衛の手段を増やさせるためなのかな?

 だとしたら、感謝しなければならない。

 ならないんだけど、ここまでの辛い道のりを思うと、素直にそういうことはできない。

 とりあえず地獄のような旅路をしてきた今、言いたいことは1つ。

 今日はゆっくり休ませて。

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[一言] ほんっと…なんだかんだで気にかけてるよねえ若葉姫いr  ε=ε=白「#####」     ε=ε=ε=┏(・_・)┛きっと前世から気にかけてはいたけど話せなかったんだろうね若葉h(殴
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