表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
304/600

鬼5 踏みにじられたもの

※残酷な描写、胸糞展開があります。苦手な方は戻ることをお勧めします。













それでもいいという方はお進みください。

 狩りに出かけるゴブリン達の武器を一通り揃えても、僕が武器錬成をやめることはなかった。

 まず武器錬成で生み出された武器は耐久値が0になると壊れて消えてしまう。

 耐久値は使うごとに少しずつではあるけど、徐々に減っていってしまう。

 今までろくな武器を使ったことがなかったゴブリン達の戦い方は、力任せな部分が多いので、耐久値の減りも多かった。

 なので、耐久値が減ってきたら新しい物に交換する必要がある。

 一応僕なら耐久値を回復させることもできるけど、それだったら新しい武器を錬成したほうが効率が良かった。


 武器の次は農具や生活用品。

 いろいろと試していく中で、武器?と疑問に思うようなものも錬成できてしまうことがあった。

 鎌はまあ刃物が付いてるし鎖鎌なんて武器もあるから錬成できたのは納得できる。

 けど、シャベルはどうなんだろう?

 戦場では銃よりも人の命を奪ったなんて話もあるから、あながち間違いじゃないのかな?

 けど、バールは絶対ウケ狙いだと思う。


 そうして錬成をしていけば、スキルレベルも上がっていく。

 当然スキルレベルが上がればよりいいものを錬成できるようになるので、古いものと交換していく。

 そうやって新しい物を作っているうちにまたスキルレベルが上がって。

 こんなふうに正の連鎖が起きていた。


 狩りに出るゴブリン達の生還率もだいぶ上がった。

 行動できる範囲も広がって、持って帰ってくる食料も多くなった。

 そのおかげで餓死者も減った。

 農具が出来たおかげで畑の規模も広がった。


 内政チートなんてだいそれたものじゃないけど、村は徐々に良くなっていっている。

 それに貢献できている。

 嬉しかった。

 無心に錬成し続けた。





 終わりが呆気なく訪れるとも知らないで。





 その日も僕は専用の小屋で錬成を続けていた。

 僕が集中して作業できるようにと、わざわざ作ってもらった小屋だ。

 錬成にはかなりの集中力がいる。

 錬成の最中は周りのことが一切分からなくなるくらい。


 僕は錬成で1振りの刀を完成させた。

 力任せに戦うゴブリンに繊細な切るという技術が必要な刀はあまり向かない。

 けど、やっぱり作れるからには作ってみたいと思うのが日本刀の魅力。

 ちょうど武器も農具も焦って作る必要がない時期だったこともあって、僕はその刀を作ってみた。

 作って、その出来栄えを見ようと持ち上げたところで気づいた。


 外がやけに騒がしい。

 嫌な予感がした。

 僕は刀を持ったまま、小屋から出る。

 

 そこには、地獄があった。


 人間だ。

 人間が攻めてきていた。

 その人間の足元には多数のゴブリンが倒れている。

 

 今もゴブリンの戦士が必死に抵抗しているけど、人間のほうが強いのか、押され気味だ。

 いや、それだけじゃない。

 人間に混じって、魔物が数匹いる。

 人間に味方してるってことは、飼いならされてでもいるのかもしれない。


「ラズラズ!小屋の中に入ってろ!」


 ラザラザ兄が妹と一緒にやってきて、僕を小屋の中に押し戻す。


 妹と2人、小屋の中で震える。

 怖い。

 喧嘩くらいなら前世でいくらでもしたけど、殺し合いなんかしたことはない。

 いつか狩りに出れば死ぬかもしれないとは覚悟してたけど、それはまだ先の話だ。

 こんな急に、覚悟なんかできるわけがない。


 妹が震える。

 妹はまだ会話もろくにできない。

 成長が早くても、中身の成長まで早いわけじゃない。

 人間で言えばまだ赤ん坊。


 しっかりしろ!

 もし何かあったら、僕が妹を守らなきゃならないんだ!

 刀を構えて小屋の扉を睨む。


 どれくらいそうしていたのか、扉がゆっくりと開いた。

 扉を開けたのは、人間だった。


 迷わず刀を振り下ろす。

 刀は呆気なく男の剣に弾かれた。

 非力な僕の腕では、全く歯が立たなかった。


 男が何事かをつぶやく。

 けど、ゴブリンが使う言語とは違う言葉で、僕にはその内容が理解できなかった。

 全身をまさぐられるかのような悪寒を感じた。

 男が目を細める。


 何をしてるのかわからないけど、チャンスだ。

 刀をもう1度振ろうとして、それよりも早く男の蹴りが僕の体を吹っ飛ばした。

 刀が手から離れる。


 痛みで意識が飛びそうになる。

 男は追い打ちをかけるように、仰向けに転がった僕の頭を手で押さえつける。

 次の瞬間、何かが僕の中に流れ込んできた。


「ん!?ぎぃ!?」


 思わず口から金切り声が出た。

 なんだこれ!?

 体の中に不純物を流されているかのような不快感と苦痛が押し寄せてくる。

 同時に意識が染められていくかのような得体の知れない感覚に襲われる。

 

 歯を食いしばって耐える。

 意識の方はそれでなんとかなったけど、体のほうがどんどん言うことを聞かなくなってくる。

 男の手を振りほどこうともがいていたのに、力が抜けてされるがままになる。


 視界の端で妹が身動きもできずに立ち尽くしているのを見た。

 逃げろ、と言いたかったけど、口も動いてくれない。


 男が手を離す。

 なのに、僕の体は全く言うことを聞いてくれない。

 立とうとしてもまったく力が入らず、指1本動かせない。

 体が自分のものじゃないみたいだ。


 男が何かを言った。

 言葉の意味は理解できない。

 できないのに、「立て」と言われているのがわかった。


 男の言葉に従って、僕の体が起き上がる。

 あれだけ言うことを聞かなかった僕の体が、男の言葉に従った。


 混乱する頭の片隅に、前世のゲーム知識が浮かび上がる。

 魔物を従えるテイムの能力。

 さっき、人間と一緒に魔物がゴブリンを襲っていた。

 まさか、この男は魔物を従える力を持っているんじゃないか?

 だとしたら、僕はこの男に操られてしまったということか!?


 男は僕を見て満足そうに頷く。

 そして、妹を見た。

 そして、口を開く。


「殺せ」


 やめてくれ!

 待ってくれ!

 そんなことできない!

 

 なのに、僕の体は意思に反して落とした刀を拾う。

 怯え切った妹の前にゆっくりと近づく。


 やめてくれ!

 止まれ!

 止まれよ体!


 振り下ろされる刀が、妹の体を赤く染めた。


 あ、あああああぁぁぁあっぁぁぁあああああぁぁっぁあっぁあ!!!!!!?!!


《条件を満たしました。称号『味方殺し』を獲得しました》

《称号『味方殺し』の効果により、スキル『外道攻撃LV1』『禁忌LV1』を獲得しました》


 なんてことを!

 なんてことを!

 僕が、僕の作った、武器で!


「食え」


 は?

 待てよ?

 何、言ってるんだよ?

 おい?

 冗談だよな?

 嘘だろ?

 やめろ!

 やめさせてくれよ!?

 

《条件を満たしました。称号『血縁喰ライ』を獲得しました》

《称号『血縁喰ライ』の効果により、スキル『禁忌LV1』『外道魔法LV1』を獲得しました》

《『禁忌LV1』が『禁忌LV1』に統合されました》

《熟練度が一定に達しました。スキル『禁忌LV1』が『禁忌LV2』になりました》


 口の中が真っ赤に染まる。

 同時に、頭の中も。


 殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!《熟練度が一定に達しました。スキル『怒LV1』を獲得しました》殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!《熟練度が一定に達しました。スキル『怒LV1』が『怒LV2』になりました》殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!


 狂いそうな殺意を抱く。

 だというのに、僕の体は、男の命令を忠実に守り続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
Half-Lifeと言うゲームが有ってな、バールで無双すんねん。
[一言] つうか人間側から見たゴブリンについてよく分かっていない件。これ見る限りテンプレでいいんかな? 魔族から見た人間全体がこんな印象に見えるんじゃ、そりゃ人間滅ぼしたくもなるよねつうかこっちで周り…
[一言] かわいそうすぎる……鬼くんがんばれ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ