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3 鑑定はチートスキルだと思っていた時期がありました

 吾輩は蜘蛛である。

 名前はまだない。


 え、突然何言ってんだって?

 私って名前ないらしいから、それを言ってみただけ。

 何の話かって?

 それを話すにはちょっと前のことを振り返らなきゃならない。



 **************** 

 


 私は自分のサイズを確認して呆然とした。

 だってそうでしょ?

 蜘蛛に生まれ変わったってだけでもショックなのに、さらにモンスターだもん。

 これはへこむ。

 人によってはそのまま絶望して自害するかもしれないくらいへこむ。

 まあ、私は死のうとまでは思わないけど。


 けど、へこんでばかりもいられない。

 ここが地球じゃない異世界だとしたら、どんな危険があるかわかったもんじゃない。

 あの巨大蜘蛛みたいな化物が他にいないなんて保証はどこにもないし。


 あの巨大蜘蛛、私のサイズから予想すると、体長30メートルくらいあるんだけどね…。


 あんなもの、人の手に負えるのかな?

 この足跡の人たちが、あれに遭遇しないことを祈るばかりだ。

 あ、でも、重火器とかあれば話は違うか。

 それに、ファンタジーお馴染みの魔法も、もしかしたらあるかもしれない。

 それなら、あの巨大蜘蛛にも、多少抵抗できるかな?

 わからない。

 けど、あれは絶対ボスクラスの強敵だとは思う。

 というか、そうでなきゃ、この先私が生きていけない。


 さっきから私、人があの巨大蜘蛛と戦うのを前提に考えてるけど、それってとってもまずくない?

 だって今の私はあの巨大蜘蛛の、多分だけど、子供。

 モンスターの赤ちゃんでちゅよー。

 ああ、うん。

 ふざけてる場合じゃないね。

 もしかしなくても、私、人に出会ったら殺されちゃうんじゃない?


 ありえるわー。

 というかその可能性大。

 どうしよう。

 人間の情報は欲しいけど、人間に発見されると殺されるかもしれない。


 うーん。

 ダメだ。

 情報が少なすぎてわからないことが多すぎる。

 この世界がどういう世界なのか。

 この世界の人たちはどんな人なのか。

 この世界で私みたいなモンスターはどんな扱いになるのか。


 知りたいことは山ほどあるけど、それを知るすべがない。

 あー、こういう時小説とかだと鑑定スキルとかで情報収集できるのになー。


《現在所持スキルポイントは100です。

 スキル『鑑定LV1』をスキルポイント100使用して取得可能です。

 取得しますか?》


 …マジで?

 突然頭の中に響いてきた機械みたいな声。

 そうかー。

 あるのか。

 あるんだな鑑定スキル!

 フッヒョイ!

 テンション上がってきた!

 なんか異世界転生っぽくなってきたじゃない!

 答えはもちろんYES!

 

《『鑑定LV1』を取得しました。残りスキルポイント0です》


 スキルポイントなるものは全部使い切っちゃったっぽいけど、こういうポイントはLVが上がればきっと増えるし、今は気にしないでおこう。

 そ、れ、よ、り、も!

 今は念願の鑑定スキルを使っていろいろ調べるのが先決!


 …どうやって使うんだろう?

 えーと、とりあえず、テンプレ通りに、適当にそこらへんに落ちてる石に向かって、『鑑定』と念じてみる。

 むむむ!

 うまくいったような感触!

 頭の中にスーっと情報が流れてくる。


『石』


 ………ん?

 あれ?

 それだけ?

 イヤイヤイヤ。

 そんなはずないよね?

 初めてだからきっと失敗しちゃったんだよ。

 もう一回試してみよう。


『石』


 ………え?

 まさか、本当にこれだけ?

 イヤイヤイヤイヤ。

 きっとこの石が情報の価値もない、本当にただの石ころだからに違いない!

 今度は壁に向かって鑑定してみよう。

 もしかしたら、ここがどういう場所なのかわかるかも知れない。

 〇〇の洞窟とか、そんな感じで名称と説明がわかれば、大分気持ちが楽になるし。


『壁』


 ……………。

 もう、何も言うまい。

 

 『鑑定LV1』と、わざわざLVがついてることに、もう少し考えを巡らせなきゃならなかった。

 つまり、LV1ではほとんど役に立たない効果しか発揮してくれないってことなんでしょ。

 LVを上げればいいのかもしれないけど、スキルポイントは全部使っちゃった。

 

 ウワァー!

 なんて無駄使いを私はしてしまったんだ!

 他にどんなスキルがあったのかはわからないけど、もしかしたらLV1でももっと使えるスキルがあったかもしれないのに!

 

 いや、ここは逆に考えるんだ。

 鑑定でこんなざまなら、他のスキルもきっとLV1じゃどうしようもない効果しか出なかったんだと。

 そうしよう、そう思おう。

 でないとやってられない。


 はぁー。

 ないわー。

 ついでに自分のことでも鑑定しとこうか。


『蜘蛛 

 名前 なし』


 ん?

 蜘蛛ってでるのは予想通りだけど、名前なし?

 


 **********************


 というところで、冒頭に戻るわけだ。

 名前なし。

 まあ、前世の名前はあるけど、今のこの蜘蛛としての名前はないってことなのかな?

 

 とりあえず、使い物にならない鑑定スキルのことは置いておこう。

 というか、鑑定スキルのせいで余計に謎が増えた。

 

 スキルポイント。

 多分、このポイントを貯めるとスキルを新たに取得できるんだと思う。

 けど、そのポイントの集め方がわからない。

 もしこの世界にLVの概念があるのなら、LVアップできっとポイントをもらえるんだと思う。

 あればの話だけど。

 

 LVだとかスキルだとかポイントだとか、ゲームみたいな世界だ。

 それならそれでありじゃないかな?

 どうせ今の私はモンスターの蜘蛛。

 まっとうな人生なんて送れないだろうし、あ、そもそも蜘蛛だから人生じゃなくて蜘蛛生か。

 とにかく、ゲームみたいなこの世界で、蜘蛛に生まれちゃったなら、蜘蛛らしく、ゲームを楽しむ感覚で、おもしろおかしく生きていこう!


 さしあたっては、お腹すいた。

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― 新着の感想 ―
面白い!
名前なし これって伏線だったんだな
[一言] 大丈夫でそ、そうして鑑定し続ける事で経験値が貯まってレベルアップできるはずだからとか即思えない程度にはゲーマーじゃなかったのかなてかそんな余裕ナッシングよねしいません(を
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