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血11 転生したらクラスメートが化物になってたんだがどうすればいい?

 やばい。

 冗談抜きでやばい。

 見た目は確かに普通の野菜炒め。

 けど、その調理をしたと思われるあとが、やばい。


 どう見ても人を解体した残骸としか思えないものが、まな板の上とか地面に無造作に転がっている。

 

 冗談じゃない。

 あの肉がその肉だと、吸血鬼だからなのか自然と理解してしまう。

 それを平然と食べるとか、ありえない。

 それも、知っている人間がだ。


『ねえ、あなた、若葉姫色(ワカバヒイロ)よね?』


 私の問いを無視して無言で野菜炒めを口に運ぶ少女。

 どう見てもそれは前世のクラスメートの若葉姫色だ。

 多少顔つきとか雰囲気とか変わってるし、何より全身が真っ白になってるけど、見間違いようがない。


 この世界に生まれ変わってから、時間はあったし色々と考えてはいた。

 もしかしたら私以外にも転生者がいるんじゃないかとか。

 そもそも私は自分がどういうふうにしてこの世界に転生することになったのか、よくわかっていない。

 死んだ、にしても死因がよくわからない。

 体は弱い方だったけど、死ぬほどじゃなかったはず。

 心筋梗塞とか脳溢血とか、自覚がなかっただけで急に症状が出て死んだってこともあるかもしれないから何とも言えなかったけど。


 けど、こうやって他の元クラスメートが目の前に現れて、そうじゃないってことがわかった。

 小説ではクラス丸ごと異世界に集団転移する話とかもあるし、もしかしたら集団転生なんてものもあるかもしれない。

 教室が突如大爆発したとかで。

 漠然とそんなことを考えていたけど、若葉姫色の姿を見るとそうじゃないのかもしれない。

 

 若葉姫色は前世と姿があまり変わってない。

 顔つきや雰囲気が多少変わってるのは1年以上経ってるし時間の変化で済ませられる。

 白いのは、よくわかんないけど。

 少し変化があるけど、転生したというよりかはそのまま転移してきたという方が納得できる。


 けど、そいつが平然と食人をしているのが信じられない。

 前から何を考えてるのかよくわからないやつだったけど、本当に何考えてんのよ?


「白ちゃーん?聞かれてるよ?」


 アリエルと名乗った少女が若葉姫色の肩を揺する。

 それでも無視して料理を食べる。

 肩の揺すりが大きくなる。

 ブンブンと揺すり、顔面にパンチがめり込んだ。

 あの、さっき魔王って自己紹介してたけど、本気?


「世界を狙える右ストレートだ。ガクッ」


 本当の本気?


「イヤ、まあ冗談はこれくらいにして。真面目に喋ってくれないと話進まないんだけど?」


 ムクッと起き上がったアリエルさんが縋るように若葉姫色に語りかける。


「メンドイ」

「えー」


 やっと口を開いたかと思えば、そんなことを言いだした。


「ハア。じゃあ、白ちゃんの語るも涙、聞くも涙の冒険譚。この私が聞かせてあげようじゃーないか」


 唐突に立ち上がり、拳を天に突き出してポーズを決めるアリエルさん。

 まだ出会って間もないけど、この人ノリだけで生きてない?


「1度死んで生まれ変わるは蜘蛛の魔物。落ちたる場所は世界最大最悪の迷宮、エルロー大迷宮。共食い兄弟から逃げ、蛙に殺されかけ、蛇と死闘を繰り広げ、果てに穴に落つ。そこに待ち受けるは深き地底に眠る恐るべき地龍!命からがら逃げおお、グヘッ!」

「長い」


 拳を振り乱しながら熱く語るアリエルさんの髪を引っつかんで投げ捨てる若葉姫色。

 なんなの、この茶番?

 とりあえず、アリエルさんの言っていたことを整理する。


 1度死んで、ということは、若葉姫色も私と同じで転生したってこと?

 エルロー大迷宮という名前は、本で見たことがある。

 なんでも大陸と大陸を繋ぐほどの巨大な迷宮なのだとか。

 そこで生まれたってこと?


「要約すると、あなたは転生者で、蜘蛛の魔物に生まれ変わり、エルロー大迷宮から脱出してきたと?」


 メラゾフィスが的確に答えを出す。


「イエス!ザッツライト!」


 なんで英語なのよ。

 メラゾフィスが眉間にシワ寄せて不思議な顔してるじゃない。

 え、ちょっと待って。

 なんで本当に英語なんて使ってるの?


『あの、アリエルさんは英語が話せるんですか?』

「ん?話せるよ。ああ、それには深いわけがあるんだけど、今は気にしなくていいよ」


 そう言われると逆に気になるんだけど、話してくれる雰囲気じゃない。


「エルロー大迷宮の蜘蛛の魔物。まさか、神獣様?」

「ああ、それ白ちゃんだね」


 はい?

 え?

 はい?


 ちょっと待って。

 え?

 神獣様って、私が盗賊に襲われている時に現れたあの白い蜘蛛よね?

 街のすぐ近くに住み着いた、あの蜘蛛よね?

 戦争の引き金作った、あの蜘蛛よね?


「言っておくけど、戦争は私のせいじゃないから」


 私の顔色から言いたいことを察したのか、若葉姫色が先んじる。


『けど、あんたがいなければ!』

「私がいてもいなくても、遅かれ早かれ戦争になってたよ。神言教は女神教を潰したがってたんだから。むしろ私は戦争のダシに使われただけ」

「補足しとくと神言教としては女神教の力を大幅に削ぐことが目的だったから、最悪国ごと叩き潰すことも視野に入れてただろうね。街1つで済んだんだからむしろ被害としては安い方だね」

『でも、でも!』

「運が悪かったと思うしかないよ。世の中理不尽なことばっかさ」


 達観したように言うアリエルさんの言葉に、それでも割り切れない感情が渦巻く。


「ところで、神獣様は人の姿を取られていますが、それは幻術かなにかですか?」

「イヤ、白ちゃんは特殊な進化して人型になったの。本質は蜘蛛の魔物だけど、見た目を変えてるわけじゃないよ。ちなみに、前世の姿と似てるのは仕様なのかな?そこらへん私もよくわかんない」


 メラゾフィスが話題を変える。

 メラゾフィスも胸中は穏やかじゃないでしょうに。

 私は涼しい顔をしている若葉姫色を睨みつける。


「白織」

『え?』

「今の名前。だから若葉姫色とは呼ばないで」


 よくわからないけど、わかった。

 私も前世の名前ではあんまり呼ばれたくないし、こいつもそうなのかもしれない。

 呼び名は白織にしておこう。

 許す許さないは別だけど。

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― 新着の感想 ―
[一言] いやだからそこの魔王がちょっかい出さなければもっと長く神様できてたんじぁないのー(汁 そこ頑張って薄情させなよ元体担当成分(爆
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