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血4 絶望へのカウントダウン

『吸血鬼』


 私はその鑑定結果に固まった。


 あの事件の時に、偶然にもスキルというものはスキルポイントなるものを使って取得できることを知った。

 私は早速鑑定のスキルを取得し、色々と試していた。

 その結果、鑑定は使えないということがわかった。


 目に見える範囲のものを片っ端から鑑定してみたけど、表示されるのは『ベッド』『壁』『机』、みたいに、見ればわかるような言葉ばかりだった。

 しかも、1回鑑定をする毎に軽い頭痛がする。

 連続で鑑定をしなければ特に問題もない程度の頭痛だけど、部屋の中のものをあらかた鑑定し終わる頃には高熱を出した時のような鈍痛がしていた。

 

 ほとんど発動させる意味がないうえに、発動させると頭痛というペナルティーが発生する。

 スキルのレベルが1だからというのもあるんだと思うけど、頑張ってレベルを上げようとも思わない。

 ハズレスキルだった。

 溜息を吐きつつ、最後に自分の手を鑑定してみた結果が、「吸血鬼」だった。


 その意味を理解するまでに、随分長い時間がかかった気がする。

 何かの間違いなんじゃないかと思って、何度も鑑定をし直して、けど、やっぱり結果は同じで。

 なんで?

 どうして?

 その言葉だけがグルグルと頭の中で空回りして、それ以上のことが考えられない。


「大変! お嬢様が!?」


 私は相当酷い顔色をしていたようで、侍女がその様子を見てすぐに医者を呼び寄せた。

 こっそりと侍女のことを鑑定してみたけど、結果は「人族」。

 私の容態を聞いて慌てて駆けつけた父と母にも鑑定をしてみるけど、両方とも「人族」だった。

 つまり、両親が吸血鬼だから私も吸血鬼なんじゃないってこと。

 私だけが、突然変異で吸血鬼として生まれたのだということ。

 

 それなら医者なんかに見られたら私が吸血鬼であることがバレるかもしれない。

 私はますます血の気が引いていく思いだった。

 吸血鬼にちゃんと血が流れているのかどうかはわからないけど。


「いや、待て」

「あなた?」

「お前も気付いただろう? この子、おそらく鑑定を発動させている」


 ぐったりとしていたのが逆に良かった。

 これで元気があったなら、ビクッて体が反応してただろうから。


「偶然か、神の悪戯か、この子には鑑定のスキルがあるようだ。おそらくこの症状は鑑定酔だろう。こちらも予測でしかないが、この子は任意でスキルの発動がオフにできなくなっているのではないか?」

「だとすれば危険だわ!?」

「危険だが、医者にどうこうできる問題じゃない。念のため診察はするが、この子が自力でスキルの発動を抑えてくれるのを祈るしかないだろう」

「そんな」


 父と母、その後ろでヒソヒソと話し合う従者たちの会話を聞いて、どうやら私の症状を誤解してくれているようだ。

 半分は正解だから完全に間違いというわけでもないけど。

 というか、鑑定って使われるとわかるのね。

 またハズレ度が上がった。


 医者が到着し、診察を受ける。

 抵抗なんかできない。

 緊張で今にも気を失いそうになりながら、医者のなすがままになる。


「お話に聞いていたように、鑑定酔のようですな。無理なことをして体が強張っているようです。しかし、見たところスキルの発動は停止している様子。これ以上容態が悪化することはないでしょう」


 ホッと胸をなで下ろす両親。

 私はそれでも安心できず、体は強張ったままだった。


「念のため1日は目を離さずに見ているべきでしょう。何かあったらまたお呼びください」

「先生、ありがとうございました」


 医者が特にそれ以上は何も言わずに退室していく。

 油断はできない。

 このあと両親に内密に話すことも考えられる。

 けど、張り詰めた緊張をよそに、私の意識は霞がかかったようになっていく。

 赤ん坊の体に長く続く緊張は耐えられなかったらしい。

 抗いがたい睡魔に抵抗し、医者が本当に気付かずに帰っていったのか、その結果を知りたかった。


《熟練度が一定に達しました。スキル『睡眠耐性LV1』を獲得しました》


 そのスキルの力もあって、僅かに私は起きていることができた。

 けど、結局両親が戻ってくるまでは耐えられず、いつの間にか私は眠りについていた。




 目が覚めた時、両親はそばにいなかった。

 あの心配性の母のことだからずっとそばにいるものだと思っていたけど、いなかった。

 その理由は従者の会話ですぐにわかった。

 どうやらあの時の蜘蛛の魔物が街のすぐ近くに巣を張ったらしい。

 そのせいで街の中は混乱していて、父も母も対応に追われているようだ。


 ホッとする。

 とりあえず、生きているということは最悪の結末にはならなかったということ。

 問題の先延ばしにしかならないけど、私が吸血鬼であるということには気づかれなかったんじゃないかと思う。

 本来なら迷惑だけど、この時ばかりは問題をうやむやにしてくれた蜘蛛に感謝だ。


 考えることはどうして私が吸血鬼として生まれてきたのか。

 転生したから、というのが私の考えだけど、わからない。

 まさか、前世で吸血鬼なんてあだ名で呼ばれてたのが原因?

 そんなくだらないことでせっかくの2度目の人生が狂うのだとしたら、やっていられない。


 けど、私が吸血鬼だという事実は変えられない。

 もし、誰かに鑑定でもされたら、一発でアウト。

 この世界で吸血鬼がどういう扱いなのかわからないけど、いいことにはならないと思う。

 絶対にバレないようにしないといけない。

 

 だけど、バレるのは時間の問題。

 貴族の子供には、鑑定の儀と呼ばれる社交界デビューの催しがある。

 衆人環視の中、大々的に鑑定を行い、どうだうちの子はすごいだろー、と見せ合うイベントだ。

 そんなことをされたら私が吸血鬼であると宣伝するようなもの。

 なんとしてでも回避しないといけない。

 けど、どうやったら回避できるの?

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― 新着の感想 ―
[一言] BAD END‬回避の悪役令嬢物みたいで、本編とは違った愉しみがあります
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