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200 戦利品

 私は乱戦に持ち込む、と見せかけて、ロボを1体拉致してさっさと撤収する。

 乱戦ならフレンドリーファイアを恐れて射撃が止まる、なーんていうのは相手が生身の人間だった場合の話で、感情もないロボが相手じゃ、味方ごと平気で私を撃ち抜くに決まっている。

 しかも、私は1発食らっただけで大ダメージなのに、ロボはちょっと装甲が傷つく程度。

 玉砕特攻するには分が悪い。


 私は拉致したロボを新たな盾がわりに、必死になって現状を打破するためにロボを観察する。

 正確には、ロボに仕掛けられた、魔術の解析だ。

 私を苦しめている魔術妨害、その対抗策だ。


 ロボ軍団は魔術妨害の中でも平然と活動している。

 ありえないくらいの防御力を有しているし、魔術を使用しているのは明らかなのにだ。

 その答えは、ロボに魔術妨害を中和する魔術が組み込まれているからだ。

 魔術妨害をさらに妨害する魔術。


 私はそれを解析し、模倣することで現状を打破しようと考えている。

 かなり複雑な構築で、かつ巧妙に隠蔽されていたので、解析にかなりの時間がかかってしまっているけど、解析が完了すれば一気に形成を逆転できるはずだ。


 回避に専念し、同時に解析を進める。

 思考超加速をもってしても弾丸を見て回避することはできない。

 ロボの動きを見て、発射される弾丸の軌道を予測し、あらかじめその軌道から回避していないといけない。

 発射されてから避けたのでは間に合わない。

 これが相手が1体だけなら余裕なんだけど、わらわらいたんじゃ私の処理能力が間に合うわけもないし、そもそも避けるスペースがないくらいに弾が空間を埋め尽くしている。

 それでも被害を最小限にするため、あっちこっちに動き回り、ロボたちを翻弄する。

 

 久しぶりに脳みそフル回転させている。

 回避に解析に。

 おかげで頭が爆発しそうだわ。


 マジで頭爆発した。

 撃ーたーれーたー!

 人型の頭部がきれいに持っていかれる。

 バカめ!

 それも本体だ!


 おおう。

 やばいやばい。

 人型の脳みそが使えなくなって処理速度ガタ落ち。

 

 回復が見込めないこの環境で、普通だったらもう死んでてもおかしくない重傷だった。

 まあ、私には忍耐と不死がある。

 魔術妨害でもこの2つのスキルは停止できなかった。

 さすがはぶっ壊れ性能のスキル。

 この場所に張り巡らされた魔術妨害は、私ですら能力を著しく低下させるほどの高度なものであるにもかかわらず、ぶっ壊れスキルは全く問題なく発動できている。

 体が原型を留めていてくれさえすれば、行動に支障はない。

 人型の頭部が潰されちゃっているから、蜘蛛型の脳まで破壊されると、ちょっと危ないかもしれないけど。


 と、悠長に構えている余裕が無くなってきた。

 人型の脳みそが使えないので、回避が雑になってきた。

 元々ちぎれかけていた右腕が吹っ飛ぶ。

 足も何本か持っていかれた。

 人型蜘蛛型両方の胴体にも弾丸がかすっていく。


 さすがにもうまずい。

 という段になって、ようやく解析が完了。

 解析結果を基に、即席で模倣した魔術を展開する。

 この短時間で戦闘しながら相手の術式を看破するなんて、私ってば天才。


 効果は抜群だった。

 さすがに即席で作った魔術なので、ロボに組み込まれている純正品より威力は劣るけど、少なくともステータスが多少戻る程度の働きはしてくれた。

 そこからは割と一方的だった。

 

 それまでかするだけで私の肉をこそげ落としていた弾丸が、直撃しても致命傷にはならなくなった。

 ダメージが全くないわけじゃないけど、ロボを盾にする必要もないくらいだった。

 怪我の回復も、じんわりとだけど始まっていた。

 

 結局魔法は使えなかったけど、ロボを殴り倒すことはできた。

 殴り、鎌で切り裂き、ぶん投げたりもした。

 そうして私はロボ軍団を全滅させた。

 死に戻りを覚悟していたけど、何とかなった。


 ロボを全滅させ、私はこの施設にかかっている魔術妨害を解除した。

 魔術妨害を発生させている機械を破壊しただけだけど。

 その途端、傷ついた体が回復を始める。

 吹き飛んでいた人型の頭部も元通りに治り、右腕も生えてくる。


 あー、しんどかった。

 けど、やってやったぜ。

 ふふふ。

 このあとはお楽しみタイム。

 そうして施設をくまなく調べた。


 ロボの手入れをするロボ。

 機能保全のための空気清浄システム。

 などなど。

 そして、施設の最奥で、私は探し求めていたそれを発見した。

 

 巨大な機械。

 そこに込められたエネルギーは途方もない大きさだった。

 にもかかわらず、そのエネルギーは時間が経つごとに増えていく。


 MAエネルギー発生装置。


 その機械こそ、最大の禁忌を生み出した元凶。

 世界を崩壊に導く、存在自体が許されざるもの。

 まさか、まだ稼働しているのが残っているなんてね。


 私は装置を破壊し、コアと呼ばれるエネルギーを貯蓄しておく掌に乗る程度の大きさの珠を回収する。

 これでこの装置がエネルギーを回収することはもうない。

 けど、今までに貯め込んだエネルギーはこのコアに濃縮されている。


 私はコアを一旦空納に入れ、施設を破壊しながら来た道を引き返す。

 そして、ロボ軍団の残骸が積み重なった場所に戻り、ロボの解体に入った。


 目当てはロボに内蔵されたコア。

 MAエネルギー発生装置にあったコアよりも許容量は小さいけど、このロボにもコアが内蔵されているはずだった。

 お目当てのコアは胴体の中にあり、私は1体1体からコアを回収していった。


 集めたコアを床に広げる。

 中には戦闘で破損し、エネルギーが抜けてしまったものもあったけど、それでもかなりの数のコアが集まった。

 すべてのコアのエネルギーを加算すると、とんでもないことになる。

 もし単純な破壊エネルギーに変換したら、ここいら一帯が吹き飛ぶ。

 軽く天変地異を引き起こすくらいのエネルギーにはなるはずだ。


 この世界の古代人が己の欲を満たすために生み出したエネルギー。

 この星の生命力そのものとも言えるエネルギー。


 ふふふ。

 これよこれ。

 これのために不利な状況を無理やり突破したんだもん。

 戦利品として確保する権利が私にはある!


 ギュリギュリがいたら絶対取り上げられるもんねー。

 まあ、こんな危険物、放っておくことはできないよねー。

 けど、そのギュリギュリはここにはいない。

 ロボ軍団に勝てる見込みも低かったし、戦ってる最中にギュリギュリが乱入してくる可能性もあった。

 だから、手に入れば儲け物くらいに思ってたけど、こうもうまくいくとはねー。

 神様ありがとう!

 あ、Dお前じゃないからな?


 これだけのエネルギーを私に統合すれば、相当なレベルアップが見込める。

 禁忌の知識にはこのエネルギーを吸収するための術式もあった。

 人間だったらこれだけのエネルギーを吸収するのは自殺行為だけど、私なら多分耐えられるはず。

 うまくすればこれで魔王を超えることもできるかもしれない。

 

 というわけで、集めたコアに魔術をかける。

 コアと私を魔術的に結合し、コアに宿っていたエネルギーを私の方に流し込む。

 あんまり変化ないな?

 おかしいな?

 そう思いつつ、すべてのコアのエネルギーを吸収する。


 うん?

 あれ?

 おっかしいなー?

 コアを吸収すればレベルなりなんなり変化があると思ってたんだけど。

 なんもないや。


 まさか、失敗した?

 イヤイヤ。

 術式は完璧だったはず。

 現にコアのエネルギーは空っぽになっている。

 私の方に移ったのは間違いないはず。


 若干焦りを覚え始めた頃、それは唐突に起こった。


《熟練度が一定に達しました。スキル『神性領域拡張LV9』が『神性領域拡張LV10』になりました》

《条件を満たしました。神化を開始します》


 耐え難いほどの衝撃が私の内側から溢れ出る。

 そして、私はあっさりと意識を手放した。

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― 新着の感想 ―
この後からの展開が本当に書籍と別だよね。
[一言] 頭と右腕失って尚も前進し続ける辺りでガ○タ○クを幻視した(を
[良い点] かみ!?
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