199 ロボット軍団
とりあえず、手持ちのスキルで使えるものを確認していこう。
スキルなしとはいったけど、全部が全部使えないわけじゃない。
体内で作用する系列のスキルは有効だ。
思考超加速も問題なく使えている。
でなければこうしてのんびり思考している余裕なんかない。
思考超加速は使える。
けど、未来視はダメか。
回避と命中と確率大補正、これは使えるか。
これらのスキルはシステムの力で自動で行動に微修正を加え、その状況で最適の動きをしてくれるようにするスキルなんだけど、要は熟練戦士の回避だとか命中だとかを素人にもできるようにする補正スキルなのだ。
元が自分の技術を底上げするスキルのため、妨害は受けないようだ。
同じ理由で投擲なんかも多分使える。
黄金回避コンボが一部使えないけど、それでも回避力はそこそこ確保できている。
魔法系は全滅。
念力や射出みたいな外部に影響を与えるものはダメ。
空間機動がダメなのが痛い。
邪眼系も全滅。
毒合成や薬合成みたいな生成系もダメ。
糸も生成系に属するので使えない。
各種攻撃強化スキルもシステムが判断する属性に対して威力ボーナスを外部的に補助するというものなので、おそらく使えないと思う。
ここら辺ちょっとややこしいので私も確実なことは言えない。
魔神法と闘神法のステータス強化スキルは一部可。
薄皮1枚以外にはちゃんと効いている。
神龍力は、魔法効果打ち消しが使えない以外は同じか。
龍結界はダメだね。
神龍力と龍結界の魔法打ち消し効果で魔術妨害に対抗できないかと思ったけど、そう甘くはなかった。
ここに張られている魔術妨害はかなり高度なものらしく、簡単に押し切られてしまった。
スキルで使えるのはほぼ肉体を強化する系列のスキルだけ。
つまり、結局のところレベルを上げて物理で殴るしかないわけだ。
HP超速回復が作動してくれればいいけど、期待はできない。
対するロボ軍団は完全武装、というか存在そのものが武器。
どうせ魔術妨害は受けてないんだろうし、こっちが圧倒的に不利。
そもそも、こいつらはシステム構築前の世界を破滅に追いやった技術で稼働している。
魔術妨害がなければさすがに負けはしないだろうけど、1体1体が龍クラスの力を持っていると考えたほうがいい。
それが100体。
どうしよう?
ここを放っておくことはできない。
けど、勝ち目あるか?
ここは一旦引いて、ギュリギュリに知らせたほうがいいか?
イヤ。
最悪卵死に戻りしてもいいからできるところまで暴れたほうがいいか。
魔王からすら逃亡できた卵死に戻りなら、魔術妨害でも防げない、はず。
幸い逃げ場なら大量に作ってある。
ここで消費してしまっても痛くない。
ステータスが一時的に下がりはするけど、復活前に魔王の襲撃を受けても、また別の卵に死に戻りすればいいだけだし。
万が一、ここを私だけで制圧できれば、ギュリギュリを出し抜いてあれが手に入るかもしれない。
これだけの生きた施設に、あれがないとは思えない。
是非とも欲しい。
あれが手に入れば、私の計画を前倒しで進めることができるかもしれない。
死に戻りを前提にしても、やる価値はある。
どうせ失敗してもギュリギュリがここを片付けるだけだし。
というわけで、長々とした思考を終了し、それを戦闘に切り替える。
ロボットは起き上がってこっちの武器を構えようとしている。
あんだけ長い間考え事をしても相手は戦闘態勢に入ったばっかり。
思考超加速さまさま。
魔法が使えない今、私にできるのは接近戦しかない。
銃を持った相手に距離を保たれたらやばい。
ダッシュで一番近くにいたロボに詰め寄る。
スピードは、そんなに落ちてないか。
けど、気のせいか足が痛い。
それを我慢して走る勢いのままにロボの胴体を思いっきりぶん殴る。
ロボが吹っ飛んでいく。
硬!?
痛!?
うーわ。
殴った拳の皮が裂けてる。
考えてみれば、薄皮1枚の防御力はなくなってるんだもんね。
自分の攻撃の反動ですらダメージが来るか。
足が痛かったのもこれのせいか。
痛覚無効がなければそれだけで怯んでただろうね。
痛覚無効があるから、痛みを自覚しつつそれを無視できる。
回復は、しない。
ちょっとだけ回復してきてはいるっぽいけど、見た目にはほとんど変化がない。
かすり傷程度だけど、完治には1時間以上かかりそうだ。
回復はないものだと思ったほうがよさそう。
そんなことを考えながら、吹っ飛ばしたロボに追撃を加える。
正確には加えようとした。
他のロボが銃を発射して、妨害してきたのだ。
未来視がないせいでいつもより少し回避が遅れたけど、相手が銃を発射する前にその射線から逃れる。
私でさえギリギリ知覚できるかどうかというほどの高速で弾丸が通り過ぎる。
マジか。
思考超加速と五感大強化込みでもほとんど見えなかった。
あれは狙いをつけられたら避けられない。
このままだと蜂の巣になるのは目に見えている。
最悪なことにロボの持つ銃は連射の利くマシンガンタイプのようだ。
あの速度で連射できるとか悪夢でしかない。
私はすぐさま倒れたロボに近づく。
私がロボを盾にするのと、一斉掃射が襲いかかってきたのはほぼ同時。
盾にしたロボに無数の弾丸が突き刺さる。
隠れきれていなかった体の一部が銃弾で吹き飛ぶ。
貫通じゃなくて吹き飛ぶ。
どんな威力だ!?
そして、それに耐えるこのロボの装甲はどうなってんだ!?
けど、ロボの装甲もさすがに傷ついていっている。
このままだといずれ貫通してしまう。
私はロボの手から銃をもぎ取る。
その際私の腕に弾が当たって抉れたけど、この際気にしてられない。
半分ちぎれてブランブランしている右手から、左手に銃を持ち替える。
ロボの体の隙間から銃口を出して、引き金を引く。
ものすごい反動が手に伝わってきた。
持ち替えて良かった。
もしそのまま引き金を引いていたら、右手は完全にちぎれてたね。
ロボの掃射に応戦する。
けど、こっちは1に対して向こうはおよそ100。
建物の広さの関係上、私に攻撃を加えているのは10体くらいだろうけど、それでも10倍だ。
弾の残量もあるし、すぐに押し負けるのは明白。
私は引き金を引きながら、ロボを盾にしたまま前進する。
ロボに弾がぶち当たるたびに衝撃でたたらを踏みそうになるけど、それでも歯を食いしばって前進する。
そして、盾にしたロボごと隊列を組んだロボ集団に体当りする。
もはや原型をとどめなくなっていた盾ロボを放り捨て、目の前の次なるロボを盾にする。
こうなれば、マジで死に戻り覚悟で玉砕してやんよ。