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198 地下遺跡

 穴を掘って地下深くに突き進む。

 その先に、明らかに今までとは違う質感の層が現れる。

 それは、どう見ても自然ではありえない、人工物だった。


 土魔法を使ってみるも、全く反応がない。

 土魔法は土と言いつつ、影響を与える範囲はかなり広い。

 土だろうが金属だろうが、形ある大きな固形物ならどんなものにも作用させることができる。

 アラバが即席で橋を建造したり、私が穴をスイスイ掘れるのもそうした理由があるからだ。


 その土魔法を、私の足元にある壁は弾いた。

 それはつまり、魔法に耐性があるということだ。

 叡智で壁の詳細を鑑定する。


『鑑定不能』


 全く予想していなかったわけじゃないけど、その壁を鑑定することはできなかった。

 魔法に耐性があるのはわかるので、魔法で壊すことは多分できない。

 かと言って腕力でどうにかなるかと言われると、できなくもないだろうけどやった時に何が起こるかわからない。


 仕方なく、私は探知を駆使して、この地下施設の全容を把握することにする。

 ダメだった。

 ある程度は探知も通るのだけど、中の空洞部分はぼやけるようになって、上手く探知が発動してくれない。

 ジャマーが働いているようだ。


 ちょっと、いや、かなーりまずい。

 ジャマーが壁由来のものならいいんだけど、もし中で何らかの魔術が発動しているのなら、この地下施設は生きていることになる。

 それは大問題だ。


 ギュリギュリに知らせるか?

 ていっても私知らせる手段持ってないし。

 

 乗り込むしかないか。

 探知でこの施設の入口らしきものは発見した。

 壁伝いに穴を掘っていき、その入口まで進んでいく。

 

 途中でちぎれた壁の中に、土で埋まった1辺5メートル程度の正方形の空間が現れる。

 もっとも、中は土で埋まっているけど。

 その土を魔法でどかしていく。

 そして現れる扉。


 その扉は重厚な金属でできており、左右にスライドして開くタイプのようだった。

 取っ手のようなものはない。

 まあ、そうだよね。

 明らかに上の文明とは物が違う。

 それは、明らかに自動で開くことを想定されて作られた、機械仕掛けの扉だ。 

 この正方形の空間も、元はエレベーターだったのだろう。


 ファンタジー世界には似つかわしくない、その扉に手をかける。

 随分長い間土に埋まっていた扉が自動で開くことはなかった。

 仕方なく手動で押し開ける。

 重。

 私のステータスだから開けられるけど、これ、重すぎでしょ。

 けど、そんな感想もすぐにどうでもよくなる。


 強引にこじ開けた扉の先。

 淡い緑色の光を放つ非常灯。

 その光に照らされて、地下施設の中がぼんやりと浮かび上がる。

 まあ、私には暗視があるんだけどさ。


 そこには、信じられない物が置いてあった。

 身長2メートル程度の、金属の人形。

 一言で言えば、ロボットだった。

 それも、かなり高度な技術で作られた。

 それが、両側の壁にズラッと並べられている。


 イヤイヤ。

 予想はしてたよ?

 してたけどさー、ファンタジー世界でロボットって何よ?

 しかもこのロボット、どう見ても戦闘タイプです本当にありがとうございます!


 最悪なのは、このロボットどもがまだ生きていることだ。

 その証拠に、けたたましいサイレントともに、ロボットどもが起動し始める。

 サイレンと一緒になんかの音声も流れているけど、残念ながら私がクイーンの知識から覚えた言語とは違う言葉で喋っているため、その内容はわからない。

 まあ、どうせ侵入者が来たから迎撃します、的なアナウンスだと思うけど。

 

 侵入者、それすなわち私。

 迎撃されます。

 畜生。


 ロボットが立ち上がる。

 それは4足のロボットだった。

 腕も4本ある。

 そのうちの2本は人の腕を再現してあるけど、もう2本には剣と銃が一体になったかのような武器が手の代わりに先端についている。

 2銃2刀流ですか?

 普通の腕の方にも物々しい大口径の銃が握られる。

 4銃流ですか?

 頭部はなく、代わりに小型の銃口が取り付けられている。

 5銃流ですか?

 

 そんな世界観ぶち壊しのロボットが100体ほど。

 ほど、というのは、この施設内では上手く叡智が発動してくれないからだ。

 どうも探知のジャマーは壁由来のものではなく、この建物の中で発動している魔術妨害が原因らしい。

 試しに魔法を発動させようとしても、構築が何かに邪魔されるかのようにうまくいかない。


 やばいです。

 地味にピンチです。

 ここにいる限り、私スキルが全く使えません。

 頼れるのは単純な肉弾戦のみ。


 魔術妨害、それはその名前のとおり、魔術の発動を妨害するものだ。

 つまり魔法は使えない。

 そして、スキルのほとんどは、実は魔術だ。

 

 魔術をシステムの力を使って、簡単に発動できるように補助、簡略化したものがスキルの正体だ。

 それはスキルの持ち主の魂の力を、わかりやすい力として形にしたものだ。

 私の糸にしろ毒にしろ、全ては魔術による産物だったわけだ。


 そして、それには当然耐性も含まれる。

 私が持つ物理無効。

 こいつは常に強力な物理攻撃に対する結界を体に張っているというものだ。

 実は私自身が物理攻撃を無効化しているわけじゃない。

 さらに、無効と言いつつ、結界の防御力を超える力でぶん殴られたら、普通にダメージが通る。

 スーパーな野菜の星の生まれの異星人に本気で殴られたら、私は木っ端微塵ですよ。


 耐性とは、その攻撃に対する防御結界、及び、中和機能を常時展開した魔術なのだ。

 魔術であるということは、魔術妨害にももちろん引っかかるわけで、今の私は耐性の全くない素の状態なわけです。

 

 さらに言えば、ステータスも身体強化、及び被破壊強化という魔術によってなされている。

 攻撃力は殴る筋力を魔術で増強しているだけ。

 素早く動くのもそれに対応した筋力を上げているだけである。

 こちらは体内で発動しているので、魔術妨害も影響が小さい。

 小さいだけでないわけではないんだけど。

 

 対して、防御力は体内ならいいけど、表面の肌はモロに魔術妨害を受けている。

 つまり、薄皮1枚は防御力なしの状態に近い。

 体内はまだ耐えられるけど、薄皮が剥がれたら剥がれたところの防御力が下がる。

 そんでもって貫通していけば、いつかは致命傷になる。

 皮から徐々に剥がされていくとか何その拷問。


 100体のロボ軍団対、スキルなしステータス弱体化中の私。

 あ、これマジでやばい。


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