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開戦前

【シュン】


「よう。夏目が攻めてくるんだって?」

「田川と、櫛谷さんか」

「俺たちはここにいる中じゃ、数少ない戦闘力のある転生者だからな。もし結界が破られるようなことになれば、俺たちも参戦するぜ」

「本当は隠れていたいんだけどね」

「2人は冒険者として活動してたんだっけ?」

「そう。このバカがチート転生したら冒険者になるのが定番とかわけのわからないこと言ってね」

「そう。そして新人冒険者の頃から頭角を現し、ランクを一気にあげて注目を集め、ゆくゆくは俺の名前をこの世界に残すのだ!」

「あー」

「ね、バカでしょ?」

「2人は幼馴染だっけ?」

「そうよ。前世でも今世でもね。腐れ縁とも言うわね」

「なんだよー。俺とアサカの仲じゃねーかよー」

「うるさい」

「え、付き合ってるの?」

「イエス!」

「なりゆきでね」

「照れるなよー」

「うるさい」

「あー、まあ、お幸せに」

「なにその生暖かい視線は?」

「あんたがバカだからよ」

「酷くね?」

「適正な評価だと思うわよ?」

「そんなツンなアサカが大好きです」

「バカじゃないの?」

「あの、俺お邪魔みたいだから帰るわ」




【フィリメス】


「どうした?随分浮かない顔で」

「ハイリンスさん。いえ、何でもありません」

「何でもないって顔じゃないだろ?どうした? 何があった?」

「生徒のみんなに嫌われてしまいました」

「どういうことだ?」




「ふむ。なるほどな」

「すみません。こんな愚痴に付き合わせてしまって」

「いや。オカさんは今までずっと誰にもこの話ができずに1人で抱えていたのだろ? たまにはこうして吐き出すことも重要だ」

「そう言っていただけると、少しは気が楽になります」

「しかし、生徒名簿ね。そんなスキルは聞いたことも見たこともない」

「でしょうね。シュンくんの天の加護もそうですが、私たち転生者が持つスキルは普通では見られないユニークなものが多いのでしょう。ここで保護している転生者のもつスキルは大概高位のスキルか、他に持ち手がいないユニークスキルです」

「生まれ持ったスキルに、スキルポイント、それに前世の知識と精神か。確かに、これだけの要素があれば、幼い頃から鍛えれば世界有数の力の持ち主になることも可能か」

「はい。現にここで保護できなかった転生者は全員が全員かなりの力を有しています」

「そうなると、気になるのはスキルを剥奪されて死亡するという言葉か」

「それが何を表しているのか、正確にはわかりません。けれど、何かが起こるのは確かだと思います」

「それが何かは、わからないか」

「はい。スキルを多く持つ転生者にしかその記述はありませんから、狙われるのはシュンくんやカティアちゃんのように、一定以上の強さを持つ転生者ということになります」

「オカさんはそれを防ぐために転生者を保護して、スキルが育てにくい環境を与えたと」

「そうなります。もっとも、それはエルフの都合も多分にあるでしょうけどね」

「エルフの都合か。管理者と敵対するというが、勝てる見込みはあるのか?」

「わかりません。なんにせよ、今は転生者がエルフによって守られているのも事実です。勝てる勝てないは置いておいて、守らなければならないんです」

「今度の戦いでも、か。結界が壊れなければそれでいいのだがな」

「私の見立てでは、多分結界は壊れます」

「その理由は?」

「ユーゴーは今度の戦いで戦死する。そう生徒名簿に書かれているんです」

「そうか。結界が壊れて戦いにならなければ、そもそも戦死はしないか。しかし、支配者スキルを持つ存在は、その生徒名簿の予言を覆すこともあるのだろう?」

「はい。だからこそ、私の手で、ユーゴーには引導を渡します」

「あまり思いつめないことだ。オカさんは責任感が強すぎる」

「そんなことはありません。私なんて、何の責任も取れないダメ教師です」

「そういうところが思いつめているというのだ。肩の力を抜いて、気を楽にするんだ。俺も相談に乗るくらいはできるしな」

「ありがとうございます」




【ポティマス】


「族長。例の物の準備、整いました」

「ご苦労」

「しかし、必要なのですか?」

「ああ」

「ということは、結界が破られると?」

「そうだな。外の軍の魔法では結界が破れることなどない。が、長年生きてきた勘だな。結界は破れる」

「はあ」

「勘などという曖昧なもので判断する私は理解しがたいかね?」

「あ、いえ、そんなことは」

「言い繕わなくとも良い。私もこんな不確かなものに頼る自分が滑稽で仕方がないくらいだ」

「それでしたら、なぜ?」

「長く生きているとわかるものだ。世界は必ずしも理論通りにはいかないということがな。そして、理屈を超えたその先に見えるものもあるということだ」

「はあ」

「それがどうにも嫌な予感を覚えてな。打てる手は全て打っておくべきだと思ったのだよ」

「しかし、あれらを投入すると、過剰戦力のような気もしますが」

「私は小心者なのだよ。虫けらを潰すのにも細心の注意を払うくらいな」




【???】


「暇ね」

「しょうがないよ」

「あなた、暇だから私を笑わせる一発芸でもしなさい」

「それなんて無茶振り?」

「できないの?」

「いきなり言われてもできないよ」

「チッ。無能ね」

「じゃあ、君の方こそできるの?」

「ハッ!この私がなぜ下賎な輩を笑わせなければならないの?」

「できないんだね」

「できないのではなく、やる意味がないのよ」

「はいはい。で、夏目君はどっちがやるの?」

「好きになさい。あんな小物に興味はないわ」

「あっそ。僕も別にどうでもいいんだけどなー」

「経験値の足しにでもしておきなさい」

「まあ、状況によってはね」

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― 新着の感想 ―
気を緩めたら部外者にはあっさり喋っちゃうってそれは先生一貫性が……気持ちはわかるけど
[一言] なんかハイリンスって怪しいな
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