188 お腹が減りました
おっさんと勇者は去った。
つまり、他人がいない。
ああ、ボッチって素晴らしい。
{で、詳しい説明がそろそろ欲しいんだけど?}
あ、クイーンがいたからボッチでもなかった。
とりあえず迷宮出てから戦争に突っ込んでいった経緯を軽く話す。
{オウ、ジーザス}
なぜかクイーンは嘆いていた。
頭が抱えられるなら抱えて蹲るレベルで。
なんで?
{なあ、本体}
なんだね?
{自分の状況分かってるかい?}
おう。
{わかってるならなぜに魔王以外にも厄介事増やしてんのさ!?}
お、おう。
しゃーないねん。
イラッとしたねん。
カッとなってやっちゃったねん。
{ねんねんうるさいわボケ!}
ごめんなさい。
{ハア。とりあえずやっちゃったもんはしょうがない。で、実際戦争を引っ掻き回して問題はありそうなの?}
ないね。
ぶっちゃけ今の私の強さなら、人間がいくら束になって掛かってきても、余裕で撃退できる。
{まあ、話を聞く限りではそうだろうねー}
うん。
だから、人間の国をいくら引っ掻き回そうが暴力でどうとでもできる。
力こそ全て、いい時代になったものだ。
{いや、どこぞの世紀末じゃないんだけど。一応ちゃんと秩序保たれてんですけど。どっかの害獣が暴れなければ}
どこの害獣だろうなー?
{ということは、目下のところ問題は魔王だけ?}
だねー。
ギュリギュリもこんだけの騒動起こしても接触してこないし。
{その魔王なんだけど、あんた気づいてる?}
ああ、うん。
あれ、だいぶ混ざってきてるね。
{どうなると思う?}
わからん。
正直予想がつかない。
{大丈夫なの、それ?}
大丈夫じゃない。
大問題だ。
{おい}
イヤ。
真面目な話、このままだと魔王担当が勝つにしろ負けるにしろ、だいぶ混じって変質しちゃってるし、元のままにはならないと思うんだよね。
で、混じった状態の魔王担当がどういう行動に出るのか想像できない。
魔王の人となりもよくわかんないしね。
最悪敵対される。
{だよねー}
そうなったら私に残された道は1つしかないわけよ。
直接対決を避けつつどっかしらで経験値稼いで少しでも強くなる。
そして、管理者のクラスにまで上り詰める。
{できるの?}
うん。
というか、そこまでもうあと1歩ってところだと思う。
{勝手かと思ったけど、他のクイーン担当には侵食進めてくれってゴーサイン出しといたから}
ナイス。
クイーンを統合できれば一気にゴールが見えてくる。
{私は今後どうすればいい?}
とりあえずは回復待ちかな。
魔王が動き出したら転移を駆使して逃げる方向で。
{了解}
魔王はまだ最下層で地龍と戦っている。
粘る地龍だけど、そろそろ決着がつきそうだ。
あと1日もつかどうか。
とはいえ、魔王は転移を使えないので、地龍が倒されたからといってすぐに危険になるわけじゃない。
最下層から上がってくるのにも時間がかかる。
それを込みで考えれば、まだ数日の余裕はある。
その間にできるだけのことはしておきたい。
と、それと合わせて今しなきゃいけないことがある。
進化した影響でSPがだいぶ減っている。
進化の前も回復待ちの状態だったから、あんまりSPの蓄えは多くなかった。
今は飽食のストック分が空になって、最大SPの半分ほどにまで減っている。
食事をしなければならない。
けど、今ホームにある食料にはあまり手を出したくない。
ここにあるのはクイーンの食料でもあるし、そっちに優先して食べてもらったほうがいい。
なので、自力で食べ物を確保しに行く必要がある。
うーん。
アラクネに進化したから、人型の方の口と、蜘蛛の口と、2つ口があるわけだけど、どっちで食べるべきなんだろう?
今までと同じなら蜘蛛の口だけど、人型の方の口で食べたらどんなもんなのかも気になる。
というか、この人型、ハリボテじゃないよね?
ちゃんと消化器官とかあるよね?
五感はちゃんとあるようだし、思考も人型の方でもできるから多分ちゃんと臓器もあるんだろうけど。
五感といえば、人型の方でものを食べたら味覚とか変わってくるのかな?
蜘蛛と人で味覚が同じだとは思えないしなー。
それを確かめるためにも食料をゲットしなければ。
できれば甘いものを食べたいところだけど、もう街には行けない。
やらかしちゃったからね。
まだ街の方には連絡とか行ってないだろうけど、今後神獣様と崇められることはなくなる。
散々助けてあげたけど、それと同じくらいの仇を返しちゃったからね。
そう考えると、無償でやってきたことの報酬を受け取ったってことにもなるかな。
トントンだね。
まあ、私がそう思っても、向こうはそう思わないだろうけど。
きっと裏切られたとか勝手に思ってるんじゃないかなー。
戦場に戻るのも、やめておこう。
このあと私がひょっこり戦場に戻ってまた虐殺をすると、その後戻ってくる勇者くんの立場が悪くなるかもしれない。
今でも私と一緒に消えて無事に戻ってきたって感じで、怪しい部分が多いしね。
勇者くんの扱いがどうなるのかはわからないけど、そこはおっさんの手腕に期待しよう。
期待、しよ、できるかなー?
不安になってきた。
まあ、勇者くんが最悪死んじゃってもこっちの痛手はそんなでもないし、それならそれで仕方ないってレベルなんだけどねー。
強いて言うならもったいない、ってくらいの気持ちだし。
さて、じゃあ食料の調達に行ってきますか。
幸いアテはある。
マーキングして今までずっと放置していた3つのでっかいお肉が。
それでは、リベンジマッチといきますかね。
地龍トリオ目指して、転移。