171 いつから大魔王から逃げられないと錯覚していた?
卵の殻を破る。
私、再・誕!
あー、危なかった。
いやマジで。
危うく本気で死にかけたわ。
不死あるし、適当に倒されて死んだふりしてやり過ごそうとしたのに、深淵魔法なんて使うんだもんよ。
焦った。
あとちょっと本体との接続を切るのが遅れてたら並列意思ごと全部持ってかれるところだった。
魔王に深淵魔法を食らわされたあの時、私は魂だけを体から無理やり引っ込ぬいて脱出した。
そんなことするのは初めてだったし、出来るかどうかわからなかったけど、並列意思を派遣する要領で自分の全てを送り込んだ。
送り込んだ先は、エルロー大迷宮で実験中だった、スキル産卵によって産んでいた卵。
スキル産卵は、交尾しなくても自分の眷属を卵として生み出せるスキルだ。
マザー食ったら追加されたスキルなんだけど、私は迷宮のホームに戻って、このスキルを試していた。
結果、SPを消費して卵を生み出すことができた。
卵はすぐには孵化しないので、そのまま放置してたんだけど、まさかこんな形で役に立つとは思わなかった。
深淵魔法はやばい。
まともに食らったら私でも死ぬ。
不死とか耐性とかあの魔法の前では無意味だ。
なんせ、あの魔法は準管理者級の力を持った魔法なのだから。
肉も魂も全部分解してMA領域にぶっこむっていう鬼畜魔法。
システム内の力で、唯一私を殺すことができる手段。
超危なかった。
深淵魔法私以外に使える奴がいるっていうのも想定外だし、止めにそれ使ってくるっていうのも想定外だったわ。
あー、この頃は比較的楽な戦いばっかだったけど、どうしてこう強敵と戦う時っていうのは命懸けなんかね。
私もう敵なしって言えるくらいには強くなってるはずなんだけどなー。
なんで一方的にボコられてるんだか。
さて。
とりあえずギリギリとはいえ生き残ることは出来たし、現状の確認をしよう。
まずはステータスチェック。
ブッ!?
自分の数値を見て吹き出す。
全ステータス3。
3。
見間違いでもなんでもなく、3。
一応最高値は前の数値通りで、ステータスの横に低下中の文字。
これは、体を取っ替えたから一時的にステータスが下がったかな?
まあ、仕方がない。
今の私の姿は、手の平サイズだし。
産卵で生まれた卵は鶏のものと同じくらいの大きさだった。
そこから生まれたニューボディーは小さい。
この大きさで前のステータスだったら見た目詐欺だしね。
スキルはそのままだけど、このステータスじゃ、まともな戦闘なんかできっこない。
これは、ステータスが回復するまでしばらく潜伏しとくのが吉か。
あー、もしもし?
{はいな}
もしかしたらそっちに魔王行くかも。
{やっぱり?}
うん。
ガンバ!
{ムリムリ!}
とりあえず、ピンチになったら私と同じ方法で逃げればいいよ。
{そうする}
マザー担当と打合せを終了。
魔王への魂の攻撃も一旦中止にすべきかな?
いや、けど今回は油断して接近を許しちゃったのが悪い。
油断せずに転移を駆使して逃げ回れば、って、今の私のステータスだと転移発動できなくね?
あ、あかん。
というわけで、皆さんちょっと一旦攻撃中止して潜伏してくだせーな。
〈あいよー〉
「仕方ないね」
うん。
死んだふり作戦敢行。
深淵魔法で止めを刺したってことは、経験値も入らない。
経験値は倒した相手の魂の一部を吸収するから入るもので、深淵魔法だとそれすらも回収されちゃうからね。
経験値が入ってないことで私が死んでないってバレる心配はない。
ふう。
深淵魔法のせいで死にかけて、深淵魔法のおかげで助かるっていうのも変な話だわ。
しかし、これからどうしたもんか。
この体じゃ、まっとうな活動なんかできないし。
ていうか、ステータスホントに戻るのかな?
戻んなかったらどうしよう?
その前に、食事どうしよう?
この貧弱ステータスで狩りなんかできなくない?
うーわ。
色々ヤバげ?
どうしよう?
悩んでいると、周りから何やらガサゴソと音がし始める。
あ、そうだった。
卵、試しに1000個くらい産んだんだった。
次々に殻を破って外に出てくるマイベビーたち。
『ミニマムレッサーホロ・ネイア LV1
ステータス
HP:3/3(緑)
MP:3/3(青)
SP:3/3(黄)
:3/3(赤)
平均攻撃能力:3
平均防御能力:3
平均魔法能力:3
平均抵抗能力:3
平均速度能力:3
スキル
「魔力感知LV1」「魔力操作LV1」「毒牙LV1」「蜘蛛糸LV1」「暗視LV7」「毒魔法LV1」「毒耐性LV1」』
あん?
なんか見たことない種族だぞ?
私の種族はザナ・ホロワのままなんだけど、こいつら何?
しかもこいつらサラッと毒魔法生まれつき持ってやがる。
『ミニマムレッサーホロ・ネイア:ザナ・ホロワによって生み出された新種』
新種かい!
Dか?
奴の仕業か?
まあいい。
こいつらは1匹1匹は弱いけど、数が多いし使える。
眷属支配はちゃんと効いてるようだし、こいつらに命令して、狩りをすれば、私自身は何もしなくても大丈夫じゃね?
くくく。
よし。
ヘイ、マイベイビーども!
私のために餌を持ってくるのだ!
私の命令を聞いて一斉に動き始める999匹の子蜘蛛たち。
うわ、キモ。
生まれたばっかの子供に奉仕させて、なんて親なんでしょうね。
酷いわー。
鬼畜だわー。
あっははは。
頑張れ私の子供たち。




