136 蜘蛛VS蜘蛛②
さて、まずは雑魚の数でも減らそうかね。
と、思ったけど、バカ正直にこいつら全部相手にする必要なくね?
この頃地龍を前提に戦術考えてたからあれだけど、アークタラテクトにならあれ、通用するんじゃね?
やってみる価値はあるかな。
失敗したらその時はその時。
別に失敗しても大して損はないし。
というわけでやっちゃ、お?
予見でアークの動きを捉える。
避ける。
さっきまで私がいた場所にアークの牙が突き立っていた。
怖!?
速!?
さすが、私が鑑定したモンスターの中で最速を誇るだけあるわ。
命中もカンストして確率大補正もレベル2。
私の思考加速、予見、回避、確率補正の4連コンボ回避術がなかったら、あの毒牙にブスーッとやられてたわ。
怖や怖や。
まあ、速いって言っても私よりかは遅いけどね。
アークも魔闘法と気闘法両方発動させて身体能力の底上げしてるけど、私のほうがもっと速いし。
なんて言っても私のほうが魔闘法も気闘法もスキルレベル高いし。
魔闘法なんかスキル進化して魔神法になってるしね。
魔神法は魔闘法の上位スキル。
その効果は魔闘法をより強力にした上に、魔法系のステまで上昇させるというものだ。
おかげでただでさえバカみたいな私の魔法系ステが、アホみたいな数値になる。
魔神法と龍力合わせて発動すると、魔法攻撃力と抵抗力が1万の大台超えるからね。
ククク。
アークの物理攻撃力は驚異だけど、当たらなければどうということはないのだよ。
アークが糸を出す。
あ、それはダメなやつや。
私知ってる。
蜘蛛の糸ダメ。
捕まったら終わる。
まあ、捕まったら大人しく転移するけどさ。
襲いかかる糸の網。
それを躱すと、アークに遅れてグレーター他が動き始めているのを視界の隅に捉える。
あー、のんびりしてる暇はないか。
どうも、いつでも転移で逃げられるって考えると緊張感を持てない。
私もだいぶ強くなって、前みたいに一発もらったら即死亡って心配もなくなったしね。
素の物理ステータスも高いし、そこに更に魔神法に気闘法に龍力っていう強化が入るからねー。
やろうと思えば怒で更に追加できるけど、それはさすがになー。
怒のスキルは物理系ステータスを大幅に上げるっていうものだ。
どのくらい大幅かっていうと、レベル1の時点で今の私の気闘法レベル9とほぼ同じくらいの上昇量。
しかもMPSPの消費なし。
ただし、このスキルを発動すると、強制的に状態異常「狂気」になってしまう。
私は外道無効のおかげで完全に狂気に侵されるってことはなかったけど、2度と使おうとは思わない。
それを使わなくても十分強いし、何より私魔法タイプだもんよ。
わざわざ魔法捨てて肉弾戦しなくてもいいっしょ。
忍耐考えると実質私のHPって、軽く1万超えてんだよねー。
これを一撃でぶち抜くような猛者は、いない、と思いたい。
まあ、少なくともアークにはムリでしょ。
アークの一番の攻撃は、もちろん猛毒攻撃レベル10。
そして、それを当てるための補助としての万能糸。
転移がなかったら私でも捕えられた瞬間、負けが確定しかねない凶悪なコンボだ。
それをやってきた本人が言うんだから間違いない。
けど、私にはさっきから言ってるように転移があるから逃げるだけなら簡単。
巨体からの物理的な攻撃は確かに怖いけど、速さで劣る時点で私にはかすりもしない。
あとは数で攻められれば厄介なところだけど、それも私の作戦が上手くいけば解決。
では、作戦「サウナにご招待」行ってみよう。
まずはアークの攻撃を躱します。
次に、アークの攻撃を躱しつつ接近します。
ここが難しい。
なんだかんだやっぱりアークはステータスだけ見れば地龍を超える猛者。
空間機動による変幻自在の機動力に、糸を絡めた予測が難しい攻撃の数々。
そこにさらに魔法が飛んでくるとね。
アークの使ってくる魔法は、私も愛用してる毒魔法。
猛毒耐性を持ってる私には、たとえ当たったとしても大したダメージを与えられないけど、飛び道具があるっていうのはそれだけで攻撃のパターンがグッと増える。
アークは歴戦の戦士のように、巧みなタイミングで毒魔法の中でも高威力な猛毒弾を放ってくる。
猛毒弾でも私にはほとんどダメージを与えられないだろうけど、食らったら隙を生むことになる。
アークはダメージよりもそれを狙っている。
やー、コイツやばいわ。
伊達に地龍より高いステータスしてないわ。
ただ、今回は相性が悪い。
だって、私コイツの攻撃パターンほとんどわかるし。
考えてもみて欲しい。
私が今まで戦いで培ってきたものを。
糸を駆使し、毒牙で戦い、魔法を放つ。
まんま私の戦い方と同じ。
それもそのはず。
元は私も同じタラテクト種で、今も同じ蜘蛛型モンスター。
戦術が被るのなんて当たり前なのよ。
おまけに、コイツの攻撃は何一つ私に対しては決定打にならない。
毒牙も毒耐性持ちの私には一発くらわした程度じゃ致命傷にはならない。
致命的なほどの毒を注ぎ込まれる前に転移で脱出できる。
糸もそう。
魔法なんて論外。
私の抵抗を物理寄りのアークがぶち抜けるわけがない。
そうなると頼れるのは純粋な物理攻撃になるけど、それも私の回避コンボの前ではかすりもしない。
対する私も決め手に欠けるかっていうと、そうでもない。
私ってばかなりイレギュラーな形で進化してきてるからね。
普通のタラテクトにはない、魔法がわんさかある。
1対1なら詰んでる。
だからこその軍勢なんだろうけど、統率とか連携がないのが災いしたのか、アークだけ先走っちゃったからね。
思考加速のおかげでこんだけウダウダいろんなこと考察できてるけど、実時間で言えば1分も経ってない。
グレーターでさえ追いついてこれてないこの状況。
アークにはこの時点で勝ち目がなくなったと言える。
そして、ダメ押しの一手。
私の体がアークに触れる。
次元魔法、範囲転移を敢行。
龍が相手だと逆鱗の効果と抵抗の高さで失敗すると踏んだ戦法。
けど、アークに逆鱗はない。
抵抗の高さも、私の魔法力には及ばない。
私と一緒にアークが転移する。
転移した先は、中層の火竜と戦ったマグマの湖の上。
熱い熱いサウナ風呂にご招待。




