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111 美味しい料理

[ふふふ。貴様らは強敵だった。ああ認めよう。この私をここまで苦しめたのだ。まさに死闘。そう呼ぶにふさわしい戦いだった。だが、私の前では貴様らの奮戦も虚しいものだったな。ふははは! ついに勝ったぞ! 今日、この日を以って、貴様らは私の前に絶対なる敗北をその身に刻んだのだ!]


 体担当のテンションがおかしい。

 なんなのコイツ?

 頭沸いてんの?


{情報担当、コイツいつからこんなに壊れてたっけ?}

 シッ!

 良い子は見ちゃいけません!

{そうかー。体担当ついに行ってはいけない領域に突っ込んでしまったかー}

 そう、イってしまったのだよ。

 だから、残された私たちは強く生きないとね。

{体担当。お前のことは3分間くらいなら忘れない!}

 カップ麺か!

{カップ麺…。お腹空いた…}

 体担当のこと一瞬で忘れてない?

{そんなことはないこともなきにしもあらず}

[ねえ、さっきから酷くない?]

{体担当!?}

 バカだ、正気に戻ったのか!?

[いや、そこ、バカな! でしょ? それじゃ正気に戻ってもバカみたいじゃん]

 え?

{違ったの?}

[ちょーっと君たちOHANASIしようか?]


 ギャーギャーひとしきり騒ぐ。

 まあ、体担当のテンションが上がるのも仕方がない。

 なんせ、ついに火竜の鱗剥ぎが完了したのだ。

 体担当が言うとおり、激戦だった。

 火竜と鰻3匹の鱗剥ぎ。

 メッチャ大変だった。

 ぶっちゃけ言おう。

 戦闘時間よりも、鱗剥ぎにかかった時間の方が長かった。

 まあ、時計ないから正確な時間なんかわかんないし、感覚の話だから、集中してた戦闘のほうが実は時間かかってたってこともあるかもだけどねー。


 それに、大変って言ってもやったのは体担当だし。

 情報担当の私と魔法担当はその間、くっちゃべりつつスキルの熟練度上げに勤しんでた。

 定期的に体担当が、飽きたから代わってと言ってきたけど、もちろん答えはノーだ。

 だが、断る。

 まあ、体は一個しかないし、体担当も私に変わりはないから、結局私が疲れたことに変わりはないんだけどさー、やっぱ気持ちの問題?

 もう一人の自分がいたら宿題押し付けるのにー、っていう子供の妄想を実現させた感じやねー。


[ふっ。しかし私は完遂したぞ!]

 おめでとう!

{おめでとう!}

[ありがとう! ありがとう!]

 じゃあ、早速食べようぜ。

[おう、待ってました!]

{ナマズ、鰻と来てのこの火竜}

 きっと味の方も進化しているに違いない!

[私、これ食ったら、うーまーいーぞー!って言うんだ]

{アカン。それ不味いフラグや}

 

 というわけで、実食!


 うん。

 うむ?

 うーん。

 

[微妙]

{なんか、不味いとも言い難いけど、美味いとも言い難い、絶妙なさじ加減…}

 あれだ、味のついてない白身魚みたいな。

[ああ、わかる]

{確かにこれは、醤油とかあれば化けそうなポテンシャルは持ってる}

 醤油、この世界にあるの?

[ない、かなー?]

{あれだよね、日本人に醤油なしの生活しろって言ってもムリだよね}

 サブカルチャーと醤油は日本の誇りだと思うのですよ。

[人間だった頃はそんな食に興味持ってなかったけど、蜘蛛になってから思い知ったわ]

{そやねー。日本の料理って、メッチャ美味しかったんだねー}

 諦めるな!

[情報担当?]

 醤油はこの世界にはないかもしれん!

 しかし、それに匹敵する調味料はあるかもしれん!

{調味料じゃなくても、美味しい料理さえあれば…}

[そうだよね。今まで食べてきたのって生魔物ばっかりだしね]

 そもそも魔物って時点で食べ物って言えなくね?

[ハッ!?]

{そこに気づくとは、貴様天才だな!?}

 そうそう。

 私ってば天才だったのだよ。

{マジかー。私ってば天才だったのかー。天才なら何しても許されるよな!}

 その通り!

 今日この日この時、私は一つの決意を表明する!

 マトモな料理を食べるために、このエルロー大迷宮から脱出すると!

[おお!]

 もう美味しくない魔物を食べるのには飽きた!

[臭い肉には飽きた!]

{毒物にはもう飽き飽きだ!}

 健全な生活は健全な食事から始まるのだ!

[もっと美味しいものを!]

{たまには甘いものを!}

 甘いもの、食いてー。

[ああ、チョコ食いてー]

{チョコはないかもだけど、フルーツくらいなら…}

 あああ、今まで考えないようにしてたけど、もうダメ。

[体が砂糖を欲している!]

{体担当が言うとマジに聞こえるから困る}

 よし。

 本格的にちょっとアラクネ目指そうぜ。

[あー。まあそうなるよねー]

{人間とコミュニケーション取ろうと思ったらねー}

 だって、このまま死ぬまで魔物ばっか食って生きてくの?

[それは嫌だー!]

{美味しいもの食べたいです!}

 でしょ?

 人間の作った料理なら生魔物なんかよりずっと美味しいはず!

 私は蜘蛛をやめるぞー!

[アラクネも蜘蛛やん]

{けど、実際問題アラクネになったとして、人間とコミュニケーションとれると思う?}

 そこは気合で。

{私のコミュ力の低さを思い出せ}

[ねえ、私ってば人間だった頃に最後にした会話が思い出せないんだけど…]

 そもそも最後に誰かと会話したのっていつよ?

{思い出せないくらい遥か昔…}

[大丈夫か、私?]

 き、気合で。

{ていうか、日本語通じんの?}

 あ。

[あ]

{前途多難そうだな}

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― 新着の感想 ―
[一言] 誰もそこの溶岩で肉焼いてみようかとならない件w あでも死んでも耐性残ってて焼けないかなー?
[一言] OHANASHIじゃないですか?
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